研究「市販ダイオード」  
(改造ラジオの活用)


  
★観察実験には専門知識と経験が必要です。本サイトの閲覧は理科教育関係者に限らせていただきます。★

1.概要

  自作検波ダイオードの性能確認に「6石スーパーラジオ」の検波回路を利用しました。これによって,明瞭なラジオ放送の音で容易に性能確認ができるようになりました。この改造ラジオを用い,LEDなど,市販の各種半導体素子や電子機器も検波ダイオードとして働くことを見つけるとともに,それらの特徴を考える教材へと発展させました。
2.必要なもの (1)実験用改造ラジオ
  6石スーパーラジオキットを組み立て,「検波ダイオード」の代りに基板穴からシールド線を延ばします。先にはミノムシクリップを取り付け,代用となる自作や市販の検波ダイオードを接続します。

※学習用には6石スーパーラジオキット「エース電気(AR-606型)」を採用し,電子パーツ店や科学教材社の通信販売などで購入しましたが,現行商品かどうかは不明です。他には,中学校技術家庭科の製作実習用に市販されているキットも利用できました。これらは教材用として,検波ダイオードが独立して存在するよさがあります(注:すべてかどうかは確認できていません。)。市販の完成品ラジオは回路がワンチップIC化されているはずで,検波ダイオードだけを取り外す事はできないはずです。

6石スーパーラジオキットの例(現行商品かどうか不明?)
左「エース電気(AR-606型)」,右「技術家庭科の実習用キットの例」
実験準備

実験の前に検波ダイオードを接続し,
ラジオ放送の受信を確認します。

(付属のゲルマニウム検波ダイオードを接続)

3.改造ラジオで市販のダイオード探し

(1)市販の半導体素子の活用

  改造ラジオから引き出した検波端子に,市販の各種半導体素子を接続するとラジオ放送が受信できます。整流用ダイオードはもちろんのこと,LEDを接続すると同調によって発光し,フォトダイオードやフォトトランジスタを接続すると明るさでラジオの音が変化します(蛍光灯下では,点滅によるノイズが入ります)。電子ブザーや,電池を外した電卓や時計も検波ダイオードになって驚かされます。トランジスタも可能ですが,コレクタとエミッタ間を利用する場合はベースに乾電池1個でバイアス電流を流す必要があります。これは,トランジスタの働きを理解する教材になります。


「LED」で検波実験(同調時点灯)

実際の実験写真(赤LEDの点灯)
「LED(発光ダイオード)」も検波ダイオードになります。同調時は光ってインジケーターとなります。
これによって,同調時,電流が増えることがわかります。


「整流用ダイオード」で検波実験(右は大電流用)

「整流用ブリッジダイオ−ド」で検波実験
「整流用のダイオード」も検波ダイオードになります。ただ,ブリッジダイオードは,写真の交流入力端子に接続した時だけ機能しません。+−の極性は関係ありません。
※もし交流入力端子間が検波ダイオードになれば,交流を接続した時ショートします。つまり,破損して整流できないことになります。
これによって,ブリッジダイオード内部の4個のダイオードの接続について考えることができます。


「フォトトランジスタ」で検波実験

フォトトランジスタを懐中電灯で照らす
「フォトトランジスタ」も検波ダイオードになります。室内で実験すると,天井の蛍光灯器具の点滅照明でノイズが入ります。そこで,右図のように,懐中電灯で照らすときれいな受信ができます。+−の極性は関係ありません。


屋外でフォトトランジスタ検波ダイオードを試す
・屋外ではきれいな音で受信できます。太陽に向けると音が大きくなり,地面に向けると小さくなります。


「トランジスタ」で検波実験
   (コレクターとベース間に接続した例)

「トランジスタ」で検波実験
   (エミッターとベース間に接続した例)
「トランジスタ」を用いると,コエクターとベース間,エミッターとベース間,どちらに接続してもきれいな音で受信できます。+−の極性は関係ありません。


エミッターとベース間に電圧をかけるとラジオが作動

NPNトランジスタの例では,ベースの電極を逆にする
・コレクターとエミッター間に接続するとラジオが作動しません(正確にはわずかに音が出ます)。そして,ベースにバイアス電流を流すとラジオが作動するようになります。なお,PNP型とNPN型ではベースの極性を変える必要があります。
  これによって,トランジスタのベースの役割と,PNP型とNPN型の違いを考えることができます。


「IC」の足に接続するとラジオが作動
「IC」は適当な足に接続すると,ラジオが作動します。



「電卓」で検波実験

「電子ブザー」で検波実験
「電卓」「電子ブザー」「液晶時計」などを接続しても検波ダイオードとなり,驚かされました。
ただ,電卓も時計も,液晶画面は表示されず,電子ブザーも鳴りません。
(電子メロディは検波ダイオードになりませんでした。)

「液晶時計」で検波実験

4.備考

・平成6年度 『東レ理科教育賞授賞作品集』 P54〜56に掲載されています。
・「科学の祭典CD-ROM 『原子の世界へ旅立とう! PART1』 科学技術館」に収録されています。


・2000年7月15日(土)18:30〜19:00テレビ東京「テクノ探偵団」”電子を自由自在!の謎〜半導体〜”で,提供した「原始ダイオード」実験装置が使われました。内容も,ほぼ私のレポートに沿って構成されたようです。
 
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《SUGIHARA  KAZUO》