2004年8月24日「サテライト横浜」に関する質問書と答弁書



 2004年8月5日提出

桜木町駅前会員制競輪場外車券発売施設の設置計画に関する質問主意書
提出者  佐藤謙一郎 ( 民主党 )

 本件は、株式会社サテライト横浜(以下、本件事業者という)が、桜木町ぴおシティ(横浜市中区桜木町1−1)の9階及び10階部分を借り受け、会員制の競輪場外車券発売施設の設置計画を進めているものである。

 この設置計画に対しては、同ビル近隣・周辺地域には多くの学校・教育機関や医療機関などが存在するため、PTAをはじめとした近隣・周辺地域住民より、子どもたちや住民の安全など生活環境への影響等に強い懸念と危惧の声が挙がっているところである。

また、近隣・周辺住民への設置計画の説明や周知も十分とはいえず、住民が野毛地区で行ったアンケート調査では設置計画反対が47%(賛成14%、その他39%)と、住民同意が得られているとはとても考えにくい状況となっている。

 しかるに本件事業者より本年6月11日、所管省庁である経済産業省に設置許可申請を行い、経済産業省は7月12日に本件事業者に対し設置許可を下した。

この措置により本件事業者は本年10月28日を営業開始目標とし設置計画を進めるとしている。

これに対し近隣・周辺住民は、「競輪施設設置反対 横浜市民の会」を結成し、反対署名活動や各級行政機関等への陳情活動に取り組んでいるところである。

 以下、本件設置計画及び経済産業省による設置申請許可につき質問を行う。


質問

一の1 
自転車競技法施行規則」第15条第1項等の問題について
賭博や賭博場開張等が刑法で厳しく禁止されている理由を明らかにされたい。


二の13
問題は、先にふれた通りギャンブル関連施設等の立地に関しては近隣・周辺住民が不安を抱き慎重にならざるを得ないにもかかわらず、住民同意なり合意が設置許可の要件ですらない点に象徴される法運用者側の姿勢にあると考える。

戦後初期の極めて厳しい財政状況下で公営ギャンブルの収益事業が高い「公益性」を持ったとしても、それはあくまで「必要悪」であり、賭博や賭博場開張等を刑法で厳しく取り締まるその違法性・反社会性を阻却するものではありえない。

ましてや豊かな生活、安心・安全な生活を求める現代に、かつての錦の御旗であった「公益性」はなんら説得性を持たない。

にもかかわらず公営ギャンブル各法をあたかも奨励・推進法的な誤った認識で事業者・所管省庁が運用するところに最大の問題があると考えるが、政府のご認識を伺いたい。

答弁書(2004年8月24日)内閣総理大臣 小泉純一郎

一の1及び二の13について
 刑法(明治40年法律第45号)上、賭博行為や賭博場開帳等図利行為等を処罰することとされているのは、賭博行為が、勤労その他正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、さらには副次的な犯罪を誘発し、又は国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれすらあるためである。

 他方、公営競技については、法令に従い地方公共団体等が実施することにより事業の公正な実施が確保され、また、公益の増進を目的とする事業の振興、地方財政の健全化などに資するものであることから、関係する法律の規定によりその実施が認められているところであり、このような考え方は、現在においても妥当するものであると考えている。


質問

一の2 
場外車券発売施設の設置等の許可の基準として、「自転車競技法施行規則」は第15条第1項に「学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設から相当の距離を有し、文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないこと」を挙げている。

さまざまな社会生活施設の内、特に文教施設及び医療施設を明記しこの規定が設けられている理由を明らかにされたい。

また、文教上又は保健衛生上の支障とはどのような具体的内容を想定しているか明らかにされたい。


一の3 
この規定は場外車券発売施設と文教施設及び医療施設との間の距離に着目しているが、それは「近接すれば支障を来すおそれがある」と解されるが如何。


一の6 
「相当」及び「著しい」の判断基準を明確に示されたい。

もしその判断基準が行政裁量にのみ委ねられ客観的明証性に欠けるのであれば、設置許可基準として第15条第1項を特に設けている意義自体にかかわると考えるが、政府のご見解を問う。

答弁

一の2、3及び6について
 文教施設に通学する学生生徒や医療施設に入通院する患者については、周辺環境を維持し、また、その通行に支障が生じないようにするなどの観点から、特に配慮をする必要があると考えられるため、自転車競技法施行規則(平成14年経済産業省令第97号。以下「規則」という。)第15条第1項第1号において、文教施設及び医療施設に関する規定を設けているところである。

