「どんな奴なのか会ってみてからでも遅くは無いと思う」
少し考えてから僕はそう答えた
「会ってみて使えそうになかったり考えが合わなかった時は、切り捨てるべきだと思う」
「・・・そうだな、会うだけは会ってみるか」
リックは僕の後ろで静かに言った
「ところでリック、ロープはどうなってるんだ?」
そろそろ腕がしびれてきたんですけど・・・
「今30本目の結び目を解き終わったところだ」
・・・うそぉ
こいつら限度というものを知っているんだろうか?
いい加減我慢できなくなってきた僕はある事を思いついた
「リック、もう解くのはあきらめてバッサリ切ってくれない?」
「おぉ、その手があったか」
ポン、と手を打って
「なぁんだ、最初からそうしてりゃぁよかった」
とこんなことを言う
ひょっとしてこいつ馬鹿なんじゃないだろうか
「じゃ、すっぱり切っちゃうから怖かったら目ぇつぶっとけよ〜」
そう言ってリックが剣を振り上げるのとハーメリアが帰ってくるのはほぼ同時だった
「ちょっ!リック何やってー」
「へ?」
がぃぃぃぃぃぃぃぃん!!
問答無用で一撃必殺の蹴りがリックに突き刺さった
「ぐぉを!?」
ただし鎧の上からなので失神にまでは至らず、逆に失神できなかったが故のダメージを受ける
そして持ち主の手から離れた剣は僕の目の前を掠めて床にぶっ刺さった
正直、生きた心地しない・・・
「まったく何考えてんのよリック!こいつに何か恨みでもあんの!?」
「いやそうじゃなくてー」
リックは吹っ飛ばされた先で苦しそうに弁解している
「怪我は無かったですか?」
目が(‥)になっている僕に突然やさしそうな声がかけられた
「あなたは?」
「私の名前はミリィ=ベル、あなたとパーティを組むことになったアーチャーよ。よろしくね」
ナイフでロープを切断するとニコッと魅力的な微笑みを浮かべた
「あ、、ああ、よろしく」
やや歯切れが悪くなる僕
考えても見てほしい
いままでありえない状況におかれていた人間が突然常識を持った人間に「よろしくね」なんていわれる状況を
正直、反応に困った
視界の隅ではリックがハーメリアにメタメタにされている
「おい!やりすぎだろ?俺はただ手っ取り早くー」
「絶対殺そうとしてた!私見たもん!」
君達何歳ですか?
(ギル、大丈夫?)
不意に頭の中にこんな声が響いた
振り返ってみると窓の外からアナスタシアが心配げに中の様子を伺っている
「ああ命には別状無い、ありがと」
ようやく事態が沈静化しそろそろ出発の段取りを決めようかというところにすっかり忘れられていた人間が姿を現した
世界の裏で生きた伝説とも呼ばれているわずか18の少年
リーファ=レンクルである
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