恵日の秋

 南北20キロの細長い竹野町の中程に,恵日,金原と呼ばれる小さな集落がある。「エビ,キンバラを見たか」といわれるほどこの2つの集落は山の中にある。小さい頃,恵日まで遠足にいったことを 思い出すが,それが小学校の頃 だったのか,中学校の頃だったのかはっきりしない。
 遠足の距離は十キロほどだから大したことはないが,人ひとりが通れる細い獣道のような山道をずんずん進んでいったような記憶がある。目的地の恵日では椎茸が栽培されていた。 農家の人から「干し椎茸にして出荷するのです。」と説明を受けたように思う。
 今ではこれらの集落へは車で簡単に行くことが出来る。

 いつだったか恵日のさらに奥にある金原までスケッチに車で出かけたとき,道ばたの柚が実をつけていた。「お,いただき」と思って手を伸ばしていたら,軽トラックが登ってきた。車から降りるなり「うちの柚だで。」とおばさんは言った。

2003,10,3


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