文教上又は保健衛生上の支障としては、例えば、学生生徒が場外車券売場に立ち入り、車券を購入することが想定される。

 同号の規定の適用に当たり、「相当の距離を有し・・・著しい支障を来すおそれがない」と言えるかは、規定の趣旨を踏まえ、個別の事案ごとの立地、交通等の状況に照らし判断すべきものであって、「「相当」及び「著しい」の判断基準」を一概にお示しすることは困難であるが、同号の規定の適用については、経済産業省において、個別の事案に即して適切に判断しているところであり、「設置許可基準として第15条第1項を特に設けている意義自体にかかわる」との御指摘は当たらないと考える。

 「近接すれば支障を来すおそれがある」と解されるかというお尋ねについては、何をもって「近接」というかが必ずしも明らかではないことなどから、お答えすることが困難であるが、右に述べたように、同号の規定の適用に当たっては、個別の事案ごとの事情に即して、「支障を来すおそれがある」か否かを適切に判断しているところである。


質問

一の4 
第15条第1項が設けられている趣旨からすれば、本件においては、設置場所である桜木町ぴおシティビルの近隣・周辺地域には多くの学校・教育機関があり、その通学路に隣接することに加え、当該ビル横がそれ以外の学校のスクールバスの発着場として利用されていること、また桜木町駅を利用する多数の児童・生徒が存在することも十分に勘案しなければならないと考えるが、政府のご認識を問う。


一の5 
同様に、当該ビルの近隣・周辺地域には横浜市健康福祉センターや診療所、歯科診療所も多数あることに加え、当該ビルが場外車券発売施設専用ビルではなく雑居ビルであり、既に診療所や薬局等が入居・営業していることを十分に勘案しなければならないと考えるが、政府のご認識を問う。

また第15条第1項は、場外車券発売施設と医療施設との間の距離に着目するのであるが、同一の建物内に場外車券発売施設と医療施設がともにあるということをそもそも想定しているとお考えか。


一の7 
経済産業省は本件設置許可申請を許可した判断理由として、本件事業計画が
@「会員制」であることから施設定員が限定され不特定多数者の利用とはならない、
A共用スペースでの誘導員による誘導や施設専用エレベーター設置による施設利用者の入場動線管理が可能である、という点をあげている。

この@利用者の量的問題やAビル内での動線管理は、趣旨を勘案すれば第15条第1項を満たす十分条件足り得ないと考えるが、改めて政府のご見解を明示されたい。


二の7 
昨今、街中で子どもがまきこまれる事件が多発し、特に子どもを持つ親たちは街の安全対策に不安を抱いている。

本件事業計画で経済産業省が許可に際し重視した
@「会員制」で施設定員が限定され不特定多数者の利用とはならない、
A共用スペースでの誘導員による誘導や施設専用エレベーター設置による施設利用者の入場動線管理が可能である、といった点や本件事業者が示す警備員配置、地元協議等の安全対策は、子どもの安全にとっての十分条件であり子どもを持つ親たちは安心出来ると政府は判断し申請を許可したのか、ご認識を伺いたい。

答弁

一の4、5及び7並びに二の7について
 お尋ねの株式会社サテライト横浜(以下「本件設置者」という。)が桜木町ぴおシティ(以下「本件ビルディング」という。)に設置を予定している場外車券売場(以下「本件場外車券売場」という。)については、その周辺地域の文教施設及び医療施設の立地状況等を踏まえて検討した結果、
本件場外車券売場の利用者が一般に通行すると考えられる道路が周辺地域の文教施設の通学路等と重なっていないこと、専用エレベーターの設置及び誘導員の配置により本件場外車券売場の利用者とそれ以外の者が本件ビルディング内で接する場所が限られることとなること、警備員の配置等本件ビルディングの内部及び周辺の警備体制を充実することとしていることなどから、本件場外車券売場の設置により文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないと判断し、その設置を許可したところであり、本件場外車券売場の設置が「子どもの安全」に大きな影響を及ぼすことはないと考えている。

