『たたら』をやってみよう。中級編 1

ここでは二次精錬の卸鉄をすれば、実際の刀の材料として使用出来る程度の品質の鉄を作る方法をご紹介いたしましょう。第一部は製鉄炉や材料の準備です.

製鉄炉

製鉄用の炉は上釜、中釜、元釜と3つの部分からなっています。外側は6〜9ミリの鉄板で出来ていて、内側に耐火セメントを貼り何度も使えるようにしてあります。

各部の寸法は次の通りです.

又最も重要な羽口部分の拡大図は次の通りです.

炉壁

上釜(煙突部分)と中釜

炉の内側は高温に耐える耐火セメントを貼ります。上釜は強度の耐火性は必要としませんが、中釜と同じ耐火セメントで内張りをするのが望ましいです。私の場合、上釜、中釜とも東和耐火工業株式会社のCー16Hを使いセメントの袋に表示してある分量の水を加え、流し込により、炉の内側にに内径30cmの筒状の空洞が出来るように整形しています。十分硬化したら中釜には上の図のように羽口を取り付け、回りを東和耐火工業株式会社のPー17で埋めて、更に羽口の出ている高さまで回りを盛り上げて羽口を保護します。

下釜

ケラ押の場合、下釜は内側に3cm〜4cm位の厚さに耐火セメントを張り付け乾燥させます。操業時には更にその上から比較的融点の低い釜土を張り付けてケラの成長を助ける工夫をします。また溶け出した釜土には良い「のろ」を作る役目も有ります。使用する釜土は砂鉄との相性や粒子の荒さなど条件が複雑なので。操業のつど調合しながら調整をして良い土を作り出してください。大まかに言って、使う砂鉄の取れた近所の真土が相性が良いようです。下釜の釜土の部分は操業のつど張り替えますから、何度も操業を繰り返す場合は十分な量の土を準備してください。

耐火セメントや釜土が必要な方は私の方に御連絡下さい。相談に応じます。

送風装置

送風装置は電気で動くブロアーを使用します。風量よりも圧力の高い物を選びます。ブロアーと製鉄炉はホースで繋ぎ、途中にバルブをつけて風量を調整できるようにします。

砂鉄 

砂鉄は産地によりかなり性質が異なり、中には非常に還元しにくいものもあります。見た目で判断するの難しいのですが、真砂鉄に関しては、艶消し状態でザクザクした感じの物が良いようです。キラキラ光っていてサラサラした感じの物は避けた方がいいようです。出来れば還元しやすい赤目系の砂鉄が有ればいいのですが、無い場合は真砂鉄でも結構です。どちらの場合も一番良いのは山砂鉄で、山中の風化した花崗岩地帯などで採取されます。次に良いのが川砂鉄で、川の中流域に堆積していたりします。最後が浜砂鉄です、一旦海に出た後、砂浜などに打ち寄せられて黒くなって堆積しています。砂鉄は比重選鉱するか、磁力選鉱をして余分な不純物を取り除いておいてください。

この程度の大きさの炉では1日の操業で約50kg位使用します。

製鉄に使う炭は松炭が良いように思われていますが、案外ザックと呼ばれている雑木の炭が良いようです。松に比べて若干硬く、炉内で減って行くのが遅いため、砂鉄が長い時間かかって降りて行くのが良いようです。炭の大きさは使う炉の大きさにより調整しますが、この大きさの炉の場合3〜4センチ角ぐらいの大きさが良いでしょう。人手の多い場合は操業しながら炭を切り揃えればいいですが、少人数の場合は最初から炭は切って準備しておいた方がいいでしょう。

この程度の大きさの炉では1日の操業で約100kg位使用します。

97.10.13

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