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1.はじめに いくつかの課題がわかりました。磁石を水に浮かべて方位磁針にする場合,普通は,発泡スチロール板の先を尖らせ,中央部を削った窪みに磁石を押し込んだ船を利用することと思います。かなり弱い磁石でも,方位磁針となります(多少のコツというか注意がありますが‥後述参照!)。今回の目的は,水平に這わしたパスカル電線の横に置いた方位磁針に,水中で立ってほしいのです。しかし,立派な船に乗っていては,そうはいきません。 穴あきフェライト磁石は,棒磁石のように長くないため,水中でも立ちやすいだろうと期待しました。具体的には,円形フェライト磁石の両面に発泡スチロールを貼り付け,全長を短くしようということです。いろいろ試していると,同僚の先生が解決してくれました。発泡スチロール球を貼り付けるというものです。ドーナツ形の穴に発泡スチロール棒を挿し込もうと努力していたのですが,最適な形状がなく苦労していました。これなら簡単です。 用いた「穴あきフェライト磁石」は,二六製作所製(外径24mm,内径10mm,幅3mm)です。フェライト磁石としたのは,とにかく安くしたかったことによります。ネオジム磁石を用いると,もっと小さくて高感度な方位磁針になることでしょう。 以下の内容は「磁石で方位磁針」と重なりますが,用いたドーナツ形磁石での実験を掲載します。授業では,「N極とS極を,どうやって見つけますか?」という問いから始め,どちらの面がN極かS極かを確認します。
2.浮遊方位磁針の作り方 「二六製作所製の穴あきフェライト磁石(外径24mm,内径10mm,幅3mm),発泡スチロール球(直径15mm,2個),両面テープ(保護紙剥がし用の爪楊枝付),透明容器(部品容器と水槽兼用)」 注:1個の発泡スチロール球は,水性エマルジョン塗料で着色します。油性ペンは溶けるので使えず,水性顔料系などのいくつかを試しましたが,いずれも水中で色落ちします。水性エマルジョン塗料にごく少量の水(5%程度?)を入れて,筆で丁寧に塗ります。どぼっと漬けると,塗料が偏っていびつになるとともに乾燥時間がかかります。薄めすぎると,はじいて塗れません。
3.「浮遊方位磁針」を用いた実験 「パスカル電線」に利用するには,底が丸くて直径の小さなガチャ玉水槽の方が使いやすいのです。磁針が中央に位置しやすいだけでなく,電線に近づけられるよさもあります。しかし,気に入った大きさのガチャ玉の入手は難しく,普通は,安価で入手しやすい透明プリンカップの利用となります。 下図をよく見ると,発泡スチロール球の浮かび方に違いのあることがわかります。これは,伏角の影響です。赤球が沈みがちで,白球が少し浮いています。
図9と10の写真撮影をしていて困りました。発泡スチロール球が,中央に位置しないのです。常に,端に寄って容器に接触しようとします。いろいろ調べて,2つの理由のあることがわかりました。 (1)磁北に引き付けられる。 (2)プラスチック容器の内側面が水をはじき,接触している水面がへこんでいる。そのため,その隙間に浮遊磁石が落ち込んで動かなくなる。 結果,磁針を常に中央に位置させるのは難しいことがわかります。また,(2)の影響は,ない方がよいのです。そして,(1)は,教材として利用できることがわかります。 そこで,磁北へ向かう磁針の移動を観察する方法を考えました。内側面を洗剤できれいに洗ったガラスビーカーを用意しました。濡れと表面張力によって,内側面に接している水が壁を登り,水の斜面を形成します。これによって,南内側面で手を離すと,水面を磁北へゆっくりと移動する浮遊方位磁針が観察できます。なお,対流などの影響があるようで,ビーカーは200cm3程度がいいようです。
4.「パスカル電線」への利用
垂直に設置した「パスカル電線」の横に置いた「浮遊方位磁針」の動きです。電流の向きによって違った動きをします。予想通りとはいえ,クルクルと向きを変える「浮遊方位磁針」は,少しユーモラスでかわいいものです。
5.備考 今回は,小さな容器を利用した例ですが,大きな水槽にたくさんの「浮遊方位磁針」を浮かべ,そこに「パスカル電線」を入れると,どうでしょうか? いろいろと,これからの発展も期待できそうです。 |