(ここまでさせるほど心配かけたのなら、むしろ私が悪かったわね…。ごめんなさい。休ませてもらうわ…心配してくれてありがとう。)
5分ほど、何も話さず進んでいた。だが、静か過ぎる。あのアイリスが、強引に乗せられてじっとしている!?
「アイリス!ちゃんと乗ってるか?」
「もちろん乗ってるわよ。代わってくれてありがとね!でも、しつこく言ったら降りるわよ!」
こういう場合アイリスは、維持でも下りてやる、とか考えている事も多い。
乗ったら乗ったで、いつ降りてくるか心配になる…。
「頼むから休んでくれよ…」
「また言ったわね。降りるわよ!」
「ごめんごめん。おとなしく乗っててくれ!」
アイリスを強引にフィソラに乗せてから、10分ほど歩くと、曲がり角から光が見えた。
「きっと出口だわ、暑い世界にさよならよ〜!」
暑いのが嫌いなリーリアは大喜びである。
だが、出口の手前にあったマグマの噴出口から、フィソラと同じくらいのドラゴンの姿をしたゴーレムが現れた。
「げ、核が赤い、火の属性ゴーレムじゃないか!」
体もマグマでできている。足と頭のみ岩石で、攻撃は普通の打撃のようだが、直には触れないだろう。
そのゴーレムが前足を上げる。
「フィソラ下がれ」
『分かっている。落ちるなよ』
フィソラが後ろへ下がると、さっきまで居た所に、敵の前足が振り下ろされた。
そこには、小規模ながらクレーターのようなものが出来た。
「さすが力自慢の火属性ゴーレムだな!」
俺は急いで剣を構えた。みんなも、フィソラから降りてくる。
「面倒な敵だが、相手をしてやるぜ。アイリス、防御と素早さを上げてくれ」
「任せておいて、
堅き守りの象徴よ、その力で彼を守りたまへ ”ディフェントサンド”
速き動きの象徴よ、その動きの素早きを彼に与えたまへ ”クイックウインド”」
敵が攻撃してくる。俺はそれをかわしそのまま相手の足を切断する。
はずであったのだが、相手の足は体を支えていた。外れたと言う事はない。間違いなく斬ったはずである。
だがすぐに気づく、切れるはずがない、相手は液体なのだ。
剣豪ならば、海の波でも切れるだろう、だがこちらは上から常に重さがかかっていて斬った先からまたくっつくのである。
「剣が通じねえ、アルタイル残念だが下がっていてくれ、直に触れられない以上、拳は役に立たない」
マグマにじかに触れるのだから、当然ながら大怪我である!
「そうですね、リーリア、私の分も頼みますよ」
「任せときなさい。止めは私がさすわ。そのためにも誰か動きを止めて!」
『私が行こう、アイリスあれを頼む』
「オッケー!」
指輪の穴に琥珀を入れる。
フィソラの体が輝き、鱗が割れ、黄緑色に変身したフィソラが表れる。
土属性のドラゴン、ダイヤモンドドラゴンである。
その割れた鱗の下には新たな鱗があり、鎧をまとったようになっている。
「よし頼むぞフィソラ」
フィソラの動きが止まったかと思うと次の瞬間黄色いブレスを吐く。
ダイヤモンドドラゴンの必殺技は、とがったダイヤをぶつける事だが、この場合それより強力かもしれない。
技名 麻痺ブレス、ダメージはないが、敵の動きをかなり長い間とめることができるのである。
「助かったわ、いっくわよー。
泉に湧きし聖なる水よ、この地に集まり玉となれ、水の精霊ウンディーネの力を借りて、その身に力を宿し、拘縛せよ ”アクアプレッシャー”」
敵の周りに無数の水の玉が現れる。
だが、敵に触れた瞬間、蒸発しているではないか。
「リーリア、魔法は選んで使ってくれ、効いてないぞ」
「文句は良く見てから言いなさい、どこが効いていないのよ!」
よく見ると、当たった部分が黒くなっている。そう冷やしているのだ。
10個ほどぶつけると、敵の体は完全に冷え真っ黒になった。
「仕上げ行くわよ〜!」
残った水の玉同士をぶつけ大きい玉を作る。それを敵にぶつける。
敵が水の玉の中に入る。
「”プレス”」
掛け声とともに水の玉が小さくなる。水圧が発生しているのだ
残ったのは、小さな黒い塊のみだった。
「終わったわね、あれ結構いい魔法でしょ。敵があれに入りさえすれば捕獲も止めも自由自在よ」
「ああ、すごい魔法を使うんだな、威力が強いとは効いていたが、ここまでとは思わなかった。素直に感心するよ」
「フィソラだってすごいでしょ、動きを止められるし、鱗が二重だから防御も高いのよ」
フィソラが敵の動きを止め、勝利への糸口を作ったのが嬉しいのだろう。誇らしそうに笑顔で話す。
『いや、私は、あの魔法のほうがすごいと思う。一度つかまれば脱出不可能というのは、きわめて強い』
「リーリアさん。フィソラがあなたのことをほめているわよ。あの魔法の効果がすごいって」
「竜にほめてもらえるなんて嬉しいわ。」
プライドの高い竜が人を褒めるなんて、そうあることではない!本当にすごい事である。
「今回、出番が無かったですね…。次こそ私も…」
皆が勝利にわいているとき、アルタイルは、そう心に決めるのであった。
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