「ギャース」
フィソラが構える。体の周りにかまいたちを作り、空には雲を呼ぶ。
敵が迫り飛び掛ってくる。
次の瞬間フィソラが攻撃を放った。
かまいたちは命中し、雷も当たる。
その威力は高く、当たった瞬間に敵の核が破壊され、ゴーレムは活動を止める!
だが、敵を倒したにもかかわらず、痛恨のミスとなった!
飛び掛ってくる敵は金属製だったのだ。
ただの物体へと戻った金の塊が、帯電したままフィソラにぶつかる。
フィソラの体に何万ボルトもの電流が流れる!
風属性だったおかげでマシではあった。だが、雷を受けたのだドラゴンとはいえ、ただではすまない。
どしん!
声を上げる暇もなく、3メートルもの巨大な体が倒れる。
「フィソラーーーーーーーーー!!」
アイリスが駆けつけ回復する。
「あらゆる命の源よ、その力を持って傷を癒したまへ ”キュア・バブル”」
フィソラの体が大きな泡に入り、傷が癒えていく、意識も戻ったようだ。
『私としたことが勝負を急ぎすぎた。敵は倒せたのか?』
「倒せたわ、フィソラが止めを刺したのよ」
涙ながらに答える。
最愛のパートナーが傷ついたのだ、戦闘においてこうなるかもしれないと判っていても、理解と現実は違う。
今までは、ここまで傷ついた事はなかった。
『そうか』
「もう話さないほうがいい。傷に響きます」
フィソラを見ていた俺達が振り向くと、青いたてがみのユニコーンがいた。
白くすらっとした綺麗な体、高く綺麗な声まぎれもないユニコーンであった。
だが、なぜか首にカバンをつけている。
「あらその姿も久しぶりね。この子の回復魔法で、もう大丈夫だと思うけど、念のためよろしくね」
リーリアは知っているようだ、とすると…
「アルタイルか?」
「そうですよ。判りませんでしたか?」
変わりすぎである、あのムキムキの体がここまで見事なユニコーンに変わるとは。
「それではいきますよ。”セイントヒール”」
角から光があふれ出し一面が白く染まる。
『アイリス、なんだか力が出てきた。
今なら立てそうだ。そこを空けてくれ』
アイリスがそこを動くと、フィソラが立とうとする。そして見事に立った。
ドラゴンの生命力が有ったからこそではあるが、この回復力はすごかった。
光に包まれた俺やアイリスの、小さな傷まで治っている。
「全体回復魔法セイントヒール、私の一族に伝わる技です。
これを受けたからには大丈夫、どんな傷でも明日には完治しますよ」
「アルタイルさんありがとうございます」
「どう致しまして、あなたの回復魔法もすごかったですよ、私が来たときには、もうだいぶ直りかけていましたから。
私がしたのは仕上げだけですよ」
「俺からも言わせてくれ、ありがとう」
俺も頭を下げた。自分で言うのもなんだが、頑固な俺が頭を下げるなんて滅多にない。
「今のあなたは獣、私の言葉もわかるはず、助けてくれて礼を言う」
「いえいえ、だから私は仕上げをしただけです。アイリスさんが素早く処置をしたおかげですよ」
このあと、アルタイルは、涙をながすアイリス、頭を下げる俺、さらには、最も偉大な種族、ドラゴンのフィソラから礼を言われ続けた。
だが、それでもアルタイルは最後まで謙遜し続けた。大した事はしていない、と。
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