「があぁーはっはっはっはっはっは!!」

 湧き起こる悲鳴と炎の中、男の哄笑がひびきわたった。

「奪え奪え! この世のものはぜぇーんぶ俺様のものだ!!」

 その声の発生源は、炎に包まれた街の中をつき進む一台の戦車の上にいた。

「うらぁー! マリア! もっと速くならんのか!!」

「ううー、わたしのチューリップ三号がこんなことに使われるなんてぇー」

 その中で、涙をながしながら操縦管を握っている、めがねの少女が答える。

「マリア、泣きたいのはあなただけじゃないわ。わたしだって・・・」

 その隣に座っていた、魔法衣にとんがり帽子をかぶった少女が悔しげに呟いた。

「ううーー、ランスさまぁー、こんなこともうやめましょうよー」

 泣きながらピンクの髪の少女が背後から男に懇願した。

「がぁーーはっはっはっはっはっはっは!!!」

「うるうる・・・」

 

「そこまでよ!!」

 

 戦車の前に一団の軍勢がたちはだかった。金色の鎧を身に包んだ、美しい少女のみで構成された軍だった。

「ランス君・・・いえ、盗賊王ランス! これ以上の暴挙はリーザス親衛隊が許さないわ!!」

 一見してその軍の隊長であるとわかる、りりしい女性が剣を抜きつつ言った。

「レイラさんか・・・くくく、がぁーっはっはっはっは!!!」

 

 

 ・・・・・・・・・

 ・・・

「・・・というわけで、リーザス親衛隊壊滅、レイラ以下隊員達はみな賊に連れ去られてしまいました」

 ここはリーザス城内、淡々と一人の女性が事実のみを報告していた。

「ううーーーーー、ダーーリンのばかあぁーーーー!!!

 どーせならあたしを連れてってよおぉーーー!!!!」

「り、リア様それは・・・」

「ふえええーーーーーーーん!!!」

 玉座で大泣きする子ども・・・いや、リーザス王女リアの様子にはじめておろおろする女性・・・マリス。

「・・・・・・こんなとき、かなみがいれば・・・」

 マリスはおろおろしながらも、ただそう一言つぶやいた。

 リーザス直属の忍者・・・見当かなみは諜報活動の際、姿を消してしまった。おそらく、捕らえられ処刑されたものと考えられていた。

 

 はたして、真実は如何に!?

 

 

 ・・・・・・

 ・・・

「・・・おそかったか」

 嵐の通り過ぎたかのような被害にあった街の中、一人の少女がつぶやく。赤い忍び装束に身をつつんだ、その少女は辺りを見回した。

 男、子ども、老人・・・見事なまでに若い女性の姿は見えなかった。

「・・・これ以上好きにはさせないわ、ランス・・・」

 そう呟くと一陣の風とともに、忽然と姿を消した。

 

 

「があぁーーはっはっはっはっは!!!」

 リーザスにほど近い山の中、ランス盗賊団の拠点の一つがあった。かなり大きな洞窟であり、光が差し込む通気口のある広い部屋。その一段高くおかれた玉座に馬鹿笑いをしながらランスが座っていた。 

「さっすが、ランスあにいだね。今日も大収穫だ」

 そのランスに盗賊姿の一人の少女が話しかけた。

「ふふん! ソウル、当然だ!!」

 たくさんの戦利品を目の前にしながら、ランスが言った。

「ランス君!」

 その戦利品の一つ・・・リーザス親衛隊隊長レイラが声を発した。

「なんだ、レイラさん?」

「こんなことをしてただで済むと思ってるの? みんなを早く解放して!」

 後ろ手に縛られたまま、そう懇願した。

「リーザスを敵に回して大丈夫なわけないわ! リックやバレス将軍達、正規軍が出てくるわよ!」

「ふふん、それが大丈夫なんだよ。そうだろ篠田」

 ランスはそう言って、アメフトのプロテクターで身を包んだ男に話を振った。

「ええ、そうです。リーザスにはもう我々にあてられる軍勢はありません」

「なんですって?」

 その言葉にレイラが反応する。

「ヘルマン、ゼス、そしてリーザスと三国が互いに牽制しあっている現状で、むやみに正規軍は動かせませんからね。つまり、リーザス親衛隊が最後の切り札だったはず。

 レイラ殿、あなたもその覚悟で出陣したのでは?」

「くっ」

 その篠田の言葉は図星だったようで、レイラは言葉に詰まる。

「無論、リーザスのみならずヘルマン、ゼスも同様です。三国の勢力が拮抗している以上、われわれの行動に対してある程度、目をつぶらざるを得ない」

「つまり、そういうことだ。・・・バウンド、現在の俺様の勢力はどれくらいだ?」

「ええ、つい先日この辺りの盗賊団を吸収しましたから・・・、ざっと二万というところでしょうか」

「そ、そんなに・・・」

 レイラが言葉を失う。

「・・・拠点の数は、ヘルマンに六つ、ゼスに五つ、リーザスに五つ、自由都市群に三つ、JAPANに二つです」

 バウンドがメモを見ながら言った。

[・・・わしもおるから、魔人どもだって平気じゃな]

