美術室の片隅の作品棚

 暖かくなったらスケッチに出かけようと思っていた。今年は春は遅く4月は寒かったが,5月になっなって暖かくなり,外の世界は春のうららかな日がやってきた。今はその季節も過ぎ去り,さらに,梅雨の時期も過ぎていいって,今はむしむしするものの夏の暑さがやってきている。時が過ぎていくのは早いものだ。

 井上靖の小説「北の海」の中で,主人公の洪作が中学校教師から「荏苒日をむなしくしないように」と言われ,ジンゼンという字が書けるかと問われる場面があった。
 なんにもしないで,ただ日が過ぎて行ってしまったここ何ヶ月はそんな感じだったように感じる。

 手術をした病院の薬局に勤務している教え子が見舞いに来てくれた。「肩の手術くらいでよかった」といって慰めてくれた。「他の病気だったらどうしようかと思った」そうだ。職業柄,最悪を考えてしまう のだそうだ。

 右利きだが体の一部でも壊れると,やっぱり調子が出ない。少しずつだけど回復しているようなので,心にもゆとりが出た。まずは見慣れた美術室の片隅を描いてみた。

2012,7,23


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