第3章:守護者の暴走


俺達は、アルマスの館を目指し森を進んでいた。

「ねえ、まだ着かないの。さっきから同じ光景ばっかり。もう飽き飽きよ!」

リーリアが、とうとうイライラしだした。確かにもう何分も似たような光景のみ、右も左も、木。木。木。

だが、それ以上に気がかりなのは……

「リーリア。落ち着いてください。この辺りです。それより、先ほどからゴーレムが出現していません。

明らかにおかしいです……。隕石の近くは、強いゴーレムが多数いるはずなんですよ!気を引き締めていてください!」

そう、1体もゴーレムが出ていない……。なぜだ……隕石の近くではゴーレムは強くなる。それが一体も出ない……。

アルタイルの言うとおり異常だ……。なんか……、不吉だな。

「どうしたの?珍しいわね、喋らないなんて……」

アイリスの声だ。はっと我に返る。

「ちょっと考え事をな……」

「頭脳担当は私よ。何を考えてたのか話してくれれば力になれるわ!」

俺達の間では、頭脳担当はいつもアイリスだ。今回みたいな時のアイリスの作戦は、大体的を得ている。

「ほら、アルタイルの言うとおりさっきからゴーレムが出ないだろ……。明らかに妙だし……嫌な予感がするんだ」

アイリスは少し考え、そして……

「1つは、隕石の衝突で、遠くにばかり散らばった事。

もう1つは、何らかの理由で、この辺りのゴーレムが動かなくなった事。

この、2つのどっちかだと思うわ」

さすが、アイリス。俺が考え続けていた事を簡単に結論付けた。やはり得意分野の違いは大きいようだ……。

「後者の場合、理由によっては恐ろしいな……。

もし一体のゴーレムが、そのほかのゴーレムをすべて倒したんだとしたらどうする」

「その可能性は十分あるわ。そうでなきゃいいけど……。要するに、気を抜いたら駄目ってことね!」

アイリスが落ち着いて答える。そのとおりだ。

「あ、あれじゃないですか!」

アルタイルの声だ!指差す方向を見ると。崩れかけた家の跡……。

洋館だったらしいが、今では見る影も無い……。お化け屋敷と言われれば、そうも見えるが……。

アイリスを見ると、おびえている。お化けは彼女の苦手なものの1つである。

「とりあえず入るか……。隕石はこの中にある可能性が高いんだろ?」

「ええ、そうです。他の場所に落ちたなら、ゴーレムがあんなに散らばるはずありません」

「さて、さっさと行きましょ!これで今回の仕事は終わりでしょ?早く終わらせて、田舎暮らしを満喫してから帰るのよ!」

「………」

「アイリス。どうした?怖いのか?」

「だ、大丈夫よ。……気にしないで………」

震える声でアイリスが答える。全壊した家ならまだいいのだが、ぼろぼろの洋館は、ちょっと怖い……。

なんといっても、奇怪現象が起こる場所の定番だ。俺は、アイリスの方を向き、

「気にするな……俺が、守ってやるから……」

一度は言ってみたい台詞で、かつ使い古された言葉だ。それでも、今のアイリスにとっては、希望の光のようだった。

「……信じているわよ。よろしくね」

後ろでリーリアが、ニヤニヤしていた。

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