あれから一ヵ月後
「「荒ぶる風の力よ、刃となりて刻め」」
放たれた魔法により数体ガーゴイルが粉々になった
それでもなおひるむことなく向かってきたものもいたが
ごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
空から降ってきた怒涛の猛火に瞬間的に焼き尽くされてしまう
『ドラゴンブレス』を撃った火竜がこちらを向いてウインクした
チャンスだ!
相手の隙を見て僕と、もう一人が敵の群れの中に突っ込む
「怒れる炎の力よ!」
『ファイアーボール』が至近距離で爆発し、ガーゴイルが木っ端微塵に吹き飛ぶ
「二刀流剣術、『飛竜の番』!」
これは適わないと見て逃走を試みるガーゴイルもこの技によって殲滅された
「おっけー、ギル、今度の依頼も楽勝ね!」
今パーティを組んでいる小さな魔導師が僕の名を呼んだ
「あぁ、楽勝さ!」
あのとき以来、僕はハーメリアとリックのパーティに参加していた
主に魔物の殲滅(せんめつ)という難度の高い依頼ばかり受けていたが
絶妙なコンビネーションで乗り切っていた
「おし、今回の報酬だ、いや〜助かるよ、魔物の殲滅なんて好き好んで受ける奴お前らくらいだからな」
ロードは金貨の詰まった袋をハーメリアに渡しながらホクホク顔で言った
「あたしに不可能は無いのよ!」
「俺たちに不可能は無いって言ってほしいね」
ハーメリアにリックが不平をもらす
「なに?一番働いてないくせにこの私に文句言うわけ?」
ハーメリアがリックの鼻先に指を向けてそう言い放った、事実ではあるがこれを言われると腹が立つのも事実だ
「そんな言い方ねーだろ!」
「ホントのことでしょ!?」
あぁ、また始まった・・・このパーティの唯一の欠点はリックとハーメリアが事あるごとに喧嘩を始めることだ
僕が加わってからその回数が若干増えた気がしないこともない
「まぁまぁ喧嘩はよそうよ、それより今回の報酬でなんかいいもんでも食べない?」
すかさず仲裁に入る
「・・・まぁ〜、ギルがそう言うなら〜今回は見逃してあげよっかな〜」
「っけ、運のいい奴め」
リックは渋々と、ハーメリアは何故か嬉しそうにそれぞれ角を収める
ことにハーメリアのこのあからさまな表情の変化の理由が毎回わからないのだが
アナスタシアに言わせればそれは僕の修行が足りないらしい
不意にとん、と誰かが僕にぶつかった
「すまない」
あれ、どこか聞き覚えのある声だなぁ
「あら、ギルバート君、久しぶり〜、ハーメリアとリックも一ヶ月ぶりね☆」
「あ、ミリィ、ひっさしぶり〜」
「お、てことはお前ミリィと組んでたのか?・・・うらやましい奴め」
「・・・ほっといてくれ」
その声の主は、はたして今の今まで音信不通だったミリィとリーファだった
「リーファか、で、首尾はどうだった?」
「上出来だと思う」
どうもリーファが特殊な依頼ばかり受けているのは今も変わらないらしい
「一ヶ月ぶりの全員集合ね!」
「そーだな、俺はリーファなんて速攻でくたばったんじゃねーかと思ってたのによ!」
「よほど命が惜しくないと見える・・・」
「ちょっとリーファ、大人気ないわよ」
にわかにガヤガヤと騒がしくなる
この騒ぎを収めるかどうか悩んでいるとハーメリアがこんな提案をした
「そういえばさ、この近くにあるラインフェルト家の別荘で第1皇女のクリス=ド=ラインフェルト様の誕生日パーティがあるんだって!」
「―――!!」
リーファがざっと後ろに半歩下がった
「そのパーティってクリス様の意向で誰でも参加できるんだって、みんなで行って見ない?」
「へー、悪くねぇな」
「そうね、行って見ようかしら?」
「・・・・・・」
じりじりと後退するリーファ
「それじゃあ決まりね!」
ハーメリアが強引に参加を決定する
「ねぇ、リーファはどうする?」
僕は逃げ出す寸前のリーファに声をかけた
「ぼっ僕は次の仕事に――」
「はーいそういうの却下ー☆」
「そういえばリーファってパーティ用の服とかってもってるの?」
「そんなのどうだっていいだろ!?とにかく僕はこれから先数か月分のスケジュールが―――」
じたばたと抵抗するもハーメリアとミリィの二人がかりで押さえつけられては逃げ出すことができない
「ならなおのこと逃がすわけにはいかないわね」
「そーだ、ミリィ、これからリーファ連れて新しい服買いに行かない?」
「いいわね、いきましょ」
ずりずりと引きずられて退場するリーファ、彼にとって女性は鬼門らしい
「で、俺たちはどうするよ?」
状況から取り残されたリックが僕に意見を求める
「う〜ん、とりあえず僕たちも付いて行ってみようか」
「そーだな、面白そうなものが見れるかもしんねぇしな!」
僕はそんな言葉に苦笑しつつこんなことを考えていた
この世界に来ていろんな仲間に出会った
アナスタシア、ハーメリア、リック、ミリィ、リーファ・・・
彼らに出会えたのはこの世界に来ることができたからだ、僕はまだ自分が異世界の人間であることをまだ誰にもしゃべってはいない
なぜなら僕はこの世界に来れたことを本当に幸せだと感じているからだ――
THE END
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