親玉を撃退できれば・・・そう考えた僕はリーファとミリィの援護に向かった

「吹きすさぶ風の力よ、槍となりて穿て」


突破力に優れた風系統呪文『ジャベリン』横向きにした竜巻に真空波を足したような呪文だ

「撃て」

ジャベリンを放った直後にアナスタシアにブレスを撃たせる

「!!」

すんでのところで気付いたミノタウロスは斧を使ってジャベリンを受けたが、

その ジャベリンのすぐ後ろを通ったためエネルギーをまったく失っていないドラゴンブレスをもろに喰らう

ずがぁぁぁぁぁぁぁぁん!

凄まじい大爆発に巻き込まれ体制を崩したミノタウロスにアナスタシアが体当たりを敢行、

(今!)

僕は止めを刺すべくアナスタシアの背を蹴り前に飛び出し『エアスラスト』を完成させる

後はこいつを無様に体勢の崩れたミノタウロスに叩き込め―――

「ガードだ!」

そのとき、リーファの声が耳に届いた

「――!!」

《願うは闇、放つは静寂、我らが敵を打ち滅ぼせ!》


ミノタウロスが、僕の気付かないうちに聞いたこともない魔法を完成させていた

僕はとっさに『エアスラスト』を『エアシールド』に組み替えた

ごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!

放たれた瘴気によって地面に生えている草花が一瞬で枯れる

僕は凄まじいパワーに翻弄されながらも何とか致命傷を負わずにすんだ

(ギル!跳んで)

言われた通りにジャンプすると難を逃れていたアナスタシアが背中でキャッチしてくれた

(今の呪文は?)

「わからない、でもどうすれば・・・」

ぴっと左腕に内側から弾けたような傷が数本走った

完成させた呪文を無理やり組み替えたため反動が来たのだ

地上ではミリィが『アローレイン』でミノタウロスを食い止めていた

だが鋼の筋肉にはあまり効果的なダメージにはなっていないようだ

「まったくどんな化け物よ!」

ミリィがらしからぬ悪態をつく

が、すぐさま立て直し次の矢を放とうと―

そこに3体のガーゴイルが急襲をかけてきた

「ちぃ」

リーファが攻撃を取りやめてガーゴイルに向かう

しかし、それこそが敵のねらいだった

今の一瞬で即席のコンビネーションが、崩れた

今まではミリィや僕の攻撃の隙間を全てリーファが埋めていてミノタウロスに反撃の機会は無かった

あって苦し紛れの呪文を当てずっぽうに放てたのみ

ミノタウロスはリーファが一瞬抜けることで逆転のチャンスをつかんだのだ

「くっそぉ!」

「ちょっとリック、ちゃんと前衛の役目果たしなさいよ!?」

反対側ではリックとハーメリアがガーゴイルの波状攻撃に押され気味になっていた

(・・・しまった!)

僕の完全な判断ミスだ

孤立したミリィに向かいミノタウロスが突進する

急行しようとした僕の前に別行動をとっていたガーゴイルが踊り出る

なかば覚悟を決めた表情でミリィは次の矢をつがえた

助けにいける人間は、いない