 また、一の2、3及び6についてで述べたように、規則第15条第1項第1号の規定の適用に当たっては、「相当の距離を有し・・・著しい支障を来すおそれがない」かを個別の事案ごとの事情に即して判断することとなるが、
場外車券売場と医療施設とが同一の建物の中にあることが必ずしも許されないわけではない。


質問

一の8 
経済産業省は「会員制」でなければ本件申請許可は難しいと説明したが、場外車券発売施設の設置等の許可申請の記載内容を規定する「自転車競技法施行規則」第14条に、「会員制」という施設運営条件や利用者の動線管理などという項目は無く、これらはあくまで申請上は単なる付随的な特記事項に過ぎない。

であるならば、「会員制」での運営等はそもそも法令上は本件事業者が遵守する義務は無く、事業者による誓約書等もないならば開設・営業後の運営につきなんら担保は無いのではないか、政府のご認識を伺いたい。

答弁

一の8について
 お尋ねの「「会員制」での運営等」については、本件場外車券売場の適正な運営を確保する観点から重要であると考えており、仮に本件場外車券売場の開設後に、「「会員制」での運営等」が実施されず、それにより本件場外車券売場の適正な運営に支障が生じた場合には、自転車競技法(昭和23年法律第209号)第14条の2の規定に基づき、本件設置者に対し、経済産業大臣が必要な命令をするなど適切に対応してまいりたい。


質問

一の9 
本件設置場所である桜木町ぴおシティビルについては、築後36年という老朽化したビルの最上階での設置計画として防災設備・構造上も不安視されていると聞く。

経済産業省は、平成13年に44名もの犠牲者を出した新宿歌舞伎町雑居ビル火災の教訓も踏まえ防災設備・構造上も万全と判断し申請を許可したのか。

また、担当官による現場ビルの現況調査等を行った上で申請を許可したのか。

答弁

一の9について
 本件場外車券売場における火災等による被害の発生の防止については、本件設置者が、横浜市消防局と相談を行っているものと承知している。

 また、経済産業省の職員は、自転車競技法の施行に係る事務の一環として、本件場外車券売場の設置に係る許可申請書に記載された内容等の確認のため、本件場外車券売場の設置場所を訪れて調査を行っているところである。


質問

二 近隣・周辺住民の同意・合意に係る問題等について

1 
賭博自体は反社会的行為でありなんらの公益性も無い。

公営ギャンブルはその収益還元事業により「公益性」が仮構されているのみである。

そしてその収益還元事業は近隣・周辺地域のみに還元されるわけではなく、風紀問題等、賭博自体が本来有する反社会性に起因する諸問題は主に近隣・周辺地域のみが負う結果となる。

そのためこれらギャンブル関連施設等の立地に関しては近隣・周辺住民が不安を抱き慎重にならざるを得ないことは当然のことと考えるが、政府のご認識を問う。

2 
そうであるにもかかわらず、近隣・周辺住民の同意なり合意がギャンブル関連施設等の設置許可の「要件」ではない理由を明らかにされたい。

3 
近隣・周辺住民の同意・合意に係る問題については、「場外車券発売施設の設置に関する指導要領について」の第四項に「設置するに当たっては、当該場外車券発売施設の設置場所を管轄する警察署、消防署等とあらかじめ密接な連絡を行うとともに、地域社会との調整を十分行うよう指導すること。」という文言があるに過ぎない。

 問題の重要性を勘案すれば、勧奨的運用事項ではなく設置許可の要件とすることとあわせ、通知行政で済ませることなく法令に明記すべきと考えるが、政府のご認識を伺いたい。

4 
法令やそれに基づく最低基準としての申請手続きの問題とは別に、事業者はその事業計画を円滑に進めるため近隣・周辺住民への事業内容の告知・説明等を積極的に行うべきであると考えるが、政府のご見解を問う。

5 
「自転車競技法施行規則」は第15条第1項で、文教・医療施設が特に記されている以上、近隣・周辺住民の同意・合意に係る問題については、地元住民なり地域社会なりに文教・医療施設の関係者が特に含まれるべきであると考えるが、政府のご認識を伺いたい。

6 
場外車券発売施設専用ビルではなく雑居ビルであり、同一ビル内の他テナントへの影響も考えると、他テナントへの事業計画内容の告知・説明等は積極的に行われてしかるべきと考えるが、政府のご認識を伺いたい。

