「泉に湧きし聖なる水よ、この地に集まり玉となれ、水の精霊ウンディーネの力を借りて、その身に力を宿し、拘縛せよ “アクアプレッシャー”」
俺と敵の周辺に無数の水の玉が出現する。俺を巻き込む気じゃないだろうな!
「ギルバート。それに触れずにこっちに来てちょうだい!触れたらどうなっても知らないわよ!」
リーリアがさらっと怖い事を口にする。触れるなったって。この水の玉ゆっくり動いてんだけど……。
言っていても仕方ない…。ゆっくりと、あくまでゆっくりと、水玉に触れないように進む。
1つ避けたとき後ろを見ると、俺を追いかけた敵が玉に触れて閉じ込められていた……。
「あいつ……俺をこんな無差別攻撃の中に放り込みやがって!」
こんな無差別攻撃に放りこまれたら……速さなんて役に立つか!むしろゆっくり進まなきゃならんだろうが!
怒りを感じつつ幾つもの水玉を避け、ようやく何も無いところまで出る。その瞬間!
「“プレス”」
目の前ですべての玉が小さくなってゆく、もちろん敵の入った玉も……。
最後には、小さくなり役目を果たさなくなった核。空へと上がっていく雲。
「勝ててよかったわね。敵が動き回らなかったのは運がいいわ!あの速さで動き回られちゃどうしようもなかったんだけど」
明るく話すリーリア。悪びれた様子など微塵も無い……。
「言いたい事は、それだけか!よくも俺をあんな所に放り込んだな!あれに入ったら死ぬじゃないか!!」
「大丈夫よ、プレスって言うまでは破壊力が無いわ。いつでも魔法をとめられるしね」
「じゃあ、どうして!どうなっても知らない、なんていったんだ!」
「その方が、慎重に進んでくれるでしょ?」
「………………。」
言葉が出ない……筋は通っている。確かにその方が慎重に進む。でも、人として、これでいいのだろうか…。
周りを見ると、アイリスはあきれていた。アルタイルは頭を抱えていたから顔は見えない。
「もういい…。怪我無かったし…」
「いいの?前はもっと文句言われたけど」
……無視して先に進んだ。
「ねえ、フィソラ。この人って悪人…?」
『ぎりぎり…。たちの悪い、ずれた人間だ』
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