ワンコメント特集

知ってると「エス」ライフが豊かになる



今回は少々趣向を変えて、ランダムコメント特集とさせていただいた。およそ知っていれば「エス」のオーナーとして、なんらかのメリットはあるだろうことを、まったくランダムに綴ってみようと思う。むろんその中には異論もあるだろうし、これは違うのではないか、と思われる内容もあるかとは思うが、それはそれ、楽しい議論の発端になれば、幸いである。

●まずは、ダンパー、当然コニ・ダンパーから始めよう。ほとんどのオーナーはご存じだとは思われるが念のため、通常フロントにコニを装着させる場合、特にノーマルブラケットの場合、その上部に入れてあるバンプラバーをカットして使用するのが半ば常識化していること。純正のフロントサスストロークが余りにも少なすぎるための対策である。特にフロントアップ、ポジションのチェーンドライブを水平スタンスにすれば純正ブラケットではまったくストローク無しのものになってしまう。そこでカットすることになったのだと思うが、オリジナルのアッパーアームブラケットを使えばこれが少し変わってくる。と言うのも、ダンパー取付位置が純正はおろか、参考にしたRSCブラケットよりも、より上方にあり、たっぷり取ったストロークのため、そのバンプラバーを使ってストロークコントロールも可能だ。またコニは調整式になっていて、これは強弱を調整するものではなく、へたれば締める為のもの。加えてコニは、装着のすぐ後からハード走行は避けるべきで、ナラシから始めると、その寿命は長くなるはず。最後にこれは、よく見られるがエアーがきちんと抜かれた、それを決して横にしないこと、案外無神経に扱っている場合が多々見受けられる。ま、もう一度エアー抜きをすればすむことではあるが。そのまま装着すれば、機能がスポイルされるおそれあり。ご注意のほどを。

●クロスジョイントではない、ゴムジョイントについて、その取付ボルトの頭とナットを交互に着けなければならないこと。

●ヘッドライト・ケースは、ヘッドライトリム固定用のビス用、タップ穴はフロントフェンダーとフロントマスクの線上になければならない。でないとヘッドライトの水平ラインが傾く。またその中にあるスモールランプカラーの正解はイエローである。さらにヘッドライトリムとヘッドライト本体とのクリアランスが数種類あるので左右に注意。

●高回転走行時にはアンメーターに注意。チャージしなくなったらマスターシリンダー下の30A板ヒューズをチェック。これはかなりの頻度で発生するため、純正ヒューズボックスをもう一つ用意しておくとワンタッチ交換で便利。純正は+ビス止めになっているため。もっとも別のヒューズパッケージ をつかっていればそのかぎりではない。

●水温計について。水温計は機構上2タイプある。バイメタル式とサーミスタ式で、それぞれのセンサーとのセット使用でないと不可。長いセンサーの方がバイメタル、短い方がサーミスタで、メーターではイグニッションカットで110°をさすのがバイメタル、50°をさすのがサーミスタ。問題はS800の場合で(S600はすべてバイメタル式)メーター形状はご存じのように、そのメーターリムにシルバーラインが入っているのだが、そのS800モデル中に、そのタイプ変更がなされていて間違いやすい。センサーとセット使用ではどのモデルでも使用可能だが、セットを間違えると作動しなくなるので注意。かのO誌でも間違った表記があったので是非とも注意。

●悪名高いセルクラッチのための話。S600ノーマルフューエルポンプについてはエンジンストップ後すぐの場合を除いてスターターを回さなくてはポンプにガスを送らない構造になっているので、面倒でもボンネトを空けてEXカム上にあるポイント(これはNシリーズのポイントである。)の端子を抜いてアースさせポンプを作動させキャブフロートチャンバーを満たした後スターターを回すようにすること。S800および通常の電磁ポンプについては、作動音が遅くなるの待ってスターターを回す事を心掛ければ、悪名高いセルクラッチトラブルを少なくさせるはず。さらに、点火系のチューニングを加え、フルトラにCDIをセットさせ、一発点火にすることによってもさらに防げる。要するにスターターをまわす回数を極力少なくすることがそれ。また、不幸にも一度でもバキバキ音がしたら、絶対にセルクラッチのチェックをお薦めする。このトラブルは大抵何事もなかったようにその後普通に使用できるのだが、最後はへたをするとクランクシャフトをXにさせるかもしれない危険性をはらんでいるのだから。

