正倉院展オフ会レポート PART2

4.薬師寺
                  

 
  国立博物館を後にした私たちは近鉄電車で次の目的地・薬師寺へ向かいました。
  中心地を離れるととにかく広い! というのが奈良の印象です。薬師寺の最寄り駅・西ノ京まで移動時間は乗換を含めて20分くらいですが、その間に車窓から平城京跡地と垂仁天皇陵(古墳)という2つの遺跡を見ることができます。さすが古都。
  バビルサさんは平城京跡地の横を走る電車の中で観光客の人たちが「駅の近くにこんな広い土地を遊ばせておくなんてもったいない! 東京じゃ考えられないわ」と話していたのを聞いたことがあるそうです。いやそこは空き地じゃなくて…遺跡なんですよ一応…。まあ前知識がないとわからないかも、というくらい何もない広い土地なんですが。
  薬師寺に着いた頃には短い秋の日はそろそろ夕方の気配が漂い始めていました。飛鳥時代に完成したという古い歴史を持つ薬師寺は(本尊開眼が697年)郊外のゆったりした風景の中に広大な敷地を持っています。1歩中に入ると萩や紫式部など秋の花が咲いていて落ち着いた雰囲気です。バビルサさんはお茶会(茶道の)でよくここに来られるとか。
  諏訪ファンにとってこのお寺が特別な存在と言えるのは、こちらの玄奘三蔵院伽藍には玄奘の遺骨の一部が奉られているからです。そして平山郁夫氏が30年かけて描いた「大唐西域壁画」が奉納されているのです。この壁画は春と秋だけ一般公開されるので、それを見るためにここまで足をのばしたわけです。
  まずは玄奘の遺骨があるお堂でお参りをすませ、壁画のある部屋へ。壁一面に描かれた天山山脈やナーランダ大学跡を「ここ『玄奘西域記』のあの場面に出てきたあたりだよね」と確認しながらゆっくり拝見しました。こんな厳しい土地を歩いて中国からはるばるインドまで行ったのだと思うと、その大変さと意志の強さにあらためて頭の下がる思いでした。
 
  その後は広い敷地内をゆっくりと散策。ここには国宝の塔や仏像、仏画が目白押しなのです。今回は東塔、聖観音菩薩像、薬師三尊像を見ることができました。熱心にスケッチしたりメモをとったりする修学旅行生たちもいたりして微笑ましかったです。私はこのオフ会の後でみうらじゅん・いとうせいこう両氏の『見仏記』を読み、行く前に読んでおけばもっと楽しめたのに〜、と後悔しきりでした。
  それから漫画ファンにとって必見なのは売店です。数々の有名漫画家さんたちの手になる散華が展示されていました。岡野玲子さんの『妖魅変成夜話』の絵柄のものをついふらふらと買いそうになったりして(双子がかわいかったんです〜)。『flowers』つながりでは渡辺多恵子さんの『風光る』散華も。実物はありませんでしたが「薬師寺展」の図録で見ることができます。雑誌のカラーページよりもきれいに色が出ていたように思いました。
  なお売店には玄奘が漢訳した『成唯識論』もありました。「玄奘オタクなら必携かも!」と目の色を変えるカワイさんでしたが、これがまたいいお値段。メモしてくるのを忘れたのですが、全31巻で5万円以上でした。(ネットで検索してみたら解説付要約版が全4巻・27000円で出ているようです。それでも高いですよね〜。)
 【注】散華(さんげ)とは「仏を供養して花をまき散らすこと。特に、法会で読経しながら列を作って歩き、蓮の花びらにかたどった紙をまき散らすこと」(『岩波国語辞典』第2版より)。ここで売られているのはその「蓮の花びらにかたどった紙」にいろいろな方が絵を描かれているものです。

★国宝の東塔。白鳳時代に完成。 ★西塔は1528年に焼失、1981年再建。 

                        
5.TEA BREAK

  市内中心部に戻ってお茶してからならまちを散策しようということになりました。(結局話が弾みすぎてならまちには行けませんでしたが。)
  バビルサさん曰く「奈良で唯一のカフェ」mellow cafeは町屋風の細長い敷地のファッションビルの1階にあり、アジアンリゾート風インテリアでテーブルの間隔もゆったりとした落ち着いたお店です。ケーキがおいしかった〜! 案内された席に向かう途中で30歳くらいの男性客が『蒼天航路』を読みふけっているのを目撃しました。やっぱり流行っているのね『三国志』。
  ここでは2時間以上話が途切れることなくしゃべりまくったのですが、そのなかで印象に残った話題を箇条書きで書いておきます。
 
 ・時地のイラスト集か特集本希望! しかし『玄奘西域記』の頃にもそのような希望が編集部にたくさん寄せられたらしいのですが、当時の編集長さんが読者のページで遠まわしに「採算が取れないから現時点では不可能」と答えていらしたそうです。悔しいなあ。今ならきっと行けますよ、どうですか?>編集部さん

 ・諏訪さんの作品で一番好きなキャラについて。
  管理人は常々書いているように士元と意期なのですが、お2人の答えがふるっていました。カワイさんは東王公(『西王母』伏羲の父)、バビルサさんはげい(漢字変換できません。伏羲の護衛をしていた弓の名手の天文官)だそうで。2人ともマニアックすぎ〜。それと劉備も、キャラクターとしての魅力もですが、従来の『三国志』にない人物造形ということで評価されていました。吉川版等では主役なので理想に燃える青年という描き方をされているそうですね。
  もともとバビルサさんは中国古代史がお好きで、書店で偶然『蠶叢の仮面』を見つけたのが諏訪さんとの出会いだそうですが、シノワズリのシリーズは中国の神話や『山海経』の解釈としても非常によくできているのではないかとおっしゃっていました。

 ・『flowers』のほかの作品について。
  やっぱり萩尾さんはすごいとか、『風光る』は絵もストーリーもきっちり描いてあるとか、『7SEEDS』って冷静に考えると突っ込みどころも結構あるんだけど勢いでぐいぐい読ませちゃうよねとか、大竹サラさんはかなりお金持ちのように見えるけどどうやって生計を立てているのだろうとか(こんなことを言ってるのはもちろん私…)。
  昔の『プチフラワー』は男性主人公の作品が圧倒的に多かったけれど『玄奘西域記』が終了してしばらくたってから女性が主人公の作品がどんどん増えてきて、今ではほとんどの作品の主人公は女性になっています。この変化が起こったあたり(編集長さんが変わられたそうです)から雑誌の性格が変わってきたような気がする、というカワイさんの鋭いご指摘もありました。

  それ以外にもいろいろなバージョンの『三国志』の話、新しい『三国志』としての時地の解釈について、今後の時地の展開予想などを話しているうちにカワイさんの新幹線の時間が迫ってきたので今回のオフはこれでお開きとなりました。
  とても楽しかったので機会があったらまた実施したいです。今度はもっといろんな方たちとお話できるといいな〜。


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