2、焼き刃土

焼き刃土の調合は流派によって様々ですが、多くの場合、主成分は粘土、荒砥の粉、炭の粉からなっています。更にアク(藁灰)や微量のホウ酸ナトリウム、金肌(かなはだ=鉄が高熱により酸化した時にできる薄い皮膜)の粉末等を加える人も有ります。又、最近では焼き入れを促進する為、化学薬品を添加する場合もあるようです。

主成分である粘土は、焼き入れの際の熱で硬く焼きしまり、刀身に張り付く役目を果たしています。荒砥の粉は粘土より粒子が荒く、焼き刃土が乾燥する際、収縮してヒビが入ったり剥がれたりするのを防いでいます。炭の粉は、焼き刃土が薄い所では、焼き入れの際、燃えてしまい、跡が小さな穴となり、刀身が水に入った時、小さな水蒸気の泡を沢山作り、冷却を速め焼き入れを促進する働きをしていると考えられています。又、焼き刃土が厚く塗られた部分では、炭の粉は土の中で断熱材の役目を果たし、焼きが入るのを防いでいるようです。相対的に炭の粉が多い程、匂い口は幅広く柔らかい感じになり、炭の粉が少ないと、匂い口はきりりと締まった感じになるようです。その他の添加物は、主に焼きを入れた際、焼き刃土が刀身から剥がれ落ちるのを防ぐ目的で加えられている場合が多いようです。これらの事を念頭に置いて、自分の目指す土を調合します。

焼き刃土を塗る手順は、まづ生仕上げの終わった刀身をアク(藁灰)でよく洗います。アク汁はアルカリ性の為、刀身に付いた油分を取り去ってくれますし、洗った後の刀身が錆びるのを防いでくれます。

刀身が乾燥したら焼き刃土を塗ります。多くの場合、自分の思い描く刃紋を紙に描いておきそれに合わせて刃の方から薄く土を塗り、足になる部分に篦などで土を置きます。次に鎬の方から厚く土を置いて焼きの入らない部分をすべて被います。後は焼き刃土にヒビなどが入らないように、ゆっくり乾かします。

98.1.25

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