「そこまでよっ!!」
…夜の闇にこだまする…
「…くああぁぁーーー!! また貴様か、かなみいいぃぃーーーー!!!!」
…闇を切り裂く、一条の光…
「…正義の使者…」
…炎にてらされ、浮かび上がる赤い影…
「…仮面の忍者、赤影参上!!!」
…………
……
「…っかああぁぁーーーー!! むっきいいいぃぃぃーーーー!!!」
玉座に腰掛けた男が、奇声を上げて頭を掻きむしる。
「ら、ランス様ぁ、落ち着いて下さい」
側にいたピンクの髪の少女が、おろおろと声をかけた。
「これが落ち着いてられるかあああぁぁぁーーーーー!!!!」
「ひっ…」
「3度目だぞ、…もう3回も、あのかなみの奴にやられてんだぞ!」
指を3本突き立てて、ランスがシィルにあたる。
「すっ、すいませーーん」
とりあえず謝っているシィルをしり目に…
「…マリア! マリアはいるか!!」
「……なによ…」
暗闇から、めがねをかけた少女が不機嫌そうに登場した。
「『例のやつ』はどうなった?」
ランスは気にせずに聞いてきた。
「……もうちょっとよ。…まったく、こんな短期間で無茶苦茶な…」
マリアがぶちぶちと愚痴をもらすが、とーぜんランスは聞いてない。
「よっしゃああぁぁぁーーーー!!! 見てろよかなみ、ぎゃふんと言わしたる!!」
一人盛り上がるランスの陰で…
「…なんか私、悪の秘密結社にいる悪い博士のよう……しくしく…」
……ご愁傷様です。
…それよりも、「例のやつ」とは一体?
…赤影に魔の手が迫る!?
「…えっくし。……ぐしぐし、…風邪かな?」
そう言うと、赤い忍び装束を身につけた少女は、近くにおいてあるダンボールをたぐり寄せる。
……だ、ダンボールって、そんなホームレスみたいな……
……あっ、そーいや事実か…
「…う、うるさいっ!!」
正義の味方となった彼女はリーザス城には住めず、それどころか、
(社会的に)死んだ人間故に身元を明らかにできないため、橋の下でダンボールにくるまって生活していたのだった。「…ううーーーー」
負けるな赤影! ファイトだ赤影! 正義は常に君の側にある!!
「…や、やっぱし不幸なのね……しくしく…」
…「例のやつ」以前に、既にやばい状況にいる赤影であった。
「…かなみちゃん!?」
「えっ?」
突然かけられた声に、思わずかなみは振り返った。
「…やっぱり、かなみちゃんだ」
「…め、…メナド…」
「…信じてなかったよ、…かなみちゃんが…死んだ…なんて話…
…きっと生きてるって信じてたよ」
メナドは目に涙を浮かべながら、そう言った。
「……ちがうの」
かなみはその視線に耐えられないかのように目を伏せると、つぶやくように言った。
「…かなみちゃん…」
「……ごめん、メナド。…私はかなみじゃあ…リーザスのかなみじゃないの…」
かなり無理のあることを承知しつつ、かなみはそう言った…そう言うしかなかった。
「……かなみちゃん…」
「………本当にごめん…私は…」
「…赤影…だから?」
「!!」
メナドのセリフに、かなみは顔をあげて驚きを表した。
「レイラさんから聞いたよ、かなみちゃんが赤影をやってるって」
「…そうか…」
「…でも、かなみちゃんはかなみちゃんだよ。だから…
…ボクもリーザスのメナドじゃないの、かなみちゃんの友達のメナドだよ」
「…メナド…ありがとう…」
「いらっしゃいませー!」
とある町の一軒のお団子屋、少女が元気よくあいさつをした。
「どう? がんばってる、かなみちゃん?」
店に入ってきた少女が、店員にそう声をかけた。
「あっ、メナド!」
声をかけられた店員が答える。
そう、「おだんご」と書かれた前掛けをつけた、その店員はかなみであった。
