「ギルバート!」
私はすぐに、ギルバートの下へ駆け寄ろうとした。でも……
「待って下さい。今行ったら、あなたも刺されてしまう…。私達が引き付けて戦いますから、その間に行ってください」
アルタイルさんが、辛そうな、そして厳しい表情でそう言う。
『そのとおりだアイリス。今は待て……。私は戻ろう、この体は目立つ。
敵がギルバートの許に向かう私達に気づいてしまうだろう』
「でも、こちらに引き付けられるとは限らないわ!ギルバートがとどめを刺されたらどうするの!」
私は叫んだ。
ゴーレムがこちらを向き、私達に狙いを定めた。
「彼らは、意識を持たず暴れるだけです。こういうときには、新しい獲物を探します」
「でも、あのままこちらに来ないかもしれないでしょ!早くしないとギルバートが!」
考えたくも無いけど、もう駄目かもしれないと頭によぎる!
「落ち着いて、きっと大丈夫よ……」
リーリアさんも辛そうな顔をしていた。
「さあ、すぐに飛び出せるように、構えていてください!出来るだけ急いだ方が良さそうです」
ギルバートは、全く動いていない!危険な状態に違いない……。
ゴーレムがこちらに突進してくる。
アルタイルさんが角を掴み、動きを止める。体は液体だから、掴めないのだろう。
「今です!行ってください」
私が走り出すと同時に、アルタイルさんが私達と逆の方向へ敵を放り投げた。
ゴーレムは近くの敵に向かうのか、私達には目もくれずアルタイルさんへと向かう。
ギルバートの許にたどり着いた。
倒れた地面の周囲には血が流れ、草が赤く染まっている。
かなりの出血量だ。見ていて、気分が悪くなる。
「人を、仕事に誘っといて死ぬなんて、許さないわよ!
あらゆる命の源よ、その力を持って傷を癒したまへ キュア・バブル」
ギルバートを大きな泡が包み、その傷を癒す。出血は止まったけど、まだ目が覚めない。
泣きそうになるのをこらえ、様子を見る。こんな駄目男のことで泣いてたまるもんですか!
一筋だけ涙が落ちたが、こんな姿見せられない!
それに泣いてもいられない。私はまだ戦える。
「速き動きの象徴よ、その動きの素早きを彼に与えたまへ “クイックウインド”
強き攻撃の象徴よ、彼に一時力をかしたまへ “ファイアブースト”
堅き守りの象徴よ、その力で彼を守りたまへ “ディフェントサンド”」
アルタイルさんの足を竜巻が包み、拳が赤く光り、服が銀色に輝く。
私に出来るのは、これだけだ。防御魔法は、敵が気づきこちらに来るかもしれない。
『ギルバート……。こいつは殺しても死なない。安心しろ、大丈夫だ』
「そうね、……大丈夫よね!ゴキブリみたいな生命力。こんな化け物、見たことないわよ!」
安心できるはずない、でも、フィソラも私もそう思いたかった。
「…ゴキブリとか……化け物とか、ひどすぎ…だろ」
弱々しい声がする。ようやく意識をとり戻したようだ。
「ギルバート!良かった……。離れてって言ったじゃないの!バカ!」
「起きたら、いきなり…それかよ。傷に響く……怒鳴るな。
ありがとう……心配かけたな」
ギルバートの優しい声に、なんだか照れる。
「心配なんてするわけないでしょ!バカ!」
顔を背ける。私は分かりやすい。嘘をつけばすぐに顔に出る。
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