夜になってしまったが、相変わらずレグルスはアイリスの隣に居た。ずっと手を握っている。
「……ん………あれ?」
ようやくアイリスが眼を覚ました。レグルスも手を離す。
「目が覚めた?急に倒れたからびっくりしたよ。もう大丈夫かい?」
「大丈夫よ………ありがとう」
気絶する前のことを思い出したようで、布団で顔を隠しつぶやいた。
恥ずかしくて直視できない、とかそんな感じだろう……。
「ギルバートさん。アイリスをお願いします。もうそろそろ帰らないとまずいので……」
レグルスが、窓から外を見て言った。
「またね、アイリス」
レグルスが部屋の外に出る。
部屋を出た途端、走ったのだろう、すぐに玄関の戸が閉じる音がした。
アイリスも、ベッドから出て外を眺める………その瞬間だった!
「うそ!私こんな時間まで寝てたの!?すぐにご飯を作らないと!
ごめんねギルバート、待ってて!」
大慌てのアイリス。時計がないから時間は分からない。
星空で時間が分かったのだろうか。さすが、暮らし慣れている……。
「ゆっくり作ればいいじゃないか。別に急がなくても、俺は大丈夫だぜ?」
「そんなわけに行かないわ!
フィソラ、手伝って。木の実を取りに行くわよ」
アイリスがそういった途端、窓からフィソラが顔を入れる。
『今から作るのか?今日はもう作らないのかと……』
「そんな訳ないじゃない。他の日ならともかく、今日はギルバートが家に来たのよ!
ケーキを焼いて盛大に、お祝いしましょう!」
満面の笑みだ。そんなに歓迎してくれるのか……ありがたい!
「ギルバートはゆっくりしてて!行ってくるわ!」
アイリスが部屋から出て行く。そして玄関の戸が開く音、出かけたようだ。
アイリスの手作りケーキか。楽しみだ、どんなのだろう。
そういや、レグルスも飯を作らないといけないよな……。
あんなにあわてて料理を作らないといけない時間まで……ここに居たのか……。
そんなことを考えながら壁にもたれると、急に眠気が襲ってきた。
そんなに疲れたように感じなかったのだが………いや、
「崖から落ちて疲れがないってのも、おかしな話か……」
そのまま俺は眠ってしまった。
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