 ランスのそばで、酒をかっ食らっていた黒い剣が言った。

「つまり、ランス王はこの大陸を闇より支配する盗賊王だと言う事です」

 そのあとを篠田が引き継いだ。

「ランスあにい、かっこいい!」

 ソウルが飛びついた。

「があぁーはっはっはっはっは!!!」

(ううーー、ランスさまぁ、もうもどれないんですか?)

 対照的にシィルは暗くなってしまった。

「俺様は無敵だ! 誰も俺様を止めることはできない!!」

 ランスが立ち上がり、そう宣言した。

 

「・・・それはどうかしら・・・」

 

「ぬっ、誰だ!!」

 

「・・・光ある所に影がある。影ある所にも、逆にまた光がある・・・」

 

「どこにいやがる!!」

 

「・・・天に裁けぬならば、私が裁く・・・」

 

「ランス王! あそこです!!」

 通気口に浮かぶ一つのシルエット。

 

 忍び装束に仮面をつけた、その者の名は一体!?

 

「正義の使者! 仮面の忍者、赤影参上!!」

 

 バアアァァーーーーーンン!!!! 

 

 ・・・・・・・・・

 ・・・

「・・・かなみ、恥ずかしくないのか?」

「すっ、素で言うなっ!!」

 顔を仮面で半分かくしていてよく見えないが、頬が赤く染まっているように見える。

「ふふん、なんのつもりだ、かなみ?」

 ランスが余裕たっぷりで言った。

「ふっ、私の名は赤影、そのような者ではない。

 ・・・正義の名のもとにお前を倒す」

 こっちもまた余裕で答えた。・・・自分のセリフに照れている所には目をつぶるべし!

「ふっ、かなみのくせに生意気な」

「の、のび太みたいに言わないでよっ!!」

 何故かむきになる赤影。・・・なぜだろう?

「か、かなみ、・・・生きていたのね・・・」

 レイラが呟く。

 そう、リーザスの忍者、見当かなみは確か死んだはずだ。

「レイラ殿、私はかなみではありません。

 ・・・正義の使者、仮面の忍者、赤影なのです」

 

 そう、リーザスのかなみは死んだのだ。

 

 ここにいるのは赤影なのだ! ・・・ばればれであっても赤影なのだ!!

 

 正義の味方はけっして、一権力に仕えてはならないのだ。なぜなら、あらゆるものから自由でなければならない。

 

 ・・・そう、正義を貫くために!!

 

「盗賊王ランス、あなたを倒します」

 赤影が静かに言った。

「ふっ、かなみの分際で俺様を倒すだと? 笑わせるな!」

 ランスが言い放つ。

 

「・・・だから赤影・・・」

 

「かなみ、無茶よ!」

 レイラが叫ぶ。

 

「・・・あの、だから・・・」

 

「かなみ! 降りてきやがれ!」

 

「・・・しくしく・・・」

 

「・・・かなみさん、なんだかかわいそう・・・」

 シィルがつぶやく。・・・でも、このセリフが一番きついかも・・・

 

「・・・とっ、とにかく! ・・・勝負よ、ランス!」

 そう言うと、ひらりと飛び降りるかな・・・じゃない、赤影。

「・・・もういい・・・しくしく・・・」

 

 なんだか戦う前から大ダメージを受けてしまっている赤影だった。

 

「身の程を教えてやるぜ!」

 ランスが剣を抜きつつ、そう言った。

「それはこちらのセリフよ!」

 赤影がふところに手を入れつつ、そう答えた。

「くらえ! ラーーンス・・・」

 ランスの言い終わる前に、赤影がふところから取り出したけむり玉を地面に叩き付けた。

「・・・うっ」

 あたり一面がけむりに覆われた。

「・・・て、てめえ! 卑怯だぞ!!」

 

「・・・あなたに言われたくないわね・・・」

 

 ランスのあげた叫びに対する答えは、少し上方から聞こえた。

「なにっ!?」

 けむりが晴れてランスの目に入ったもの・・・それは・・・

「・・・くすくす・・・」

 玉座に腰掛け、楽しげにこちらを見ている赤影の姿であった。

「こ、このやろ・・・」

「くすくす、・・・そうそう、レイラさん達は解放させてもらったわ」

「!!」

 赤影の言うように、リーザス親衛隊達を捕らえていた辺りには縄が転がっているだけだった。

「・・・俺様を怒らせやがったな・・・」

「・・・どうするのかしら?」

 赤影が余裕の表情で答える。

「こうだ! ラーーーーーンス、アターーーーーーック!!!」

 ランスの必殺技が炸裂する。

 その威力は凄まじく・・・

 

