夢中説夢の巻
夢中説夢
夢のなかで夢を説くということは、如何にもはかなく、頼りにならないものの見本のような気がしますが、この巻では、仏祖が真理を説かれるのは、悟りのなかに悟りを見るごとくであり、それは夢中説夢であるとされます。
そして、夢のなかで夢を説くことは法輪を転ずることであり、それによって大海や、聳え立つ須弥山や、さらには広大な国土も現成するものであるとされます。
我々の常識をまったく覆す見解です。この現実世界に生きる我々にとって、現実に足を着け、社会のなかで日々苦労しながら年月を重ねていくことこそが、生の根拠であるように思えます。
だから、夢中説夢を聞くと、寓話に過ぎず、現実はそんなものではないんだと受け止めがちなものです。しかし、まどいのうえにまどいを重ねるがごとくに見えるそのなかに、天空に通じる道があるのだとされます。
是非、一度、この正法眼蔵「夢中説夢」の巻を直接読まれて、どのような考えが展開されていくのかご覧になっていただき、どれほど魅力的な言葉が繰り広げられていくか体験していただければと思います。