今はもうない竹野中学校の2階から眺めた竹野町の家並み

 竹野中学校は、グランドを挟んで竹野川に平行に建っていた。校舎の2階から見える景色は、春夏秋冬それぞれの趣があった。雪解けとともに芽吹く新芽の緑は、日に日にその色を変えていき、それを映す川面は、とてもきれいだった。向こう岸の家並みは穏やかで、子供たちの遊ぶ姿をよく目にした。

 中学生だった頃、2階の窓に肘をかけ、向こう岸を見ながら同級生の女の子と二人だけで話をしたことがある。内容は覚えていないが、なぜか、その子の横顔と、大人びた雰囲気だけは憶えている。

 しかし、この校舎は今はない。昨年竹野中学校は別の場所に新築され、木造の校舎は取り壊されてしまったのだ。あの2階の窓にひじをついて向こう岸を見ることはもうできない。


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