6 水ベシ、選鋼

 下げの主要な行程はノロ搾りで終わりますが、刀剣類の材料としては品質的には未だ不十分ですから、通常は次に水ベシと選鋼の作業を行います。それらを次の項に簡単に書いておきます。

 出来た地鉄は2分くらいの厚みに打ちのばし焼きを入れます。この作業を水ベシと云います。


水ベシを終えた地鉄

 水ベシの終わった地鉄は小割りにして破断面を見ながら選別します。介在物が少なく十分な炭素を含む地鉄はきれいに割れ、その破断面は白っぽい鼠色です。炭素量が十分でない部分は焼きが入りにくいので、きれいに割れなかったりします。また、不純物を含む場合は破断面に層状にノロが見えたりもします。そう云った部分は刀の皮鉄に使う材料からは排除し、芯鉄や消耗品の道具の補修用に使います。


選鋼の様子

 地鉄の品質を保つのには、この選鋼方法は最も原始的なやり方ですが、反面最も確実な方法で、卸鉄の後などに刀鍛冶の工房では広く行われています。私の工房では、この様な段階を経て刀の地鉄を作っています。

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