短期集中連載!

デスカノン
第一話


 それは10年前の事であった……きっと。
 弾丸でも、悲鳴でもない。
 ただ、白い雪が降っていた。
 その中をひたすらに生き抜いている一人の男の物語。

 見慣れた道を歩く。
 降り積もった雪が彼と彼女の足跡を残していく。
 ただ、転々と足跡の残る雪の上を北川は歩いた。
 「あ、あのさ、いきなり出番って言うのは初めてでドキドキしないか?」
 真剣な表情での第一声。
 それを隣で香里が嘆息。
 「あーこれは何かの間違いじゃないかと思うっ。美少女SSにあるまじき行為だ!
 何てったって俺がスタメン!俺が真っ先に登場しているっ。立ちキャラCGしかなかった俺がっ」
 大きく手をふってオーバーアクションの北川。
 が、それに答える者はなく、ちょっと寂しい北風が哀愁を誘う。
 香里の目線が冷たく刺さる。
 そんなことをはお構いなしにテンションは上昇の一途。
 「だがしかぁし!今回の俺はちょっと違うぜ!ベイベー」
 一人でのオーバーアクションは多少寒いが仕方ない。
 なにせあまり目立つ男ではない。
 多少派手な事をしていないと、忘れ去れてしまうかもしれないのだから。
 「実は道ばたで倒れていたオッサンを助けた引き替えにこの銃器をいただいたのだ!」
 「あ、アンタ……ねぇ」
 香里は北川を見ると、額に手を当て、またしても嘆息。
 このおめでた男に対して何を言って良いのか。
 とりあえず、説明くさい台詞を吐くのは流石3流といった所か。
 「考えてもみなさいよ。銃だってモデルガンに決まってるでしょ?それに街中で迷彩服を着込んで、
 左右のバランスがずれているような人から貰ったものでそんな……」
 「よぉし!せっかくだから1発打ってみるぜ!」
 「人の話聞きなさいよ。コラ」
 忠告聞き入られず。
 浮かれる北川をあきれるような視線を送る。
 もちろん、北川はそれに気付いていないようだが。
 「狙いを定めて……」
 「止めなさいよ。どうせモデルガンなんだから」
 そんな香里の注意を無視して道路標識に銃口を向け、引き金を勢いよく引く!
 パーンっっ……。
 轟音と共に、慣性に耐えられず、倒れる北川。
 それと同時に飛び出る銃弾。
 銃弾は見事に右下に外れ、近くのガードレールに生々しい傷を付けている。
 近くに人が居なかったのが幸いだろう。
 「こ、これ本物じゃないか!」
 「馬鹿!なにやってんのよ!」
 「んな事言われても……」
 
 北川の果てしない物語が今始まろうとしていた。


つづく


是非是非是非是非ハベラさんにご感想を
ちなみに杉菜は内容に関与しておりません(笑)

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