今月の『諸葛孔明 時の地平線』

★『flowers』2002年12月号(10月28日発売)

首尾よく孫権との同盟を取り付けた孔明だが、開戦に備えて3万本の矢を調達するよう要請される。無理難題と思われた要請にあっと驚く策で答えるも、主騎・子竜の留守中に思わぬ危機が迫っていた。そして士元の謎の言動は・・・?

・この数ヶ月ほぼ原作どおりにストーリーが進んでいたので、このまま赤壁の戦いあたりまでさらっと行くのかな、と思っていたんですが、さすが諏訪三国志は一筋縄ではいきませんね。また新たな展開がありそうです。原作によりそったり離れたりの絶妙な進み具合、諏訪ファン・三国志ファン両方の興味をそらさない心憎い演出といったところでしょうか。

・今回の「3万本の矢」、まさかあのときのエピソードが伏線になっていようとは。あれはあれで一つの独立したエピソードだと思っていたのでかなり驚きです。ひょっとして諏訪さんはあのときからこの展開を計算していたのでしょうか。気の長いというか周到なというか。ということは今後も今までのエピソードが伏線として効いてくることが予想されるわけで、物語そのものだけでなく演出面でもますます目が離せなくなりそうです。

・演出と言えば今回のハイライトはなんと言っても310〜311ページにかけての見開きショット。この2人だけでなく読んでいるほうも目を見張ってしまいます。前後数ページのコマ割、構図、リズムとあわせて、思わず「やられた!」と言いたくなりました。諏訪さんはストーリーも絵も年を追うごとにすごい勢いで洗練されてきていますが、演出もまた然り。以前からかなり大きめのコマ割を好んでされているようですが、今回それがみごとに決まっている。特にラストの1ページもそうでしょう。(まさかこのページも『邪論の極意』が伏線になっているということは・・・? 14年がかりの演出? )

・しかしこのペースで行くとこの話はいったい何年かかるのでしょう。連載開始からすでに3年ですがまだまだ大きな山がいくつも残っています。孔明が主人公ということは五丈原の戦いまで描かれる予定なのでしょうが・・・。横山光輝の『三国志』もハンパじゃなく長いですしね。萩尾さんの『残酷な神が支配する』のように10年単位の連載になってもいっこうにかまいませんよ>『flowers』さん。ええ、最後までついて行きますとも! 個人的には諏訪さんの描く馬超が見たいなあ。

・しかし士元よ、君はいったいどーゆーつもりなんだい? おねーさんはそんな子のファンになった覚えはないよ、ぶつぶつ・・・。それに「そのむね公にお伝えしてくれ」って、「公」って誰? 

・ともあれ今回の事件に関して士元の行動は何だったのか、劉備の出方、英さんの反応、一刻も早く来月号が読みたいですね〜。また発売日前に書店をチェックしてしまいそうです。刮目して待て次号!         




★『flowers』2002年11月号(9月28日発売)

曹操の大軍に対抗するためには、劉備軍は江東の孫権と同盟を結ばなくてはならない。同盟締結の使節という大役を果たすため、諸葛孔明と趙子竜は二人きりで孫権の居城へ乗り込むが、孫権の家臣は降伏派が大多数。老練な家臣団を相手に孔明は首尾よく任務を果たすことができるのか・・・?

・まず驚いたのが「孫権が大人になってる!」ということです。以前登場したときは(2巻・第五場)高名な武将だった兄をなくしたばかりで、いかにも頼りない若者、という感じだったのに。ちなみにそのときの孫権は19歳、孔明は20歳でしたが、今月号では26歳と27歳。あれから7年たっています。

・というわけで、孔明も大人になっていますねー。今回思わず見とれてしまってページをめくる手が止まっちゃった人も多いのでは?(私もです〜。)「これよ!これが諸葛孔明なのよ〜っ!!」という『三国志』ファンの声が聞こえてきそうですね。一般的な「諸葛孔明」のイメージは、まさにこの姿。頭の回転が速く常に論理的で沈着冷静、説得力に優れている、という。

・今月号までのストーリーは、彼が「(皆がイメージする)諸葛孔明」になるまでにどのような体験をし、悩み迷い、痛みを感じてきたか、ということだったのかも。

・孔明の髪について作品紹介・番外編髪は口ほどにものを言う」にも書きましたが、あの長髪は「自由の象徴」だけではなくて「まだ自分の人生を決めていない(モラトリアム?)」ことを意味していたのかも、と思いました。実は私は以前から孔明の服装についても「もうちょっとしゃんとしろよー。軍議にガウンはおって出るのはダメでしょー?」(第十九場)などと思っていたんですが、今回長い連載において初めて(扉絵以外で)彼の正装姿を見て、「あ、この瞬間のために今までちゃんと着物を着ていなかったのかも」と。

・もちろん成長したのは孫権、孔明だけではなくて、出番少ないけど士元ぼっちゃまもちゃんと顔つきが変わってる!(P334) ファンとしてはうれしいところです。しかし以前から疑問だったんですが、トレードマークのつば広帽子、これも孔明の髪型に負けず劣らず変わってますよね。ひょっとして士元って客家?

・最後に一言。表紙の孔明を見て「ジミー・ペイジ・・・?」と思ったのは私だけですか?


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