壊れかけた洋館の戸に手をかけると、そのまま後ろに崩れた。
そして、シャンデリアは落ち、床もぼろぼろ……。部屋もどこまでが部屋なのやら……。
もういつ崩れてもおかしくない。
アルタイルが先頭を行き、次にリーリア、さらにその次が俺とアイリスだ。
よほど怖いのか……あのアイリスが俺の服を掴み、放さない。その姿は弱々しく、今にも消えてしまいそうだった。
「アイリス。お化けなんて出るはず無いだろ」
俺が笑ってそう言うと。
「そんな事、どうして分かるの!今の世の中、何が起こるかわからないわ!」
『アイリス、私も心配する必要は無いと思う。落ち着け。私もついている。』
「俺から離れない限り大丈夫だ。安心してついて来てくれ!」
「……ありがとう!」
ようやく微笑んでくれた。この方が彼女らしい!
「ようやく、いつもの顔だな。やっぱそうでなきゃ!」
「ええ、どうかしてたわ。お化けがでても、みんなが守ってくれるもの。大丈夫よね!」
いつの間にか、リーリアがアイリスの後ろに回った。そっと音を立てず、アイリスの肩に手を置く。
一瞬アイリスの顔がこわばる。そして
「……イヤーーーーーーーーーーーー!!」
そのまま、アイリスは俺の胸に飛び込んでくる。
……しばらくは………これでいいかも。心が揺れる。
「大丈夫だって、今のはリーリアだ。気にするなよ」
アイリスが、涙目で振り向く。その視線の先には、笑うリーリア。
「リーリアさん。冗談はやめてください!」
「ごめんなさいね。つい手を出したくなっちゃって!」
悪びれた様子は……無い。最も俺に謝る必要など無いが。
「皆さん。静かに」
アルタイルの声だ。何かが聞こえる……。
こっちに……近づいている?
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