それから俺達は、目的地であるアルマスの館を目指し歩き続けた。

もうすぐ到着なのだが、森の途中で一泊してから向かうことにした。

アルタイルのセイントヒールが、完治に明日の朝までかかるというのもあるが……。

3時間前

俺達は森を歩いていた。

「ちょっと見てよ!温泉よ!温泉!!」

一番後ろにいたりーリアが皆を呼んだ。アイリスが即行で駆け寄る。

「本当だわ!入って行きたいわね〜…」

ああ、アイリス……キラキラした目で俺を見るな……。いや駄目だ!急いでんだ、そんな時間は無い!

「アイリス……悪いけど、俺達急いでるだろ!駄目だ!」

アイリスが俺に近寄ってきた。目をキラキラさせて…。

俺に迫るな。だめだ俺、意思を強く持て!…

「アイリス。気持ちは分かるけど、俺達にはやらなきゃならない事があるだろ!

こんなとこで立ち止まるのか!?」

「駄目なの?」

アイリスの必殺技……目がキラキラだけでなく、ウルウルしている……。

その瞳で、俺をじっと見つめる……

………負けた…。

「…今日ここで一泊するか…?」

「リーリアさん!やったわよ!アルタイルさんは?」

「こっちも黙らせたわ!オッケーよ」

見るとアルタイルは…地面に寝転がっている。……鬼……。

俺のほうがまだマシか…。

というわけで今に至る。今は夕方。空にはカラスが飛び、夕焼けが見える。

温泉の近くに崖があり、見晴らしが良かったので、そこで一泊する事にした。

ひらけているし、とても過ごしやすい。

ところで、さっきから気になっている事がある。嫌な予感がするのだが……。

「なあ、飯はどうすんだ?」

そうだ一泊するんだから、夕食は取らないと力が入らない。

「…私が作るわよ?ゆっくりしてて!」

隣にいたアイリスが、もちろんといった感じで、そう答える。

「リーリアは作るのか?」

「?ええ、二人で作るわよ」

どうしてそんなことを聞いたのか分からないらしい。本人に自覚が無いから……。

アイリスは、死ぬほど料理が下手である。

前にケーキを作ってもらった。使った材料は普通なのに……

クリームを生の魚で作り、スポンジを納豆で作った、…ような味がした…。

だが、今回は大丈夫だろう……。アルタイルが心配そうにしていないし、リーリアは大丈夫なのだろう。

「じゃあ、楽しみにしてるから!」

アイリスが作り、かつ美味しい料理。好きな女性の手作りで美味しいのだから文句は無い!

「腕によりをかけて作るわ。楽しみにしててくれるんでしょう?」

いつもは楽しみどころか、期待してなかったから…嬉しいのだろうか。張り切っている。

「ああ、本当に楽しみだ!頼んだよ!」

「任せて!」

二人の間が、盛り上がる。今日の夕食は楽しめそうだ!

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