春の光の中で

 東町は竹野地区の中でも少し高い位置にある。

 この路地の向こう側はけっこう急な坂道になって下っている。小さい頃は自転車で登り切れなかった坂道だ。スケッチしている目線は、正面に見える小学校の校舎の2階の窓あたりにいっているからけっこうな高さになることがわかる。

 今頃の季節はあまり色彩を感じない。山はまだ眠っていて、わずかな常緑樹はくすんだ緑だし、まだ葉っぱをつけていない木々は無彩色な感じだ。だからかもしれないが、これからやってくる圧倒的な色彩世界がよけいに待ち遠しい。

 東町の路地も春霞の感じはしていて、なんか景色が霞んでいるようだった。このスケッチをしているとき、後ろから数人の男の子たちが自転車で通り過ぎていった。何人かが振り向いた。その中に娘と同級生の男の子がいて「あ、おじちゃん」といいながら自転車から降りてゆっくり近寄ってきた。そしてゆっくりと覗いて「わ、上手ですね」と言ってくれた。しばらく話をして友だちの方へ戻っていったが、彼のまわりがえらくすっきりしているように感じた。利発な彼はこの4月で小学校の6年生になる。

 2001,3,24


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