秋がやってきた

 「さっむー,ストーブはまだか」そんな朝の挨拶を交わしているうちに,いつのまにか山は紅く色づいていて,今年はきちんと秋がやってきた。

 多感な時期を太平洋側で暮らした自分にとって,秋のイメージは,井上靖氏の『カチリ 石英の音』のようにどこまでも澄んでいるのだが,このあたりはそれとは違う。
 日本海側ではこの時期,どんよりとした雲が垂れ込める日が多い。また,「弁当忘れても傘忘れるな」という天気俚諺があるくらいこの時期の空模様はめまぐるしく変わる。このあたりではそれを「うらにし」と呼んでいる。
 だからなのか,時折雲の切れ間から現れる青い空をみるとほっとする。太陽が顔を出したりするとうれしくなって,いっぱいに浴びたくなる。そんなときの光の粒はとっても強く感じる。

2005,11,25


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