「フィソラ。本気で行くわよ!」

そういうと、アイリスは不解氷(ふかいひょう)といわれる宝玉を指輪に入れる。

フィソラの体が光り、水属性のアクアドラゴンへと変わる。

体は一回り大きくなり。指の間には水かきがつく。

残念ながら、敵のように回復は出来ない。しかし、そもそもの体力が増えるのが特徴である。

癒す必要がない持久力。これがアクアドラゴンである。

『行こう、アイリス。危険だから私の後ろを離れるな』

「もちろんよ。いざ敵討ち!」

そういうと、走っていった。もう……何も言うまい……。アイリスの中で変なスイッチが入っている。

フィソラの変身に気づいた敵が、フィソラを向き構える。その瞬間、

「させません」

横に走りこんだアルタイルが、角をたたき折る。そして敵は角のないまま突進する。

フィソラがそこを踏み潰す。だが、核からは外れた。尾の付近を踏む。

『はずしたか』

核の破壊が免れた敵は湖へと戻ってゆく。そして水に入った。

『待て!』

フィソラもそのまま湖に入る。

「水の中で戦えるの?あんなに大きいのに?」

リーリアも驚いたようだ。普通のアクアドラゴンは泳げない。

生活の場が水辺に近く、常に湿ったところにいるからそう進化したのだ。

長い目で見れば、泳げる完全体へと進化するだろうが、まだ無理だ。

「はい、大丈夫ですよ。私の一族が育てたドラゴンの特徴なんです。」

アイリスの村では、水属性のドラゴンをパートナーにした場合は泳ぎを教える。

水かきがあるのだから、工夫次第で何とかなった。その成果がこれである。

ただし、残念ながら肺呼吸。こればかりは、どうしようもない。

「フィソラ、敵はどう?見失ってない?」

『大丈夫だ。核の色が濃いからついていけている』

敵が向き直る。とがった氷がフィソラを向く。泳いでいる間に再生したようだ。

そのままつっこんできた。

フィソラは水を操り目の前の敵へと強い流れを作る。

もともと速い訳ではない敵は、ゆっくりとこちらへと向かう。

『アイリス、水ごと上空へ吹き飛ばす。そこを狙え!』

「解ったわ。リーリアさん!」

急に呼ばれて、リーリアが驚く。

「え、何?」

「今からフィソラが、敵を上空へと飛ばしますから、攻撃魔法をお願いします」

「じゃ、離れてて、巻き込まれるとまず助からないわ」

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