11 少し前、マカリウスという、その信仰と学識と高貴な生れと生活において秀でた人物が、運命論に対する反駁書すなわち『学識』呼ばれる書物を手に入れ、その作品に必要かつ実り豊かな労苦を費やしていたが、多くの事柄について、特に神的な摂理の采配についてどのように語るべきかを明確にできなかった。彼には、それが非常に難しい問題であるように思われた。ところが彼が言うには、夜の諸々の幻の中で主が、彼に、海に浮かんだ一艘の船がはるか沖合いから彼に近づいてくる様子を彼に示した。その船は、港に入ると、彼を悩ませていたすべての当惑を解決することになっていた。彼は、目覚めると不安になり、その幻を熟考し始めた。そして彼が言うには、それは、まさに私が到着した時のことであることを、彼は見出した。そこで彼は直ちに、彼の労苦の目的と彼が抱く諸々の困難、そして、あれが見た幻を私に知らせた。さらに彼は、オリゲネスの諸見解が何であるかを問い始めた。彼は、問われている諸々の事柄に関してギリシア人たちの間でもっとも著名な人であることを知っていた。そして彼は、それらの事柄の一つひとつに関する彼の諸見解を手短に順を追って説明してくれるように私に頼んだ。私は最初、その作業はかなり難しいと答えることができただけだった。しかし私は彼に、あの聖人のような人物である殉教者パンフィロスが、彼が望む類の作品の中で、すなわち、彼の『オリゲネスのための弁明』の中で、その問題を幾らか扱っていたと告げた[1]。彼はすぐに、その作品をラテン語に訳すように私に頼んだ。私は、その作品の文体にはまったく熟練しておらず、この三十年近くの無為によっラテン語を書き死する私の能力も鈍くなってしまったと、彼に幾度も言った。しかし彼は、その要求のいて執拗だった。彼は、可能な限りのあらゆる種類の言葉で、彼が知ろうと切望している諸々の事柄を自分のところに引き寄せようと熱心に求めた。そこで私は、彼が願っていたことを私にできる最善の言葉で行った。しかしそれは、私が行った小量の翻訳の源泉となった作品それ自体に対する全幅の知識へのいっそう大きな願望を彼に焚きつけた。私は、辞退しようと試みた。しかし彼は、激しく私を急き立て、労苦する彼を助けてくれる手段を(私が)拒まないようにするために、彼の要求の証人として神を引き合いに出してきた。ひとえに彼が書くも熱心に言い張ったので、そして彼の願望は神の意志にかなっているのは明らかなように見えたので、私は結局、承諾し、翻訳した。



[1] 拙訳を参照せよ。

 

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