下着ドロ・・・

確かに熱いものを感じてしまう、彼らの生き様には・・・

男としてそれを感じざるを得ない。

だが、

だが敢えて俺は言う。

下着ドロは最低だ!!

女性の神々しい体を包み込む魅惑的な布きれ、

それにあこがれを抱く若者は多いだろう。

だけど、

だけどそれじゃいかんのじゃ!!

それに自分が綾香とかの下着を手に入れてむはむはするのは兎も角、

他の奴が彼女らの下着を手に入れたら・・・

 

くそったれ!!

 

それだけで万死に値する。

「浩之、準備は良い?」

「お・・・お!!ドンと来いって感じだ」

突然声をかけられてびびってしまった俺。

さすがに先ほどまで考えていたような事を訊かれた日には綾香版地獄の断頭台が炸裂していただろう。

例えこの俺が1000万パワーを持っていても、7000万パワーのあの技は破れないのだ。

浩之ちん、ふぁいと!!

取りあえず面倒くさいが、今までに被害にあった場所を聞き込みで絞り込み、

次に狙われる所を一定の広さに絞り込む。

それは来栖川が誇るスーパーメイドロボセリオにお任せして、

俺はソファでマガジンの「ラブひな」を読みながら転がっていた。

「こんなに無茶苦茶なくらいもてるなんて、なんか男として許せんの〜。

第一こんなよわっちそうな男のどこに魅力を感じるんじゃ・・・」

などと自分の事を棚にあげまくって暴言を吐く。

たまーに、宇宙からの電波が俺をそんな気持ちにさせるのだ。

雅史はそれを神の意志とか怪しいことを言っていたが・・・

「浩之さん、配置場所を大体特定しました」

「うむ、それでは早速各自持ち場につけ!!」

気分はなんかどこぞの隊長の気分だ。

そしてすっかり気をよくした俺は続けて司令を下す。

「一応、何かあった時のためにも女の子は二人一組で動いてくれ」

「了解」

綾香と先輩、

あかりと志保、

琴音ちゃんと葵ちゃん。

レミィと委員長。

セリオとマルチ。

理緒ちゃんと坂下。

この組み合わせだった。

何やら戦闘力にやたらと差があるが気にしない。

恐らくヤクザの事務所の出入りしても返り討ちされないであろうメンバー。

下着ドロを捕まえるのには勿体なすぎるぐらいだ。

だがメンバーはみなやる気だった。

女性として下着ドロという女の敵は許せないのであろう。

「ふふふっ・・久しぶりのハンティングね」

若干一名怖い発言をしているレミィ。

だがまあ、俺には気がかりな事があった。

それはあかりと志保のペアである。

全身凶器の綾香と、魔術を使える先輩。

超能力者の琴音ちゃんと、格闘家の葵ちゃん。

生粋のハンターであるレミィと、男ぐらい拳で殴りそうな委員長。

サイボーグ009も顔負けのセリオ。

そして空手の全国大会に出るぐらいの猛者、坂下。

彼女らなら下着ドロの一人や十人、

あっさりとたこ殴りにすることも可能であろう。

だが口だけの志保と、もめ事に向いてないあかりというペアはどう考えても、

選択ミスだった。

だが俺の心配を杞憂としか思ってないようにさっさと出かけていく女の子達。

こうして下着ドロと俺達の長い夜が始まろうとしていた。


虹の遊歩道〜エクセレント〜

第四話「その後の物語(4)」


「ふむ・・・やはり眠い時はペプシコーラの炭酸抜きに限るのう・・・」

カフェインが豊富に入ってるため、

眠くならないのだ。

だがここで注意しなければならないのは、

あまり飲み過ぎないことだ。

前に俺の知り合いはブラック&ブラックガムを三枚ぐちゃぐちゃと噛んだ後に、

ペプシの炭酸抜きの一気のみをやって、呼吸困難に陥ったらしい。

くわばらくわばら。

コーラだけでは口寂しいと、

ポテチ片手である。

「さぁって、さくさくと犯人を見つけだすか」

女の敵はボコッて隅田川にでも簀巻きで流してやろう。

そう心に決めていた。

「しかし探偵に新宿・・たまらないシチュエーションじゃの・・・何度考えても」

出来れば依頼をするには新宿駅の伝言板に「XYZ」と書け!!

とか言いたいが、それには余りにも知名度が低すぎた。

だがあっちはパートナーが一人。

こっちは美人姉妹。

どう考えても相棒に関してはこっちの完全勝利だった。

「しかしそうするとライバルも欲しいなあ・・・伊集院隼人とか、そういう名前の・・・」

あだ名は蛸坊主・・・

って滅茶苦茶パクリだった。

「む・・・!?」

その時俺は凄いものを見つけてしまった・・・

「す・・スパイダーマン!?」

マンションの壁を登るスパイダーマン。

子供の頃にテレビの中でしか見たことがないようなヒーローだった。

「まさか実在してたなんて・・・」

生け捕りしたらさぞかし大儲けであろう。

考えただけで涎が止まらない。

「あれは俺のもんじゃああああああああああああああああ!!」

頭の中で欲望だけが渦巻く。

俺の目にはもう、

諭吉の旦那しか見えていなかった。

 

 

「な・・・なんだこの小僧・・・!?」

下着ドロ歴22年。

この道では神様と呼ばれた男だった。

初めて盗んだ下着はクラスメイトの美紀子ちゃんのものだった。

それ以来すっかりその味を覚えた。

先日も近所に住むハーフの少女の下着を盗んだばかりだった。

彼のコレクションの中でも最高の一品の一つだ。

このスパイダーマンの格好も、

見つかった時の威嚇の他に、

手の平につけた特殊吸盤を隠すためでもあった。

この特殊吸盤、

どんな絶壁も簡単によじ登れる。

この吸盤を使用しているのがばれると、

恐らくこの地域一帯で特殊吸盤を購入した人間について捜査されるであろう。

それが嫌なので、このスパイダースーツで隠していた。

「スパイダーマン、確保!!」

そんな彼の目の前に怪しい青年が立ちはだかる。

「な!?」

素手でマンションの壁を登ってくるのだ。

恐怖で顔が歪む下着ドロ。

「うおおおおおおお!!」

「ひいいいいいいいいい!?」

互いにマンションの屋上まで上りきる。

対峙する浩之と下着ドロ。

(な・・なんなんだ、この小僧は)

一流のロッククライマーか?

そんな馬鹿げた考えが男の脳裏に一瞬浮かぶ。

「覚悟しろよ・・スパイダーマン」

完全に欲に目がくらんだ浩之。

それは脱衣麻雀に目がくらんで速攻でマネージャーを裏切った、

某高校の野球部員の二人によく似ていた。

「捕まってためるか!!」

ビルの屋上から隣のビルの屋上へと飛ぶ。

ビルの間の距離はざっと数メートル。

落ちたら確実に死ぬ高さだ。

「俺の勝ちだ!!」

全身冷や汗を流し勝ち誇る下着ドロ。

運動神経抜群の彼でも今のは泣くほど怖かった。

その証拠に半分涙ぐんでいた。

だが・・・

トンッ。

軽く飛んだだけのような浩之。

だが彼は余裕で飛び越していた。

「な・・・・・」

「スパイダーマン、ゲットだぜ!!」

意気揚々とスパイダーマンを強制連行する浩之。

男が下着ドロだと彼が知るのは、

友人達にさんざん自慢の電話をした後、

帰ってきたセリオ達に指摘されてからのことだった。

 

 

つづく


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