門谷にて

 9月になって田圃の稲が実ってきた。遠くに見える稲はほとんど黄色い帯に見える。
 どんなに深い谷でもそこには必ずと言っていいほど田圃がある。狭い土地に上手く工夫をしてつくられている。最初に開墾をした先人の苦労は大変なものだったにちがいない。

 このスケッチは8月の終わりに、竹野川の河口から12キロほど上流にある門谷という集落のはずれから描いた。
 スケッチしていたとき生徒が自転車で帰ってきた。ボクを見つけて
「そんなとこでなにしとん。」
「えーかいとるんだがな。」
「どこいっとんたんだ。」
「塾の帰り。」
 しばらく話して生徒は帰っていった。
その後、学校で会った彼は
「あの絵はかけたん。」
「ぼちぼち。」
そう言っておいた。

 9月になって田圃の稲が実ってきた。それを待って色を着けてみた。

2002,9,14

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