「うう、住み込みのバイトを紹介してくれて、本当にありがとう」
「そ、そんな、…泣かなくても」
「ううん、私がんばるから…」
かなみがそう言った瞬間…
…ど、どどおおおぉぉぉぉーーーーーーんん……
すさまじい轟音が町中にとどろいたのだった。
「があぁーはっはっはっは! ランス様登場!!」
町を囲む壁を粉砕して登場した一団は、無論言うまでもなく、ランス盗賊団であった。
「さあ、野郎ど…」
「そこまでよ!!」
ランスのせりふを遮り、一陣の風とともに声が響く。
「…仮面の忍者、赤影参上!!」
泣く子もさらに泣き出す、ランス盗賊団の前に一人の少女が立ちふさがる。
おさげにした赤い髪に、たなびく黄色いマフラー、…そして、顔につけた赤い仮面…
…リ−ザスのちびっ子達のあこがれ、正義の忍者…赤影であった。
「て、てめえ、かなみ! 出るの早すぎっぞ!!」
その言葉通り、ランス達は出てきたばっかである。
例えるなら、CM前にファイナルフュージョンを…
…さらに例えるなら、悪代官が町娘をてごめにする前に、印籠を出すような展開の早さであった。
「う、うるさい! 町が破壊されるのを黙って見てるわけないでしょ!!」
ちょっと焦ったように反論する赤影。
「とにかく、私が相手よ」
背中に差したムラ○メブレードに右手をかけつつ、赤影が言った。
「…ふっ、まあいい」
ランスはそうつぶやくと、ニヤリと笑った。
「マリア! 例のやつだ!!」
…ズ、ズズ、…ズシーン、ズシーン…ズズズズシイイィィーーーーン!!
「なっ、ななっ!!」
驚く赤影の姿に、大きな影がかかる。
「今週のびっくりどっきりメカ…『スーパーランス1号』だ!!」
ランスが大いばりで言った。
そいつは全高20メートルほどある、ランスを3等身にして大きくしたようなロボットだった。
「…チューリップ28号よ!!」
ロボットの中から、そんな少女の声が聞こえたが…
「…これこそ、お前をぎゃふんと言わせるために作らせた、…『スーパーランス1号』だ!!」
…無論、聞いちゃいなかった。
……………
……
「………ぎゃふん…」
…素直にその言葉が赤影の口から出ていた。
「まだ早いわああぁぁーーー!! いけえ、スーパーランス1号!!」
ランスの言葉に従い、動き出すロボット。
「くっ!」
振り下ろされた腕をかわし…
「…真、魔○剣!!」
いきなり必殺技をくり出す。
音速を越えた剣先より放たれたソニックブームが、スーパーランス1号にぶつかると思われた瞬間…
…バシシシイイイィィィーーーー!!!!
衝突の瞬間に現れた八角形の壁に、すさまじい音とともにはじかれた。
「なっ!!」
驚きの声を上げる赤影に対し…
「…ふふふ。…これぞ、『ああ俺様ってば、強すぎるぜ、フィールド』…
略して、『ATフィールド』だ!!」
……
…説明しよう!
この「スーパーランス1号」は科学力のみならず、魔力によっても動いているのだ。
では、ちょこっと内部を見てみよう!
「…はあはあ。…ちょっと、…マリア、…なんで、…私が、…こんな…」
「…はあ、…志津香さん、…が、…がんばりましょう…」
ロボット内部に設置されたペダルを、二人の少女が必死でこいでいた。
「…ごめんね二人とも、そのペダルは魔力を持つ人しかこげないのよ」
二人の間で、マリアがすまなそうに言った。
…なるほど、こういう仕組みで動いてるんだ。
『ATフィールド』も、科学によるバリアに加え、魔法による結界の力が加わって、あれほどの防御力を持っていた訳なんだよ。
よいこのみんな、わかったかな?
………
…
「…そ、そんな…」
必殺技をあっさり防がれ、赤影の動きが一瞬止まる。
「今だあああぁぁ!!」
…べっ!
