「この程度の怪我、問題は無い」
呪文が収まった後リーファの所へ駆けつけてみると全身血だらけでぶっ倒れていた
「頭からどくどく血流して何処が大丈夫なのよ!?」
原因はまだ未完成の呪文で無茶なコントロールを行ったためで、動作不良を起こした魔法の魔力の一部が暴走して跳ね返ったのだ
「そうよ、ちゃんと手当てしないと危ないわ」
あの魔法は『再誕の炎』と名付けられていて、完成の暁には高威力高機動の最強の魔法になるはずだったが諸事情あって開発は頓挫していた
「いや、本当に問題は無い・・・い、今までにもこれくらいの怪我は何度かあったけど、2週間もあれば――」
「十分重症だろーが!」
「うぅ」
その試作品の一つをリーファは何処からか入手して実用レベルまで改良を加えていたようだ、もちろんまだまだ完成には程遠いが・・・
「リーファ、悪いけどこの怪我だと連れて行くわけにはいかない」
これが僕たちの出した決断だった
残酷かもしれないが、重症の人間を庇い続けながら戦うわけにはいかない
「・・・判った、でも付き添いはいらない」
そう言うとリーファは静かに立ち上がった、もたれていた木にも血がべっとりとこべりついている
「なんで!?こんな怪我でこの森を引き返すなんて!危険よ!」
自分が護衛するつもりであったらしいミリィが大声を出した
「自分の身を守るくらいなら今の僕にでも出来る、それにミノタウロスを配下に加えるほど強力な危険人物を野放しにすることの方が危ない」
彼はそう言うと大剣を背負った、どこかが痛んだのか少し顔をしかめた
「おそらくグレイス城にはもっと強力な魔物が待ち構えているはずだ、気を付けろよ」
「は!俺はお前より早く死ぬつもりはねーぜ」
リーファはリックの軽口に少し笑みを浮かべ
「奇遇だな、僕もそのつもりだ」
と言って背を向けて歩き出した
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