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1.概要 このような検波ダイオードは興味深いものですが,学習を想定すると,生徒を採集に連れて行くのは容易ではありません。また,私が採集や購入したものを用いるだけでは興味深い学習は期待できません。そこで,実験室で検波ダイオードを作ろうと考えました。特別な設備は皆無で無謀な挑戦でしたが,なんと,出来てしまったのです。それが,「黒錆検波ダイオード」です。 これは針金を用いて安価,簡単,確実,瞬時に自作できるもので,性能も市販の鉱石検波ダイオード(現在は入手不可)やゲルマニウム検波ダイオードと変りません。同様の開発例,実践例を調べていますが,今のところ類例のない工夫であると考えています。 2.必要なもの 「6石スーパーラジオ」の検波ダイオードを置き換え利用することにより,明瞭なラジオ放送で容易に性能確認ができます。 (2)自作検波ダイオード 針立て式検波ダイオード,針金(直径1.6mm×長さ10cm程度),金床,金槌,ガスバーナー,水 (銅線やアルミ線も試しましたが,検波ダイオードになりませんでした。) 3.実験の方法 以前から錆びた鉄が検波ダイオードになることは知られていました。錆びた鉄釘などを探して,ゲルマニウムラジオや改造ラジオで試すと,時々,それらしい音が出ます。しかし,明瞭でなく,不安定で,教材として使えるとは思えません。学習となると,納得できる性能のものを,その場で作る必要があります。 そこで,鉄釘をいろいろな水溶液に浸けて百種類以上の鉄さび(赤錆)を作りました。それらは全く反応がなく,行き詰まりました。だめもとで試したのが,過酸化水素水を溶かした水(オキシドールに近い)で,結果,斑点状に黒い錆ができました。これが十分な検波性能を示したのです。こうして,赤錆ではなく黒錆がカギであることに,偶然,気付いたのです。 黒錆の作り方を調べると,「濃い水酸化ナトリウム水溶液をつけて水蒸気中で蒸し焼きにする。」とあり,試してみると,黒光りする鉄釘となり,時々,全面が高性能な検波ダイオードとして機能する見事な釘ができます。しかし,時々では困ります (全く作動しないことが多い)。そして,悩みぬき,閃いたのが以下の作成方法です。 検波ダイオードして完璧な黒錆ではなく,簡易化による怪しげな黒さびを作り,その中から検波ダイオードとして機能する部分を探そうというのです。発想の転換です。
これによって,針金の表面には[黒色〜灰色(金属光沢)]の部分までいろいろな種類の錆ができます。この中から検波ダイオードとして性能のよい部分を針先で探すと,必ず見つかりました。明瞭なラジオ放送が聞こえた瞬間,感激しました。 黒錆が瞬時にできるという良さもあり,瞬間「検波ダイオード」は教材として画期的なものだと考えています。実際に,1年間,中学生を中心に高校生,市民ら2000人以上に体験していただきましたが,丁寧な実験指示をしなくても,すべてが検波ダイオード作りに成功しました。
黒さび検波ダイオードは,金属酸化物(MOS型)半導体の一種であり,P-N型のダイオード領域が存在すると考えられます。一般に,金属は酸化の進み具合によってP型,またはN型の半導体になることが知られています。
4.備考 ・「科学の祭典CD-ROM 『原子の世界へ旅立とう! PART1』 科学技術館」に収録されています。 ・2000年7月15日(土)18:30〜19:00テレビ東京「テクノ探偵団」”電子を自由自在!の謎〜半導体〜”で,提供した「原始ダイオード」実験装置が使われました。内容も,ほぼ私のレポートに沿って構成されたました。 |