ランスの言葉に応じて、スーパーランス1号が口からガムみたいなものを吐き出した。
「きゃっ!!」
まさにベッチャリ…と言う感じに、赤影はそのガムのようなものに動きを封じ込められてしまった。
「ふっふっふ。…どーだ、忍者とりもちの味は?」
ランスが余裕の笑みを浮かべて聞いてきた。
「くっ!」
何とか逃れようとするのだが、もがけばもがくほど深みにはまっていくようだった。
「…ふっふっふ、勝負あったな」
ランスが勝利宣言をした。
…赤影ピイィーーーンチ!!
…だが、ストーリーの序盤で登場すると苦戦する…という、王道を行くあたりはまさに真の正義の味方といえよう!!
「…か…勝手なことを…、くっ、この…」
「ふ、無駄だ。…絶対にはがせん!
……そうそう、…無駄と言えば、せっかくお前のために用意してあった、もう一つの必殺技は出せなかったな」
ランスはそこでにやりと笑うと…
「せっかくだ、見せてやるぜ! やったれマリア!!」
ランスの命令を受け、スーパーランス1号の目が、カッ…と光った。
その光線の威力はすさまじく、すでに町の人間が避難していた無人の一角を、一瞬で蒸発させた。
「どーだ! 団子屋をも一撃で蒸発させるこの威力は!!」
ランスがおーいばりで言った。
「…だ、……だ、だ、………だんごや…」
赤影が仮面の下を真っ青にして、死にそうな声でつぶやいた。
「ん、…だんごが好きなのか? あとで俺様のだんごをたっぷりと頬張らせてやるぜ」
ランスが下品なセリフをはくが…
「……だ…だんご…」
…………
……
…ぶちいっ!
「ん、…何の音だ?」
「…か、火丼の術!!」
「なにいっ!!」
その叫びとともに、赤影の周りが火の海に包まれる。
「…な、なにも死ななくても…
!!!!」
紅蓮の炎からゆっくりと歩み出てきた赤影の姿は、まるで地獄からやって来た使者のようであった。
…さすがのランスもびびる。
「………………」
すさまじく重い気を背負って、赤影が歩みを進める。…ただ、ランスにむかって…
「…くっ、マリア…、…ってええぇぇーーー!!」
……ッカッ!!!
スーパーランス1号の目から、必殺の光線が赤影に向かって放たれた。
「光線白刃取り!!」
自らに向かって放たれた光線を、赤影は両手で受け止めた。
…無論、一体どういう原理かは謎…
「う、…うそ」
マリアがコックピット内でつぶやいた。…気持ちは分かる。
「…返すわよ」
事も無げに、光線を投げ返す。
その光線は、例の「ATフィールド」により防がれたのだが…
「…邪魔ね…」
ポツリとつぶやくと…
「必殺!!! 魔○閃光断!!!!」
……………
……
…その一撃は、「ATフィールド」をやすやすと貫くと、スーパーランス1号を粉砕し、さらに乗っていた3人も、マンガのように吹っ飛ばした。
「うっふっふっふっふ……。
…お、ま、た、せ」
赤影が唇の端を、にいいぃぃーー…とつりあげて、ランスに言った。
………
…
…こうして、正義は勝利した。
しかし、まだ悪は滅びた訳ではない。
それ行け赤影! 負けるな赤影!
ホームレスだっていいじゃないか、正義は常に君を見守っているぞ!!
「……よくないって
(るーるるるー)」
………………
………
…
「くっそおおおおおぉぉぉぉーーーーー!!
来週を見てろよ!!」
………そんなものはない…
後書き
やりました。
みなさんのおかげで5000アクセス突破いたしました。
感謝、感激、雨あられです。
ところで…
…今回の話に、みなさんはどこまでついて来れたでしょうか?
5000アクセス突破記念ということで、かなり飛ばしてます。
ここまでやっていいのか? …というくらい、パロディを入れてます
(どの位わかったかな?)
それでは、これからも頑張っていきたいと思ってますので、どうぞよろしくお願いします。