1.概要
今まで実施した2度の研修講座と研究会の全国大会用などに,それぞれ50数セットほど製作しました。手作り教材ですから,その都度,改良を加えています。特に,点火筒は微妙なところがあり,これ以外にもいくつかの形式を工夫しました。
 図1 「火の玉ダッシュ」の概略図
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2.製作
(1)「電気分解槽」
11号の赤ゴム栓にドリルで直径1mmの細い穴を開け,そこに電極板のステンレスリードを通した。木製台との接合は,接着剤とステンレス木ネジを併用した。
※必要部品
透明ポリカーボネイトパイプ(内径31×外径34×長さ75mm)・赤ゴム栓11号2個(メーカーによってパイプと合致しにくいことがある。),電気分解用電極(ステンレス金網とステンレスリード線をスポット溶接。溶接機がない場合,ステンレスフラックスを用いてハンダづけする。ステンレスリード線の先をそのままコイル状にしてもよい),ガラススポイト(9×73mm:マルエムスポイド瓶用ガラススポイド),木製台(140×140mm,9mm厚:ラワン合板に両面テープで1mm厚硬質塩ビ板貼り付け,裏にラミネート封入の使用説明書貼り付け),ステンレス皿木ねじ(3.1×20mm:木製台とゴム栓の接続用),接着剤(「セメダインスーパーX2クリア」,木製台とゴム線の接着用)
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 図2 電極板とリード線のスポット溶接
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 図3 溶接した電極板と台への固定
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 図4 「電気分解槽」の組み立て部品
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 図5 完成した「電気分解槽」
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(2)「点火筒」
差し込んだシリコンゴム栓は,爆発の衝撃を受け止めるとともに,挿し込まれたガラススポイト先端の破損とがたつき防止用です。異径チューブコネクターと透明アクリルパイプは,接着剤と木ネジ止めによって完全に固定してあります。そのため,爆発の力でもう一端のシリコンゴム栓は外れやすくなっています。これは安全対策ですが,実際にゴムキャップとともに外れる事がありました。そこで,ビニルテープで巻いてゴムキャップとの摩擦を増やしました。 なお,シリコンゴム栓(0B)に開ける直径3.5mmの穴は,「先三角ショートビット」というドリル刃を用います。
※必要部品
透明アクリルパイプ(内径12×外形16×長さ45mm),チューブ異径アダプターS(一部切断して使用),ステンレス皿木ネジ(2本2.7×13mm:発火用電極),ステンレス木ネジ(2.4×5.5mm:透明アクリルパイプとチューブ異径アダプターSの固定),接着剤(溶剤を含まない「セメダインスーパーX2クリア」を用います:透明アクリルパイプとチューブ異径アダプターSの固定),シリコンゴム栓(OB),ゴムキャップ(マルエムDcap15)
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 図6 「点火筒」の組み立て
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 図7 完成した「点火筒」
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「点火筒」の部分拡大→
・2本のステンレス木ネジによる点火用接点が2つ
・爆発の衝撃による異径チューブコネクター分離防止用の小ネジ
・下部には,穴を開けたシリコンゴム栓
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 図8 点火筒の部分
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「点火筒」の別バージョン
透明ポリカーボネートパイプ(内径11×外形13×長さ45mm)にビニルチューブ(内径13×外形16×長さ45mm)をかぶせました。これによって,爆発の衝撃での破損をほぼ完全に防止できます。ただ,二層構造による透明度落ちとともに,1mm厚のポリカーボネイトパイプの経年劣化が少し早いようで,気にかかります。
※ビニルチューブの摩擦が大きいので,ビニルテープ巻きの必要はありません。
赤く着色した部分がポリカーボネイトパイプで,外側がビニルチューブです。内側がシリコンゴム栓(0C)で,無理に押し込んだため中央に開けた穴が小さく見えています。実際は直径3mmの穴で,「先三角ショートビット」というドリル刃を用いて開けます。シリコンゴム栓0Cは0Bと比べて小さく,穴あけは少々難しくなります。このタイプを作るのに躊躇する,もう一つの理由です。
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 図9 二重構造の「点火筒」
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 図10 完成した別バージョン「点火筒」
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(3)「点火器」
圧電素子の加工は,さまざま考えられます。今回は,究極の簡単構造を工夫しました。
※必要部品
圧電素子(ヤカフードル製,11000V以上の品質基準で1cm程の距離を火花が飛ぶ,黒い導電性プラスチックが一方の電極になっている。現在,ヤカフードルは操業停止のようです。),シリコンチューブ(内径6×外形8×長さ45mm/電極用リード線と圧電素子の接触接続用:持ちやすく感電防止にもなる),ミノムシクリップ(小,赤),ビニル電線(赤),銅板(10×5mm,圧電素子とリード線の接触用)
圧電素子にかぶせたシリコンチューブは,点火時の感電防止とリード線の接続を兼ねています。また,これによって小さな圧電素子が持ちやすくなります。
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「点火器」の部分拡大→
完成した「点火器」(上)
「点火器」の部品(下)
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 図11 完成した「点火器」(上)と必要部品(下)
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(4)「ビニルチューブ」
内径4mmのビニルチューブを使用し,10〜20m程度の長さがほしい。
※必要部品
厚さは1mmあればよいので,内径4×外径6mmのビニルチューブとなります。
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(5)「説明書き」
理科室にはさまままな教具があり,使い方がわからなくなることも多い。 そこで,以下のような説明書きを貼り付けておくことをお勧めします。
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「電気分解槽」裏面の説明書き→
ラミネート封入した説明書きを両面テープで貼り付けた。
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 図12 裏面の説明書き
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3.備考
・2004年の講座用に製作した「火の玉ダッシュ」3代目を主に掲載したが,今まで少しずつデザインを変えている。
※「点火筒」を2mm厚のアクリルパイプ一層構造とし,前回のポリカーボネイトパイプとビニルチューブの二層構造を簡略化した。これは,ポリカーボネイトパイプで作った10年前の点火筒にひび割れが多いことによる。アクリルパイプはテスト実験の爆発に何度も耐えているが,ひび割れなどが生じれば使用を中止する必要がある。
(ひび割れが接着剤に含まれている溶剤によるとも考えられるので,今回の接着剤は溶剤無しの新製品を用いた。)
※電極とリード線の接合にスポット溶接を利用した。前回まではハンダ付けであり,学校での使用中にステンレス金網の電極が外れることが1件あった。今回は,このような問題はないことと思う。
・「点火筒」の内容積は,できるだけ小さいほうが安全である。上で紹介した「筒の長さ45mm」を限界と考えて欲しい。
・2004年の講座用に注文した「マルエムスポイド瓶用ガラススポイド」は少し先が太く,火の玉ダッシュに多少の設計変更を迫られた。昔の在庫品で間に合わせたが,市販の商品の組み合わせに付随する難しい部分である。
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