●ついでに、そのセルクラッチ、プーリー本体の脱着時、外す場合はまず問題はないが締めつけ時はかならず、どんな方法でもよいのだが確実に13kgーmで締めつけること。お薦めは純正特殊工具がベスト。いいかげんな締めつけによる走行時のナット脱落は非常に多く、クランク先端のセレーションを傷めたものが多々あり、ひどいもになるとナットを熔接したもの、まであるので、ご注意の程を。

●もうひとつ、このプーリー本体のその背面にある、フロントカバーからのオイルもれが非常に多くフロント周りからのオイル漏れは大抵このフロントカバーからのもので、その原因としては2つほどある。まず、車載状態のままで脱着の場合、ステアリングギアボックスが邪魔をしてフロントカバー下側のボルトが脱着しずらく、ネジ山をなめやすい。きちんとしたトルクで締められていない場合に起こる。この場合エンジンマウント、フロント側を弛め、ジャッキでエンジン本体を少し上方に上げてやれば事足りる。不精は禁物。二つ目の原因、この方が多いと思う。これは多数のボルトで取付られている総てのパーツに言える事で、特にアルミのものは特にである。それは総数11本使用されている6mmボルトの長さが3種類もあることによって、でたらめに締め込むと、長くても先端にあたり、また短くてもトルクに耐え切れずネジ山を傷めてしまうことにある。これは必ずボルトを挿入時には、ネジ山に、当たるまで入れ、外に出ている長さが、ねじ込まれるべき長さ分だけ同じように出ている状態から締めつければ、それは避けられる。エンジンヘッドカバー等まったく同じである。

●EXマフラー、「エス」シリーズすべてに言える話。厳密に言えば今回はサイレンサー本体ではなく、それをマウントしているゴムを接着させたステーで、問題は、なぜかそのゴムが簡単に取れてしまうことにある。特に問題なのは、リアのテールパイプを吊っているそれである。これがよくはずれる。はずれると、それだけ数十メーターも走行すればもう充分で大抵の箱型サイレンサーの付け根部分が外れてしまう。特に古いものは一発である。さらに、それは大抵、錆びていて再び熔接不可になっているはず。特にサブ・マフラーを装着していれば完璧にそうなる。そのためのフェイルセイフは、実に簡単。タイラップ等の強度を有するもの(電線を結ぶだけでもよい)を左右、そのマウントラバーの前後に一つづ、シャシーと共に輪にして、上方にテンションが、かからないよう取付けるだけでOK。ただし、脱落時は、すぐに正規のものを取付けるのは言うまでもない。これで万一の場合高価なマフラーを守れるのだからぜひ対処していただきたい。続いて今度はその箱型サイレンサーの後部にマウントされる同種のものだが、やはりこれも同じで、よくきれる。ただこの場合には、リアのそれが外れないかぎり、解かりにくい。また切れてすぐにそれほどのダメージもないが、由々しき問題ではある。部品精度をあげるしかないのだが、出来ることはマウントゴムを捩じらないよう、ストレスをかけない工夫、例えばカラー、スペーサーとしてのワッシャー等を使用してシャシーに取付ければ、ある程度防げるはず。

●ホイールスタッドボルトについて。S800は問題ないが、S600の初期型には逆ネジのスタッドボルトが使われていて、当然それは、左側に採用されていた。ただし、それは左の前後輪の場合と後輪のみの場合があった。そして、当然のようにそれは、いろんな場所でねじ切られ、逆ネジと正ネジが入り乱れて装着されている場合があるので注意されたし。

