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1.はじめに
音声や交流電流を「S-cable」に流すと,傍のコイルに生じた誘導電流を接続したスピーカーの音で調べられます。これは,電磁誘導実験例ですが,「S-cable」によって生じた磁場をコイルで探すという学習(エルステッドの実験に関連)も可能です。 当初,「ミシン用ボビンなどに巻いた小さなコイル」に「イヤホン」を接続して用いました。しかし,たくさんのコイルとイヤホンの準備は大変,衛生面での課題もあります。そこで,スピーカーの利用を考えました。まず,コイルの直径を大きくすれば良いことに気づきました(スピーカーの選択も重要)。次に,「S-cableをコイル状」にし,「スピーカーを接続したコイル」を重ねるともっと大きくなります(図1)。「鉄心を入れる」と,更に大きな音が出るようになりました。 これによってスピーカー利用を可能とし,先生と生徒,生徒同士が討論しながら実験で検証するという授業も容易になりました。その過程でコイルの意義と価値を考えることもできます。 しかし,「音声によるエルステッドの実験の関連」と位置付けると,上のような手法でのスピーカー音への拘りは方向が違います(技術的工夫)。そこで,アンプを用いて感度を上げ,直線状「S-cable」周囲での磁場を皆でわかり易く確認できるようにしました(図2)。こうして,エルステッドの実験との関連が明らかになります。
2.実験用小型パワーアンプ(自作例) (1)コンセプト 「小出力パワーアンプ」 本実験用には,マイクレベルの小信号増幅可能なアンプを必要としません。1Wまでの小出力パワーアンプで十分,小型でシンプルな構成とします。 「コードレス(9V乾電池使用)」 1Wまでの小出力パワーアンプなら電池でも十分に実用的です。ACコードがないシンプルさは,使い易いものです。 電源電圧は少なくとも9V必要で単三乾電池なら6本,これでは場所をとり過ぎます。そこで,箱型9V乾電池(006P)を用いましたが,授業時間を気にすることない長時間作動が可能です。 「小型でシンプル操作」 小型軽量で目立たないサイズとし,電力増幅に特化,不要な調整ツマミやスイッチを省きます。実験器具はシンプルに。 裏面のゴム磁石によって,磁石黒板への貼り付けもできます(黒板演示実験も可能)。
(2)部品と配置 「パワーIC」 回路の主要部品「LM380N」は,昔からあるお馴染みの小さなパワーIC。利得は50倍,無理をした設計ではなく音質も十分です。9V電源では1W出力が限界ですが,放熱板は必要なさそうです(パワーICは,車載機器用を考慮して12V定格が多いようです)。キット利用なので,製作は簡単でした。 「入力(INPUT)と出力(OUTPUT)の一直線配置」 パネルの前面の入力端子と後面の出力端子を一直線配置とし,電力増幅の流れが一目瞭然となるような配置としました。 実験で使い易いように,入出力端子は標準型のターミナルとしました。 入力パネル面には音量ボリューム,出力パネル面には電源スイッチとLEDパイロットランプを設置しました。 「アース」 アンプはシャーシへの一点アースということになっています。しかし,出力端子とシャーシが接触してアンプが壊れても困りますので(何ともないのかもしれませんが…),アースはとっておりません。今のところ,問題ありません。
3.実験用小型パワーアンプ(市販品の例) 小型パワーアンプによって,おもしろ実験ではない効果的な電磁気学習となることがわかってきました。しかし,適当な市販品はありません。そこで,上の例を始めとする様々なアンプを作ってきました。目標は,先生方にお勧めできるシンプルで作り易いアンプです。しかし,電子工作は慣れないと難しいですね。 そんな悩みの中,百均で偶然目にしたミニアンプ,ダメモトで図のような入出力端子を付けて試しました。結果,十分な性能に驚かされ,30年ほどの苦労は何だったのかと嬉しさと悲しさで複雑な気持ちになりました。
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