第2章:属性ゴーレム


ジャンケンはリーリアが勝ち、谷へ向かう事になった。

今俺達は谷底を歩いている。広く、通りやすい。その上、リーリアが言ったとおり風が吹いている。

「どう〜!この風!、気持ちいいでしょ!!」

心から嬉しそうに、リーリアが話す。彼女の長く美しい髪が、風になびく。

絵になる光景であった。

「ところでリーリア。どうして、風が吹いていると知ってたんだ?」

谷だからといって風が吹くとは限らない。何処で聞いたのか?

「事前に組織で調べたのよ!新しい土地に行く時は、観光名所を探さなきゃ!」

「アホか!何考えてんだ?遊びに来たんじゃないんだぞ!」

リーリアに悪びれた様子は無い。この女、本気でそう言ってやがる。

戦いに行くのに、観光もかねるなんて……。ありえない!

「そんな事言えるのかしら?進みやすく、快適な道。これ以上ない好条件な通り道」

気持ちが揺らぐ、確かにそうだ。だが、この言い分を認めていいのだろうか……。

「ギルバートさん、いつもの事なんです。あきらめてください……」

アルタイルがため息をつく。

「……苦労したか?………」

「ときどきは……」

アルタイルの背中を軽く叩く。パートナーがあれでは、振り回されているのだろう。哀れでもあった。

そういえば、アイリスが話しに加わってこない。いつもならば、風が気持ちいいと騒ぎ出す。

気になり周りを見ると、後ろの方にアイリスがいた。俺達から離れ、岩壁の上をみつめている。

「アイリス。どうしたんだ?」

「あそこの穴、何かしら……嫌な感じがするの……」

「どれだ?」

アイリスの下へ走り、視線を向ける。確かに蛇がいそうな大きさの、横穴がいくつも開いていた。

すべて同じ形だが、不思議と人工的には感じない。同じ生き物の彫った巣穴だろうか?

そして……、確かに嫌な感じがする……。

「リーリア。この穴、何かわかるか?この谷について調べてきたんだろ?」

大きな声でリーリアを呼ぶ。アルタイルも共に走ってきた。

「あれは、この谷に住んでいるぬえの巣穴よ。見た人間は発狂するから、嫌がられてるわ。

でも今の時間はずっと森の中にいるはずよ。もし出会っても大丈夫。とうもろこしを食べれば治るわ」

嫌な感じなのは、化け物が住んでいたからなのか?嫌な感じ、本当にそれだけか……?

宿主がいないのに、残るものなのか…?

「そうですか!ありがとうございます、リーリアさん」

俺の心配をよそに、肝心のアイリスは落ち着いたらしい。まあ、いい。元気を取り戻してくれたなら。

不安は残るが、また歩き出す。

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