「・・・あらあら、玉座が粉々・・・」

 

 赤影がランスの背後でつぶやいた。

「この、かなみ! ・・・百回犯す!!!」

「あっかんべぇーー」

 ランスの猛烈な剣戟を、ひらひらとかわす赤影。

「ほらほら、鬼さんこちら、手の鳴るほうへ・・・」

「こ、こんにゃろーー!!」

 完全に馬鹿にしている赤影に、ぶちぎれ寸前のランス。

「・・・おっと」

 ひらひらと躱していた赤影の背中が壁にぶつかる。

「もらったあぁーーー!!!

 

 ラァーーーーーーーーンス、アタァーーーーーーーック!!!!」

 

 ・・・・・・

 ・・・

 ・・・もうもうと土煙があがる。

「・・・かなみのくせに俺様に逆らうからだ・・・」

 ランスがつぶやく。

 

「・・・今度はこっちの番かしら・・・」

 

「なっ?」

 ランスが背後を振り返ると、そこには背中に差した剣に手をかけた、赤影の姿が・・・

 

「・・・必殺・・・」

 

「ぐっ、・・・まさか」

 赤影が背中の愛刀、ムラサ〇ブレードを凄まじい勢いで抜刀しつつ叫ぶ。

 

「真、魔〇剣!!!」

 

 音速を超えた剣先より発せられた、ソニックブーム・・・衝撃波に吹っ飛ばされながら、ランスが叫んだ。

 

「もろぱくりやんけーーーーー!!!!」

 

 ランスの放ったランスアタックの衝撃のうえに加えられたこの一撃に、洞窟は耐え切れなかった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

「ふっ、正義は勝つ」

 くずれた洞窟のうえで、赤影がつぶやいた。

 

 悪はほろびた。

 ・・・しかし、さらなる悪の芽はどこかで生えてきているのだ。 

 

 

 行け赤影! 負けるな赤影! 正義は常に君にある!! 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・

 ・・・

 くずれた洞窟から何者かが立ち上がった。

「くそーーーーー!!

 かなみ、千回おかぁーーーーーーーす!!!」

「・・・しくしく・・・もうやめましょうよ、・・・ランスさまぁーーーーー」

 

 

 

 

                      ・・・・・・ちゃんちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

 かなみちゃん救済SSと銘打たせてもらいました。

 強いです! 忍者LV2です。ランスとタメはれます。

 

 ・・・でもなんかやっぱり不幸です。(だれも赤影と呼んでいない)

 

 しかし、たくさんキャラ出したわりには、あんまり意味がなかったなあ。(反省)

 

 

かなみ「・・・・・・・・・」

  ・・・ごめんよ、かなみちゃん。・・・君を幸せにすることはできなかったよ。

かなみ「・・・(でしょうねえ)

  ・・・でも、まあそういうキャラクターだからいいか!

かなみ「ひらきなおらないでよ」

  ・・・それにかなみちゃん、Mだし。

かなみ「・・・っちょっ! ・・・ちょっと!! 人聞きの悪いこと言わないでよ!!!」

  ・・・いいんだよ、かなみちゃん。照れなくて。

かなみ「てっ、照れてない!!」

  ・・・Mっていうのは忍者という職業柄しょうがないって。

かなみ「・・・・・・どういう意味?」

  ・・・忍者ってのは拷問に耐えられなくてはならない。

かなみ「・・・まあそうね」

  ・・・拷問に耐えるにはどうすれば一番いいか。それは・・・

かなみ「それは・・・」

  ・・・痛みを快感に変えればいい。つまりM。

かなみ「・・・なんて論法・・・」

  ・・・というわけで、かなみちゃんはMなのだ。

かなみ「ひ、ひどすぎる・・・・・・」

  ・・・と言うことは、今まで通りで良いんだ!!

  ・・・僕はこのままでいいんだ!!!

  

  パアアアァァァーーーーー!!!(心が晴れ渡り、補完された音)

 

マリア「おめでとー」パチパチ

志津香「おめでとー」パチパチ

リア「おめでとー」パチパチ

マリス「おめでとうございます」パチパチ

ランス「めでたいな」パチパチ

シィル「おめでとうございます」パチパチ

  ・・・ありがとう、ありがとう。

 

かなみ「エヴァ的におわるなーーー!!!」」

 

 

 

 


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