『たたら』をやってみよう。中級編 

このページでは、中級遍1で紹介した炉で、実際に「たたら」を行う方法を書いています。

ここで使用している写真は、数年前、姫路工業高校の生徒の皆さんが、私の指導で実際に「たたら」を行なったときのビデオから転載させて頂きました。

操業準備

製鉄炉は耐火セメントを内張りした後、数日おいて操業の前日には薪を長時間燃やして湿気を完全に取り除いておいてください。これを怠ると操業中に炉が爆発するという大事故につながります。

操業当日、元釜の炉底に粉炭を敷き詰めて、内側にに釜土を張りつけます。この時「のろ」抜きの穴を上下2箇所ずつ計4個、左右に開けておき、最後に炉の内側から薄い土で蓋をしておきます。

 

準備が出来たら元釜と中釜の間にパッキンになるよう柔らかめの土を間に置いて中釜を重ね、中釜と元釜の間を内側から釜土で繋ぎ、内張りを完成します。

更に中釜と上釜の間にパッキンになるよう柔らかめの土を間に置いて上釜を重ね、炉体を完成します。

次に覗き穴のガラスを外し自然に空気が入るようにして、火種を入れて30分〜1時間薪を燃やして炉全体を乾燥させます。

加熱

覗き穴のガラスは外したまま、炭を半分ぐらいまで入れ、15分ぐらいそのままにします。空気は自然に炉内に入って温度が上がり始めます。

次に炭を上釜の口まで入れて送風機から空気を少しづつ約15分間送り込みます。以後操業が終わるまで、炭は減った分を常に足し続けます。

更にのぞき穴にガラスの蓋をして15分間吹きます。のぞき穴から見ると炉の中が赤味を帯びた黄色ぐらいに見えます。この時既に白みを帯びた黄色ぐらいになっていると、温度は急に上がり過ぎで危険です。上釜からガスが出てきますから火を付けてください。少し暗い橙色の炎が立つと思いますが、以後この炎の色がたいへん重要になります。

徐々に空気の入れる量をふやして炎の高さが30〜40センチくらいになるようにして下さい。特に炉の隙間から水蒸気がたくさん出ている場合は、温度の上げ方に注意をして下さい。ここに書いた時間はあくまでも目安ですが、これより早く温度を上げてゆくのは危険です。

又この時、船の汽笛のような釜鳴りの音がすることがありますが、問題はありません。たたらをやる人の間では良い鉄ができるしるしとして喜ぶ人もいます。

更に空気の入れる量をふやして行きます。温度を上げはじめて約1時間30分、炎の色は薄くなり青みを帯びてきます。覗き穴から見る炉内の色も薄黄色で、もう直接見るのは難しくなります。以降炉の中を覗くのは、溶接の時に使う色の付いたガラスを使用して下さい。そうでないと目を傷めてしまいます。炉の隙間から出る水蒸気も少なくなり操業条件が整ってきます。

操業

いよいよ砂鉄の投入です。砂鉄は炭が5センチぐらい減る度に、最初は少し少なめに、後は700グラム前後づつ炭と共に投入して行きます。

時々覗き穴から炉内を覗き、羽口にノロが詰まらないように鉄の棒で掃除をしながら作業を続けて下さい。砂鉄を入れ始めてから3時間もすると覗き穴からノロが溜まっているのが確認できます。

 

ノロの量が増えてくると、上のノロ抜きの穴を開いてノロを流しだし、十分ノロが流れ出ると粘土で蓋をして、操業を続けます。ノロ抜きは30分〜1時間ごとにノロの溜まり工合を見ては、適宜行います。ノロがうまく出せない時は、反対側の予備のノロ抜き穴を使います。

砂鉄を全て入れ終わるのには6時間近くかかります。大体目安の量を投入し終われば、次に炭のみを更に30分ぐらい投入して、最後に入れた砂鉄が全て反応を終わるようにします。

最後に入れた炭が減ってきたら、少し炉ないに送り込む空気を増やし炉内の温度を更に上げ、炉壁に付いた海棉鉄状の鉄を溶かし、のろを更に流れやすくして、けら出しの準備に入ります。

けら出し

まず上釜の炭が無くなったのを確認して、下側のノロ抜き穴を開き、完全に中のノロを流し出してから上釜を取り外します、次に送風を止め中釜を少し浮かせて火消し壷の上に移動して残りの炭を火消し壷に落とし離れた所に置きます。

いよいよけら出しです。長い鉄の棒で元釜の中に出来たケラを起こし水に入れて冷やします。

 

これらの作業は非常に危険を伴いますから、手には溶接用の革手袋、靴は安全靴を履くなどして、十分気を付けて行って下さい。

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