段はかろうじてそこにある

段は限界集落である。
ほんの10年ほど前はまだ数軒がこの地区で生活をされていたが,今では1軒を残すのみとなった。

人の住まなくなった家は朽ちるのが驚くほど早い。特に山奥にある集落の家はその早さが尋常ではない。いつだったか夏に訪ねたとき「傾いてきたな。」と思っていた家が,次の年の夏には崩れていて, 段にあるただ一つの道を半分ほどふさいでいたことがあった。その家は2年ほどで植物におおわれてしまった。「こうして土になるんだなあ。」と眺めていたことを思い出す。というのも,今年の秋口に訪ねたら,そこはすっかり平地になっていたからだ。きれいさっぱり整理されたその場所は山 際 を切り落として作られたせいもあろうが,驚くほど狭かった。

人の入らなくなった田圃は草におおわれていた。その中にぽつんと耕耘機が取り残されていた。

2012,11,5

 


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