囮役は僕たちで引き受けることにした

僕はアナスタシアに乗って大空に舞い上がった

「荒ぶる風の力よ、刃となりて刻め!」


僕たちは一気に距離を詰めると手近な一体に『エアスラスト』を放った

反応の遅れたワイバーンは見えざる刃に切り裂かれ真っ二つになった

ぎゃおぉぉぉぉ、ぎゃおぉぉぉぉ

残った四頭のワイバーンが鳴き交わして戦闘態勢に入る

(遅い!)

だがすでにトップスピードに達していたアナスタシアと、今から加速するワイバーンでは圧倒的な速度差がある

接近を許したもう一頭がアナスタシアに前足で引き裂かれる

「あと三頭!」

(うん!)

迫り来る火球をかいくぐりつつ『エアスラスト』でもう一頭にとどめを刺す

(しまった!後ろに付かれた!)

「何!?」

残った二頭のワイバーンが急旋回してアナスタシアのすぐ後ろにぴたりと張り付いている

「振り切れるか?」

(やってみる!)

アナスタシアはさらに加速しワイバーンを振り切ろうとするが、体が小さく体重の軽いワイバーンの方がやや速いため振り切ることができない

ワイバーンがカッと口を開きブレスを吐こうとしたその時、強烈な光が視界を覆った

《油断するな》

「リーファ!?」

巨大な稲妻を浴びたワイバーンは半ば消し炭となってゆっくりと落下していく

《魔法で援護する、でかいのから順番に片付けるぞ》

「了解!」

僕はアナスタシアを急降下させモンスターの群れの真ん中にドラゴンブレスを吐かせ、次々とモンスターを殲滅(せんめつ)していく

「二刀流剣術『飛竜の番』!」


ずがぁぁぁぁぁぁん、とグレイス城の城門がリックに破壊される

「アナスタシア!」

(うん!)

アナスタシアは急旋回してグレイス城の城門をくぐる、だが中庭には結界が張り巡らされていて侵入することができない

「猛き雷よ、矛となりて貫け!」


ハーメリアが呪文を使って決壊を破る、雷系統の呪文、『サンダースピア』だ

「さぁ、行くわよ!」

僕たちはもはやためらうことなく結界の破れ目から中に飛び込んだ