専用場外車券売場に関する経済産業省の政策

(2005.02.02現在)



1 専用場外車券売場についての当局の重点政策
@ 競輪空白地域での設置を積極的に推進する
A 合理化・効率化を進め、収支率の改善をはかる
B 民間企業への委託を進める

2  競輪政策決定会議( 2004.3.10)
@ 2003年度は、お客様の利便性向上、売場の適正配置という観点から専用場外車券売場の設置推進に取り組んだ結果、6場の新規開設を実現した。
A 2004年度は、投票機会・利便性の向上および新規ファンの創出を図るため、専用場外車券売場の設置推進に引き続き取り組む。
特に重点項目として、構造改革特別区域(特区)における「ミニ場外」については、駐車場等のインフラが整備されているが、空き店舗の多い商店街や閉店したデパート、スーパーのフロアーの効果的な活用について検討し、積極的に推進する。

3 産業構造審議会 車両競技分科会 競輪小委員会の報告書(2001.12)
@  専用場外の新規設置に当たっては、経済産業大臣の設置許可に関し、施設を周辺環境と調和したものとする、車券の非発売日には施設を地域住民に開放するなどの対応が求められているが、現実には、設置に反対する意見も根強い。
主な反対理由としては、街づくりのイメージにそぐわない、来場者が騒いだり、ゴミを散乱させる、風紀が乱れる、青少年の非行につながる、来場者の自動車により違法駐車や渋滞の問題が発生するなどが指摘されている。
しかしながら、既存の専用場外については、関係する施行者や設置者の努力により、清掃員による周辺美化の徹底、警備員の適正配置、十分な駐車場の確保等の対策が講じられており、大きな問題は生じておらず、おおむね地域社会に受け入れられているものと考えられる。
専用場外については、地元の地方公共団体に対して、協力金等の形で財政的な貢献がなされる、地域社会に新たな雇用や取引が生まれる、ヒトの賑わいによって周辺の商店街が活性化する、地域にコミュニティの場が提供されるというメリットがあり、専用場外が地域社会と共生しているケースも少なくない。
専用場外設置の円滑化のため、競輪そのもののイメージアップに努めることはもちろん、その補助事業の適切かつ効果的な活用、共生事例の積極的なPR等を通じた地域社会の理解を高める対応を積極的に行っていくべきである。
A  専用場外の委託に係る経費は、主として、専用場外車券売場施設借上料、人件費等で構成されるが、経費率自体には大きな格差が見られる(平成11年度及び平成12年度の特別競輪等の専用場外委託の実績を見ても、受託場ごとの収支率には格差が生じている)。
これには、専用場外車券売場が設置された経緯から、地元に対する協力費等が計上される場合もあることが影響している。
このため、専用場外の委託に係る経費を画一的に見直すことは適当でないが、他方、専用場外全体の合理化・効率化を進め、競輪界全体として、収支率の改善を図っていくことは重要である。
その際には、多額の初期投資を行っている専用場外車券売場の経営の安定化を図ることにも留意すべきであり、かかる観点から、施行者による制約を解除し、専用場外車券売場の運営の自由度を高めることを検討すべきである。
 また、多くの専用場外車券売場が民間企業により設置されていることにかんがみれば、公金の取り扱いを伴う車券発売等の事務を民間企業にも開放することは、事務手続きの簡素化や委託の効率化を図る上で極めて有効であると考えられる。 

4 大分県日田市の例
(2002年11月25日「池袋場外車券売場を考えるシンポジウム」における日田市長の発言記録参照)
1996年09月  建設業者の場外車券売場建設が浮上、
1997年07月  九州通産局が設置申請を受理
1997年11月  反対運動のため、通産省が「一時凍結」を表明
1999年04月  「一時凍結」表明に油断し、また日田市長選挙のため、具体的な反対運動が停滞
2000年06月  通産省が設置許可を出す。その理由は「反対運動が止まったので、地元は賛成にまわったと解釈した」との事。
このように通産省(現・経済産業省)は「一時凍結」を表明して油断させ、反対運動が下火になると突然 許可する等という卑劣な手段を使うことがある。

