3、水

焼き入れで大事なのが、焼き入れ用の水です。焼き入れ用の水を入れてある水槽を湯舟と云います。湯舟の水の温度は、昔から秘伝とされてきたと云う話があります。実際、湯舟の温度には、かなり神経を使っている刀鍛冶も多いと思います。現在では、少し調べれば最適な温度はすぐに判ります。0.6〜0.8パーセント程度の炭素を含む鋼を焼き入れる場合、人肌程度(35〜36度)で良いようです。昔と違い温度計も有りますから問題は簡単に解決します。

しかし水の質については、最近、少し難しくなってきました。理想的な水は軟水で、水中に二酸化炭素などのガス分を含まない物が良いとされています。又、これらの条件を満たした水を、大事に長年汲み置にして使っている刀鍛冶も多いようです。私の所でも井戸水を使い、減った分を少しづつ足しながら、10年以上同じ水を使ってきましたが、近所にゴルフ場ができて以来、井戸水の水質が急激に悪化して、ついに夏の間に腐ってしまいました。とても残念な事です。水道水には塩素が含まれていますし、雨水には酸性雨の問題も有ります。それらはどんな影響を及ぼすのか見当も付きません。焼き入れに良い水を探すのにも一苦労する時代になってきました。

98.1.25

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