『理科おもしろ実験・ものづくり完全マニュアル』 

  

1.『理科おもしろ実験・ものづくり完全マニュアル』(東京書籍)   左巻健男先生の呼びかけで共同執筆した本です。出版社は東京書籍で,定価は税別2,500円です。執筆者が全国にまたがっており,内容が多彩という特徴があります。それだけに,買って損のない代表的な本だと思います。
  この本は増刷を重ね,ついに28,000部(2002年3月末現在)となりました。教育書は,せいぜい4,000部出ればいいほうですから大ベストセラーということです。日本中のおもしろい実践を集約するという,左巻さんの新しいスタイルは大成功したということです。また,この試みは,地域を越えたメディアであるインターネットへと通じるものがあったように思います。

おもしろ実験

2.執筆内容紹介

(1)「電気パン焼き器」p21
  電気パン焼き器の解説としては,これまでで最も詳しくて理論的なものだと思っています。特に,食塩の重要な役割とともに味が構造に関係していることなどを初めて明らかにしました。また,新開発の「通電チェッカー」の初期の形式も紹介しています。サンマなどを用いた電気魚焼きも新開発でした。これらは広く実践されるようになりましたが,本書がきっかけとなったことが多いと思います。最近になって,ホットケーキミックスを溶かす水の量の重要性が指摘されていますが,この本でも工夫発展の第一番目に記入してあります。

(2)「カエルの足の痙攣実験」p239
  これは,学閥との関係もあって当時のイタリアの学会で大きな論争に発展した有名な実験です。動物電気説を主張したガルバーニの間違いが,ボルタの電池の発明によって明らかにされました。そのためか,この実験は化学の世界からは見放され,生物の神経の実験として伝えられてきました。しかし,カエルの足は超高感度の電気チェッカーであり,現代の電気の学習に充分にインパクトを持って再登場できると考えました。やってみると,解剖作業は簡単で,15分もあれば実験準備が整います。この本がきっかけとなって,科学の祭典などで演示実験が行われるようになっています。

(3)「手づくり簡単電池」p262
  これは,各地で流行ってきた高性能電池づくりへの反論として掲載したものです。ややこしい高性能電池も悪くないのですが,教材として重要なのはわかりやすさと工夫発展の容易なことです。つまり,絶対的な高性能ではなく,相対的な高性能化ということです。そのために,省電力で動く電子機器と簡単電池を組み合わせようということです。こういう取り組みは各地で進められてきたのですが,その意義をはっきりと主張されることはなかったと思います。なお,P262のかわいい絵は,娘の作です。

(4)「巨大コイルの実験」p290
  ご存知「パスカル電線」です。無料で借りられる 「東レ科学振興会」のビデオなどを参考にされると,もっとよくわかります。各教材会社からも市販され,海外にも紹介されています(マレーシアの全初等学校にビデオが配布されたということです)。この本を書いてからも多くの実験が見つかり,ずいぶんと発展しています。生徒みずから法則を発見し,発展できるとともに先生が楽できるという,電磁気の教材としては理想のものと考えています。
  市販されていますので,ぜひ購入していただきたいのですが,費用が難しいなら本体のみの組み立てキットを無料でさし上げます(送料のみご負担願います)。電子メールで連絡してください。

(5)コラム
  いくつかのコラムも書きましたが, 「化学発光で見る温度と化学変化」p216は,雰囲気を楽しめる新しい実験です。お試しください。