作家紹介 経歴
青木宏子(あおきひろこ)/創作玩具工房サニープレイス 主宰 創作玩具作家
自身の創作玩具は主に、「車輪」をモチーフにした「転がる動き」とその動きから派生する動きや音などを楽しむものがベースになっており、 そうした自作の転がる動きを楽しむ玩具を「転動玩具(てんどうがんぐ)」と名付けて呼んでいます。そうした創作玩具の活動を柱に自身の研究活動と合わせて、 公共教育機関や医療、子育て、地域活動などの現場において、幼児から高齢者までを幅広く対象に、 「ものづくり」を通して生まれてくるそれぞれの「宝物」を広める活動もさせていただいております。
《自身が創作した「転動玩具」シリーズより》
転動玩具「TENPO」 坂道の上から転がすと、たくさんの足を ニョキニョキ出しながら歩くように転がります。 |
転動玩具「TENSOW」 平らな所で手で押してそぉっと転がすと パラパラパラと優しい鈴のような音を奏でます。 |
転動玩具「YURION」 手で押して転がすと、左右にユラユラ揺れながら カラン、コロン、と優しい音を奏でます。 |
転動玩具「Heart・full」1、2 坂道の上から転がすと、ハートをユラユラと 振りながら可愛いらしい動きで降りていきます。 |
《つくり手になったきっかけ》
大学3回生のクラフト(木工)の授業での課題「木のおもちゃをつくる」に取り組んだことが、きっかけ。 「木のおもちゃ!」と聞いて、子どもの頃に父に教わってつくった「糸巻き車」を思い出し、ひとまず円 盤と丸棒で車輪をつくってみたものの、木工技術が未熟なため、穴をあける位置が中心からブレてしまい、 車軸の位置がズレ‥。ちょっと失敗したけど、まぁ、いいか!と組み立てて転がしてみたら…! 「わぁ!なんだ!この面白い動きは!」と、偶然に「転がる不思議な動き」と出会い、 その驚きやドキドキやワクワクする気持ちが楽しくて…、それから面白がって転がるおもちゃを創っているうちに、 「転動玩具(てんどうがんぐ)」のシリーズがたくさん生まれてきて…、 いつの間にか「創作玩具作家」という肩書きがつくようになり…、現在に至ります。
《技術や考え方を学んだところ》
これは学生時代に恩師の教授から「実は少し特殊な事だ」と指摘していただいて初めて気が付いたのですが、 私の創作活動の特長になっている「既存のモノと既存のモノを出会わせて、 まだ自分が出会ったことのない新しい未知のモノを創り出す」という、 私がドキドキワクワクしながら無意識に行っていたこの創作方法が、 偶然を導いて新しい「面白い動き」を創り出す「創作」においてはとても有効である…ということを、 学生時代から続けている研究の中で学びました。
《ものづくりに対する思い》
木工技術が熟練の技でなくても、物理学の知識をそれほど持ち合わせていなくても、 他の人が見過ごしがちなチョットした何気ない事象を「面白い!」と感じることができる視点を持つことが、 私の創作活動のチャームポイントではないか?と思います。 「面白いモノを見つける視点」、「面白い!と感じることができる気持ち」…、 これを私の親友は「変なもの探知機」と命名して笑いますが、これは最高の褒め言葉だと私は思っています。 自分がたまたま偶然に出会って見つけることができた面白い動きを、仲間や周囲の方々が一緒になって面白がって共感してくださるからこそ、 つくることの楽しさや喜びをより実感することが出来たのだと思います。そして、これこそがまさに「ものづくり教育」の根源なのではないか! と考える「教育に携わる者」としての私がいます。 「つくることの面白さを人と共有することの大切さ」、「つくる経験をすることで体得することのでき る知恵」、「つくることで生まれる人と人との繋がり」、「つくったモノを介して生まれる絆」、…。 「ものづくり」という卵の中からは、人が人として生きていく上でかかせない大切な宝物がたくさん生まれてきます。 そんな「ものづくり」の輪を広げて人と人との心をつないでいくお手伝いを、「創作玩具作家」と「教育に携わる者」との両方の立場から、少しずつでも続けていけたら…と考えています。
《エピソード等》
いろいろありますが‥。おもちゃ教室の時だけでなく、おもちゃを展示している時などにも、 子どもから大人までいろんな方々との出会いがありますが…。私がチョッピリ面白いと思うのは、 どんなに難しいことを考えている顔をしている大人の方でも、おもちゃの動きを見ると、 急に「えっ?」とか「わぁっ!」とか「あれ?」と別人のように目を輝かせて興味を持って手に取ってくださり、 その後はすごく仲良くお話させていただけるようになるのも楽しいです。 いろんなところで「ものづくり」の教室をさせていただいておりますが、中でも衝劇的だったのは、仕事先の病院で、 アルコール依存症という病と闘っている患者さんが「世の中にまだこんな楽しいことがあったなんて、…生きてて良かった」 と明るい笑顔で言ってくださったことがあって…。そんなふうに思っていただけるなんて、 私も皆さんと関わらせていただいて本当に良かった、ありがとうございます!…と、 皆さんに出会わせてもらったことや、いろんなことが嬉しくて、仕事帰りの車の中で涙が止まりませんでした。 こんなふうに「おもちゃ」を柱とした活動の中で、「私」として生きていくための元気や勇気をいただいております。
《今後の夢ややってみたいこと等》
これもいろいろありますが…。小さな子どもたちも、若い世代の人たちも、 人生の先輩である高齢者の方々も、みんなが笑顔で、心を通い合わせて、 安心して一緒に楽しく過ごすことができる場所をつくりたい…と、ずっと夢見ています。
《略歴》
1969.05 | 大阪府堺市に生まれる |
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1993.03 | 大阪教育大学教育学部小学校教員養成課程美術専攻 卒業 |
1995.03 | 大阪教育大学大学院教育学研究科美術教育専攻工芸・デザイン専修 修了 |
1997.03 |
大阪教育大学美術教育講座立体デザイン研究室大学院研究生 修了《教育学修士》 幼稚園教諭専修免許状取得、小学校教諭専修免許状取得 中学校教諭専修免許状(美術)取得、 高等学校教諭専修免許状(美術)取得、高等学校教諭専修免許状(工芸)取得 |