「パスカル電線(S-cable)」実験用 
スピーカーの活用と選択

  
★観察実験には専門知識と経験が必要です。本サイトの閲覧は理科教育関係者に限らせていただきます。★
1.はじめに

  「S-cable」を用いると,図1のような「スピーカー」音を利用した「電磁誘導」,および「S-cable周囲の磁場」を調べる学習が容易に実現できます。

  当初はイヤホンの使い難さから,スピーカーによる大きな音での電磁誘導実験を意図しました。その中でコイルの大型化を進め,結果として「S-cable周囲の磁場」調べに繋がりました。これは「エルステッドの実験」の再発見であり,よりわかり易い発展ともいえます。

  スピーカー利用は画期的な授業改善に繋がりますが,用いるスピーカーの選択は重要で,考慮すべき要因がいろいろあります。
  「小型パワーアンプの活用」のページも参照。


電磁誘導実験
図1  「S-cable」によって実現したスピーカーの活用

  同様の実験は,昔から行われてきました。私が中学生の時,「初歩のラジオ(誠文堂新光社)」の記事(電線の束を用いていました)を見て実際に試したことがあります。これらは図2,3,4のような「小さなコイル」と「イヤホン」が用いられ,授業で活用するにはいくつかの課題を感じました。
(1)イヤホンでのクラス全員体験は,準備数が多くて大変(実験時間もかかる)。
(2)イヤホン視聴は実験のインパクトが弱い。
(3)人数分揃えたとしても次のクラスの利用時,衛生上の懸念がある。
(初期の改善例として,「イヤホンアダプター(図4)」を考えました。軽く耳にあてるだけで確認できます。二人で覗き込むようにしても聞こえます。)


⇒根本的な対策として「スピーカー利用」を考えましたが,音を大きくするには誘導電流の増加が必要です。
  すぐに「コイルの大型化」に気づき,試してみるとその通りでした。直径は大きいほど有利ですが,様々なサイズのコイルを試し,現在は内径80mmのコイルを用いています(図1)。手にしたコイルを動かすと,「S-cable」周囲の磁場調べができることに気づいたからです(大き過ぎると扱い難い)。
⇒スピーカー利用は,「エルステッドの実験」の再発見につがりました。


電磁誘導実験
図2  初期の実験方法(小さなコイルとイヤホンの利用)

 
  コイル
図3  ミシンボビン利用の小さなコイル
アダプター
図4  衛生面を考慮したイヤホンアダプター


2.実験用スピーカーの探求
(1)HiFiオーディオスピーカーから始まる
  当初,私のステレオセットのスピーカーで試しましたが持ち運びは大変,授業で使えるわけもありません。そこで,廃品のステレオセットを探してスピーカーを取り外し,自作した小さなボックス(木箱)に取り付けました。スピーカーにボックスは必須という妙な固定概念があったのです。しかし,小さくても木箱は目障り,中に何かを隠しているようにも見えます。こうして,スピーカーユニットのみを用いるようになりました。

  実験用として探しているのは能率の高い(大きな音の出易い)スピーカーです。スピーカーのデータシートにある「出力音圧レベル(dB)」で判断でき,3dB低いと同じ音量を得るには2倍のアンプ出力が必要です。

 
・当時はオーディオブームで高価なスピーカーユニットが比較的容易に入手できました。また,なんとなく高級品が良かろうと感じ,いくつかのHiFiオーディ用スピーカーを購入しました。
(1本だけの購入なので,不思議がられました)

・図5は,手元に現存する2本です。
  左は,廃業したCORAL製「4A-60(8Ω)」10cmスピーカーで,ほぼ満足できる性能でした。右は,気を良くして購入したより高価な2wayスピーカーですが,小さな音しか出ません。ようやく,データシートの「出力音圧レベル(能率)」の数字に気づきました。
オーディオスピーカー
図5  HiFiオーディオ用スピーカー(手元の現存品)

  その後,安いオーディオ用スピーカーを見ると,つい買ってしまいます。直径10cm程度のフルレンジとしていますが,実験時,扱いやすく目障りとならない大きさということです。また,量産サイズなので,入手し易く性能も安定していると聞いています。ただ,近年は出力音圧レベル値が低くなっているようで,当然ながら音量はまあまあです。音の出難い低域に合わせて高域の出力音圧レベルを下げ,フラットな再生帯域を確保していることが原因と聞いています。


(2)廃品で見つけたスピーカー
  雨ざらしの廃棄カセットテレコを分解すると,ほこりまみれの汚れたスピーカーが出てきました。ダメモトで試してみると,かなり満足できる音量が得られます。長時間の電池作動を意図して能率が高いのでしょうか。それ以来,廃棄AV機器収集を始めました。
 
・当時,廃棄物としてよく見かけたカセットテレコのスピーカーは,長辺10cm程度の楕円形が多かったようです。図6はそんな一つを黒板掲示できるようにしたものです。台の板にゴム磁石を貼り付けました。

・ジャンクスピーカーは次々と集まり,大きな音が出易いものを選んで授業利用を続けました。スピーカーの標準的な性能もわかってきました。
オーディオスピーカー
図6  廃品スピーカー(黒板掲示用に加工)
ターミナルの色分けは不要


(3)自動車用スピーカーは4Ω!
  当時,流行っていた定期移動の雑貨店で安価な自動車用スピーカーを見つけました。ダイハツの軽自動車用だと思います。試してみると,それまでで最も大きな音量(少し大きい程度ですが…)が得られます。表示を見ると「インピーダンス4Ω」とあり,自動車用の標準規格のようです。納得の高性能です。
  今の一般用スピーカーは,ほぼ8Ωですが,図5,9のCORAL「4A−60」は4・8・16Ωの3種の商品が揃っていました。


 
・偶然手に入れた自動車用10cmスピーカー。
  前面保護ネット(図7)には「DAIHATSU」,スピーカー裏面(図8)には「Clarion」と表記されています。

・改造してターミナルを取り付けました。
オーディオスピーカー
図7  自動車用4Ωスピーカー

 
  コイル
図8  スピーカー裏面の表示(4Ω)
アダプター
図9  スピーカー裏面の表示(8Ω)


  その後,4Ωスピーカーを求めて電子パーツ店を探しています。ほとんどありませんが,時々見つかり,購入します。しかし,期待している性能とはいえません。メーカー名がない10cm以下の小サイズばかりで,評価・検討できる商品とはいえません。多分,自動車メーカー純正の安価なもの(最大入力の小さなもの)が良いと思います。最大入力の大きなオーディオ用はボイスコイルやコーン紙が丈夫で重いため,能率はより低くなると思うからです。


3.まとめ「スピーカーはいろいろ」

  スピーカーの性能差を知ってから,いろいろなスピーカーを集め,満足できないものは破棄してきました。入手容易な最適お薦めスピーカーの例示を意図していますが,今のところ難しいですね。

  知ってほしいことは,スピーカー能率には差があり(音質と比例しません),探す値打ちがあるということです。


 
・いろいろなスピーカーを集めて調べました。図10は,手元に残るスピーカーの一部です。

・ターミナルを付けたパソコン付属スピーカー,コーン紙保護用ファンガードを付けたスピーカー,超小型スピーカー,ツイーター,ダイナミックマイクユニットの流用,圧電スピーカーなど,いろいろ試してみました。

・直径10cm程度の一般AV機器用(できれば自動車用4Ω)を探してみましょう。
オーディオスピーカー
図10  スピーカはいろいろ,性能もいろいろ

   自由利用マーク  
《SUGIHARA  KAZUO》