「化け物が、悪魔を守るってか!ハハッ!傑作だな、レグルス!」

彼がレグルスか……。

「大丈夫だったかい?アイリス」

イドロットの言葉など気にしていないようで、アイリスを気遣っている。イドロットの手も離した。

「大丈夫よ!ありがとう」

アイリスも、嬉しげ……。美少女と美男子良い雰囲気だ。

「覚えておけよレグルス!俺様が恐れているのはお前じゃない。ヴァイスドラゴンだ!

てめえがその本を放した時、そのときは俺様がおまえを追い出してやる!覚悟しておけよ!」

「覚悟するのはおまえだ!よくもまあ、言いたいこと言ってくれたな〜!」

ようやく、近くまで来た俺が後ろから声をかけた。こいつは煮るのと焼くの、どっちがいいだろう。

「てめえがギルバートか?もう話題だぜ!悪魔が助けたよそ者ってな!」

減らない憎まれ口、もううんざりだ。こいつの話なんて聞く価値もない。

「いい加減にその口閉じな……。それ以上言うなら、どうなっても知らないぜ」

腰につけた鞘をさりげなく見せる。

谷で失くしたあの剣は、まだ見つかっていない………そのうち探すか。

剣がささっていないとも知らず、イドロットの顔に恐怖の色が浮かぶ。

「覚えてろよ、おまえら!3人共、俺が追い出してやる!」

イドロットが走って去って行く。後の二人もついて行った。

「ありがとうございます。あなたがギルバートさんですね」

「ああそうだ、よろしくな。……大変だな、いつもあんな奴らに絡まれてんだろ?」

あれだけ嫌われながら村の中で暮らしているのだ……。大変な生活だろう。今のは一部分に過ぎないはずだ。

「僕は大丈夫です。村人は全員、僕のパートナーのヴリトラを恐れていますから……

それよりもアイリス、どうして村に来たんだい?こんな事になるって分かっていただろう……」

レグルスが心配そうにアイリスに尋ねる。

「きちんと長老に話さないといけないでしょ?誰かがウロボス様の小屋まで案内しないと……」

すまない……俺のせいで、村に行かないといけなくなったんだよな……。

「せめて、フィソラと一緒じゃなきゃ危ないよ!僕は召喚が使えるからいいけど、まだ使えないんだろ?」

「一緒だと村の人たちが怖がるわ……。私は、仲良く暮らしたいだけなの……」

辛そうな顔でアイリスが話す、今にも泣き出しそうだった……。

「気持ちはわかるよ……、でも僕たちがこの村で暮らすには、力を見せ付けるしかないんだ……。

…………悔しいけどね……………………」

レグルスが吐き捨てるように言った。そんな事はしたくないのだろう……。

そうこうしていると、周りが騒がしくなってきた。大声で騒いでいたから大勢の村人がやってきたのだ。

「またあの子達か……何回喧嘩すれば、気が済むんだか……」「大方、力を見せたいんだろうさ」
ちがう………二人とも……そんな事考えてなんかいない………。普通に暮らしたいだけなのに………

久しぶりに心のそこから腹が立つ……。

「いい加減にしたらどうだ!おまえら、ろくでなしの集まりか!」

周りが騒ぎ出す。きっと俺の悪口でも話し出しているのだろう。

それならそれで別にかまわない。好きなだけ言わせておけばいい。

考えも、変わった!

こんな人を傷つける奴ら、パートナーにするぐらいなら、ミジンコとパートナーを組んだ方がマシだ!

「二人とも私の家に来て!そこで話しましょう!」

アイリスの提案だ。ありがたい、ここから離れないと、頭がどうにかなりそうだ!

陰口を話す村人をかき分け、走って泉から離れた。……森に入るまで……声が止むことはなかった………

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