5 山梨県の例
2002年7月25日、日本共産党山梨県委員会と地方議員が、経済産業省に場外車券売場建設中止の申し入れを行った際、対応した製造産業局の長島秀夫車両課長補佐は、「車券場には警備員を置いて未成年者は入場できないようにしていますし、お小遣い程度で楽しめる健全なレジャー施設ですから、文教上は問題はありません」と答えている。( 若草民報 2002.08.04号 亀ケ川正広 )
ここからは、経済産業省が若年層のファンを開拓するためにも 場外車券売場を増やそうと狙っていることがうかがえる。

6 「サテライト横浜」の例
(2004年8月24日 政府答弁書 内閣衆質160第49号参照)
1 診療所・薬局が入居している雑居ビルの9階・10階に会員制の場外車券売場を設置したいとの許可申請に対し 経済産業省は設置を許可した。
2 このビルの周辺には多くの学校・教育機関があり、その通学路に隣接しており、またこのビル横にはそれ以外の学校のスクールバス発着場がある。
3 場外車券売場の設置の許可基準として、「自転車競技法施行規則第15条第1項」は「学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設から相当の距離を有し、文教上又は保健衛生上著しい支障を来たすおそれがないこと」と規定している。
4 また、「場外車券売場の設置に関する指導要領」では「設置するに当たっては、当該場外車券売場の設置場所を管轄する警察署、消防署等とあらかじめ密接な連絡を行うとともに、地域社会との調整を十分行うよう指導すること。」と述べられている。
5 これらの許可基準があるにもかかわらず、設置を許可した経済産業省の答弁の内容は
@ 場外車券売場の利用者が一般に通行すると考えられる道路が、周辺地域の文教施設の通学路と重なっていないこと。
A 専用エレベーターの設置及び誘導員の配置により、場外車券売場の利用者とそれ以外の者が本件ビルの中で接する場所が限られることとなること。
B 警備員の配置等本件ビルの内部及び周辺の警備体制を充実することとしていること。
以上のことから、「場外車券売場の設置により文教上又は保健衛生上著しい支障を来たすおそれがないと判断し、その設置を許可した」との事である。
6 また、「相当の距離を有し・・・著しい支障を来たすおそれがない」かを個別の事案ごとの事情に即して判断することとなるが、場外車券売場と医療施設とが同一の建物の中にあることが必ずしも許されないわけではない、と強弁している。
7 さらに、場外車券売場の設置の許可に当たっては、「文教・医療施設の関係者」を含む地域の住民との調整が十分行われることが重要であると認識している。
このような地域の住民等との調整については、自転車競技法の趣旨にかんがみ、その適正な施行に不可欠なものであるとまでは言えず、関係法令上、場外車券売場の設置の許可の要件とはしていないが、場外車券売場は地域の住民等の理解を得て設置されることが望ましいため、一般に、地域の住民等の立場を代表していると考えられる町内会等の同意書の提出を、必要に応じ設置者に求めているところであり、これに特段の問題があるとは考えていないと、述べている。
8 以上のように、近くに学校があろうが、同一建物内に診療所があろうが、何の歯止めもなく、自分たちが必要なものと考えれば設置を許可する。これが経済産業省の方針である。
9 また、地元との調整も許可に不可欠なものとは考えないが、必要に応じ町内会の同意書などを提出させているだけであって、地元の自治会や市議会、市長がいくら反対しようが、設置を許可しようと思えば許可できるというのが、経済産業省の本音である。

7 経済産業省としては、「場外車券売場の設置申請が出されれば どんなことがあっても許可する」、如何なる卑劣な手段を使っても、設置を推進するというのが大原則のようである。