……4日前、ビーストガーズ本部……

「ギルバート!いまいいか?話があるんだが」

頭がはげ、スーツを着た小太りの男性が俺を呼んだ。

いつも任務を持ってきてくれる、素晴らしい俺の上司だ。名前はワイスンという。

広々とした仕事場を通り、ワイスンが座っている机に向かった。

「任務だろ?最近好調だし、難しい任務にしてくれないか?」

期待を込めてワイスンに話す。ワイスンも笑って返した。

「そう言うと思って、上と話を付けて置いたよ」

さすがワイスン!いつでも現場で働く、俺達の話を聞いてくれる。

俺達の間では、理想の上司ナンバー1として知れ渡っているほどだ。

「仕事は何なんだ?何でも任せてくれ!」

「いや任務とは違うんだ……。どこに置いたかな……」

そういうとワイスンは机の引き出しを開く、書類を捜しているようだ。

「あったあった、これを渡そうと呼んだんだ。」

というと一枚の紙を俺に差し出す。

「有給休暇届け?疲れてなんてないぜ?」

拍子抜けした……ついぼやく。

差し出されたのは休暇が欲しい時に書く紙、それ以外の何物でもなかった。

「3ヶ月の有休をもらっておいたから、その間にパートナーを見つけてくるといい。

パートナーがいないと今以上の任務に就けないのは知っているよな?」

当然のようにワイスンが話す。この組織では当然の事のようだ。

二人以上のチームを組まなければ、簡単な任務しかさせてもらえないらしい。だが、

「俺はそんな事知らないぞ!初耳だ!」

「え、当たり前だろ?確かに説明しなかったが、それくらい調べてこの組織に入ったんじゃないのか?」

異世界から来て、あわてて強さだけで何とかなるこの仕事に就いたのだ……。

早い話、何の情報もなくこの仕事に就いた。そんな話 初めて聞いたぞ!

「大変じゃないか……。どうやって見つけるんだ?」

3ヶ月でずっと一緒に仕事をするパートナーをスカウトする……どうしろってんだ!

大半の組織の人間はパートナーを見つけてから、就職してくるのだが、俺は一人で入った。

しかも異世界から来た俺は知り合いすら少ない……。どんな任務よりも難度の高い休みだ!

「ワイスン。なにか教えてくれよ!ただ歩き回って、出会えるわけも無いだろうし!」

俺は必死だった。そりゃそうだ、ここでパートナーに出会えなければずっと下っ端のまま、冗談じゃない!

「とりあえず秘境なんてどうだ?強者がいるかもしれないな」

ワイスンが話してくれた。

良い案だ。厳しい環境で過ごす人間は、それだけでたくましい。

「なるほど秘境か。行って来る!」

そういうと、俺は駆け出した。あっという間に部屋を出る。

「待つんだ、ジョークだよ!危ないだろ!?」

ワイスンが叫んだらしいが、俺はそのときすでにかなり遠くまで行っていた。聞こえなかった。

もちろん、次のありがたい言葉もだ。

「まあ、いいか。彼ならどこでも大丈夫だろう」

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