竹野町下町 花のある路地

 竹野町はその昔、北前船の港としてとても栄えていた。その時の様子の一部を、竹野浜にある北前資料館で知ることができる。(入場無料)

 港のある浜地区は大変に道が入り組んでいて、初めて訪れる人はたいてい迷子になる。民宿に泊まっている客が、自分の宿はどこなのか探し回っている姿を時々目にする。路地が一つ違っていて迷っているのだ。「こっちの路地ですよ」と教えると、ほっと一安心の顔で帰っていく。夏場はいいが、冬場の迷い客はかわいそうである。でも安心。誰かに聞けば、たいていその民宿の場所まで連れていってくれる。わかるように説明するより、連れていく方が易しいからなのだ。

 思い出してしまいました。何年か前、観光客がおばあさんに道を尋ねていました。おばあさんは「ストーンといきにゃあな、ストーンと」と竹野弁で一生懸命に説明しています。客は「ストーン」の意味がわからないようで首を傾げるばかり。おばあさんの真剣さと、その客の困った様子にギャップがありすぎて、思わず笑ってしまったのです。ストーンとは、まっすぐ行くことなのである。

 6月の太陽は、狭い路地も華やかにしてくれる。近くにいても今ではめったに行かない、小さい頃よく遊んだこの路地が、何ともいえずやさしかった。


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