敵の攻撃を受け、後方にとび、岩にぶつかる。
アイリスと戦っているのは、ドラゴンの姿をした、マグマでできたゴーレムだった。
核が赤い、力が強い火属性ゴーレムであった
幸いにも、足や頭は岩でできている。熱い以外は殴られてもただの打撃だ。
だが、強い防具を装備しているわけではないアイリスから見れば、その一撃も脅威である。
岩にぶつかり気を失う。ぐったりしている「アルタイル、回復してやってくれ!」
言ったと同時に飛び降り、敵の前に立つ。
「ここは通さねえ。仲間、傷つけた罪は重いぞ」
後方では何かが強く光った。何をしているのか見てられないが、きっと何とかしてくれるだろう。
アルタイルにアイリスを任せ、俺、フィソラ、リーリアで敵に挑む。
俺もフィソラもここまでイライラするのは久しぶりだった。
ずっと守ってきたのである。今回アイリスが傷ついたのは、彼女自身のせいかもしれない。
しかし、それはすべて自分を犠牲にしても仲間を守ろうとした、彼女の優しさであった。
それを思うと、守りきれなかった気がして、悲しさと怒りが募るのである。
「おい、てめえ、答えろ、天国に行きてえか!、地獄にいきてえか!!」
怒りのままに、とっさに出てきた強い猿の決め台詞を吐き、切りかかる。
フィソラも限界だったようで、同時に殴りかかっていた。
同時刻、アイリス付近。
アルタイルの体が光り、細く美しい角の生えた馬に代わる。
青いたてがみ、そして首にカバンをつけている。
「アイリスさん。大丈夫ですか?アイリスさん」
「う、う〜ん」
「息はありますね、良かった。
では行きますよ。
”セイントヒール”」
角の先から真っ白な光が広がり、付近を白く染め上げる。
ギルバートが見た光はこれであった。
「な、何、眩しい」
アイリスがゆっくりと目を開く。
「良かった、目を覚ましましたね」
「ユニコーンに助けられたのね。どうしてこんなところにいるの?」
「分かりませんか?アルタイルですよ」
「え、アルタイルさん!?」
アイリスが飛び起きる。そりゃ驚くだろう。
筋肉ムキムキ野生児のような体が、細く綺麗で高い声で話すユニコーンに変っているのだから。
「そういえば、私…一体?」
「覚えていませんか?私たちがあなたに追いついた時、あなたはあのゴーレムの一撃をくらい、この岩に激突し気絶したのですよ」
「そうよ、そのとき確か、ぎりぎりでディフェントサンドを自分にかけたの」
これで合点がいった。あの攻撃をもろに受けて気絶で済んだのはディフェントサンドのおかげだったのだ。
「なんにせよ。今は動かない方がいい、私のこの魔法を受けたからには、明日の朝には回復するでしょうが、酷い傷でした」
「そんな訳にはいきません、私が一人で突っ走ってこんな事になったんです、ゴーレムを倒すまでは……」
立ち上がろうとする。彼の回復魔法はすごいのだが、それでも、こんなに早く動きだせるはずがない。
「あなたはまだそんな事を言っているのですか!いい加減気づきなさい。あなたの意地や、無理のせいで、みんな心配したのですよ!!」
アルタイルが声を荒げる。リーリアが振り向き信じられないといった顔をする
「ごめんなさい!」あの元気なアイリスも、この言葉には反省するしかないようだ。泣き出してしまった
「ごめんなさい、つい意地を張ってしまって…本当にごめんなさい」
「解って下さればいいんです。もう皆に心配をかけないでください」
アイリスが泣き止み、何かを決心した顔になる。
「アルタイルさんひとつお願いがあります」
「なんですか?」
「あそこの袋を取ってくれませんか、戦闘に巻き込まれると大変なので、襲い掛かられる前に、向こうに投げたんです」
「良いですよ、でも、あれでどうするんですか?」
「せめてもの、お詫びです。今の私にできる精一杯のことをします!」
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