8 
本件事業者は、「場外車券発売施設の設置に関する指導要領」に基づく指導に従い地域社会との調整を十分行い、事業者による説明義務・責任を果たしていると政府は判断し申請を許可したのか、ご認識を伺いたい。

9 
本件事業者からの設置許可申請には、近隣・周辺住民の同意・合意に係る参考資料として町内会長名・商店会長名の合意書が添付されていたと聞くが相違ないか。

またその合意書と先にふれた住民によるアンケート結果との矛盾を政府はどの様に認識するか伺いたい。

10 
本件に限らず近隣・周辺住民の同意・合意が問題となる開発・建設・設置行為に際しては、町内会、自治会、商店会等の団体、特に代表者名の同意・合意が近隣・周辺住民全体同意・合意の隠れ蓑として利用される例も多い。

事業者よりの金銭提供等極めて不明瞭な関係が取り沙汰されることも少なくはない。

事業者による説明義務・責任に要する手間隙を惜しんでのこのような慣例が、逆に後に火種となり問題をより混乱させる事例も散見される。

このような事態を政府はどの様に認識するか伺いたい。

答弁

二の1から6まで及び8から10までについて
 場外車券売場の設置の許可に当たっては、「文教・医療施設の関係者」を含む地域の住民等との調整が十分行われることが重要であると認識している。

このような地域の住民等との調整については、自転車競技法の趣旨にかんがみ、その適正な施行に不可欠なものであるとまでは言えず、関係法令上、場外車券売場の設置の許可の要件とはしていないが、場外車券売場は地域の住民等の理解を得て設置されることが望ましいため、一般に、地域の住民等の立場を代表していると考えられる町内会等の同意書の提出を、必要に応じ設置者に求めているところであり、これに特段の問題があるとは考えていない。

本件場外車券売場の設置の許可に当たっても、周辺の町内会及び本件ビルディングに所在する商店等を会員とする商店会から、役員会等の議決を経た同意書が提出されており、地域の住民等との調整は十分に行われていると考えているところである。

 また、「住民によるアンケート結果」に関するお尋ねについては、アンケートの具体的な実施方法等その詳細を確認しておらず、お答えすることは困難である。


質問

二の11 
本件申請に対する許可の決定は、慎重に行われるべき近隣・周辺住民の同意・合意については申請要件では無いために町内会長名・商店会長名の合意書で良とする極めて形骸化した取扱いを行い、一方では、同じく申請要件でない「会員制」という運営形態をもって申請許可の理由とするなど極めて恣意的・不透明であり、求められている行政の透明性・アカウンタビリティーには程遠いものと考えざるを得ない。

この点につき政府はどの様に認識するか見解を問う。

答弁

二の11について
本件場外車券売場の設置の許可に当たっては、二の1から6まで及び8から10までについてで述べたとおり、地域の住民等との調整は十分に行われていると考えている。

 また、お尋ねの「会員制」については、一の8についてで述べたように、仮に本件場外車券売場の開設後に、「会員制」が実施されず、それにより本件場外車券売場の適正な運営に支障が生じた場合には、適切に対応してまいる所存であり、特に問題があるとは考えていない。


質問

二の12 
本件に限らず公営ギャンブルの場外券売所の設置に関する近隣・周辺住民との紛争は全国で枚挙に暇が無い。

この原因を政府はどの様に判断するか見解を問う。

答弁

二の12について
 お尋ねの「場外券売所」に関し、その設置に反対する者の反対の理由については、多様なものがあると考えられるところ、かかる反対の理由について一概に申し上げることは困難であるが、「場外券売所」においては、休業日における施設開放の取組等を通じて、地域の住民等との調和に努めてきているものと承知している。


質問

二の14 
政府はこの認識を改め、地域の責任主体である住民・自治体あっての事業であると再認識し、インフォームド・コンセント足り得る情報公開と合意形成のための適正な手続きを法令上に明確に構築すべきであると考えるが、政府のご認識を伺いたい。

答弁

二の14について
「場外券売所」の設置に当たっては、設置者が地域の住民等との調整を十分行うことが重要であると考えており、「場外券売所」が地域の住民等の理解を得て設置されるよう、引き続き適切な指導に努めてまいりたい。

しかしながら、かかる調整は、公営競技に関係する法律の趣旨にかんがみ、その適正な施行に不可欠なものであるとまでは言えず、関係法令に新たな規定を置く必要はないと考える。