●ある日突然シフトレバーにトラブルが発生すればほとんどの方は、ミッショントラブルだと思いがちなのだが、まず疑う目安を何ポイントか取り上げてみよう。最初に、入ったままそのポジションから外せない場合、また以上にシフトレバーが倒れている場合は、軽症でシフトレバー下のガイドとガイドピンとのトラブルの可能性が大で、トランスミッション自体の可能性は低く、ガイドまわりの修理で解決する。また異音を伴わないシフト操作でギアが入りにくい場合、やはり先述のガイドの場合とシフトセレクターのトラブル、大抵は緩んだロックボルトの悪さに拠る場合が多い。この場合もトランスミッションリアカバーのみの脱着で直る場合が多い。異音が伴えばそれはトランスミッション内部のトラブルとなり重症である。ただし、クラッチの場合も多々あり注意されたし。大部分S600の場合ワインディングロード等を、特に登り等でホットな走行をすれば例のEXマニホールド側に傾いたスレーブシリンダーと伝統のエア抜きのしずらい、それの両方が影響してエアロックしクラッチが切れなくなることはよくあること。この場合、エンジンを止めて景色見物でもしてやれば、嘘のように元に戻るはず。

●純正ホイールキャップS600初期型はHマークのベースは赤。その他のS600はオールクロームでカラーなし。S800はその部分が黒。共にセミマットで、作業するなら3Mの接着シートがペイントよりベスト。

●「エス」の押し掛けについて。2〜3人でするなら、当たり前なのだが「エス」の場合、たった独りでも可能で、その事実を知っていただければ幸いである。もちろん平地の話で特別な方法は何もなく、ドアを空けたまま自分で押して飛び乗るだけでOK、また勾配でも、たかだか1〜2メーターもあれば充分エンジン、スタートが可能になる。

●「エス」のハードトップは基本的に2タイプあり、S600用とS800用の2種でその違いは外観からだとリアウインドウのサイズが異なり、S600の方が小さい。天地サイズは同じでS800用を切って使えるもの。リアウインドウシールラバーは完全に1本もので、当時大抵失敗して合わせ目が数センチあいていた。これはゴム部分が嵌まり圧縮されるのをミス計算したもの。また内部はリアに棚があり、S600用がプレススチィールでS800用がFRPである。車種間で、一見、互換性があるように見え、確かに装着出来るのだが、S600とS800ではリアパネル(トランク、ヒンジの前にある)のカーブが異なりピッタリあわずに、大きいところでは2〜3センチ程度の隙間が出来ることになる。ちなみに、その両タイプ共に内装はニットの赤。元来このハードトップには、かなりの数になるゴムパーツを使用してはいるが、何一つとして、およそその耐侯性に貢献するものがないのは驚きで、はっきり言えば幌の方が数段上である。特にフロントウインドウフレーム上のシールラバーは断面がボックス状のもので、非常に硬く柔軟性に欠け、隙間から前が見えるものまである。幌やデフレクタートップに使用されているスポンジラバーの方がいい。レビルドに関しては、両方ともFRP製だが恐らく何重にもペイントされたそれを剥がすのに、リムーバーを使用して問題なく、繊維部分が出てくれば止めればいいだけ。

●キャップボルトの利用法をいくつかご紹介すると、まずエンジンオイルフィルターのケースを止める3本の6mmビスをそれに変えると非常に作業性が上がる。普通はシャシーが邪魔をしてやりにくいからである。それにデスビ。取り外してあれば問題はないが、エンジンにつけたままだと水平にビス、4mmJISネジなのだが、非常にやりずらい 。その昔SFでは、ポイントパッケージ等の 紙をビスとドライバーの間に噛ませてデスビに運ぶ、曲芸に近い作業をやっていた。ところがキャップボルトでは全く問題はなく水平にしてもビスはそのままデスビへと持っていける。またフューエルタンク上のメーターユニットの取付ビスにも最適である。通常は+ビスだが、その位置のために非常に締めにくく、大抵ガス漏れを起こしていて、ボンド等でごまかしているのが現状である。ところが、これがクラッチカバーにあるクラッチスプリングストッパー、これも悪名高い、例のクラッチを切ったときに鳴るカタカタ音の原因、緩んで鳴るのだが、やはりこれも5mmプラスビス、そこでキャップボルトと言うことになったのだが、結果は3個とも折れてしまった。なんとプラスビスのルーズさでごまかしていたのが純正だった。ただし、このパーツ、現在対策された強化パーツがあるのでご安心のほどを。

●ディストリビューター、キャップはS600もS800も形状はまったく異なるが互換性はある。ただターミナルセグメントの位置が数度ずれているが問題はない。またローターは同じものだが、このパーツ極力慎重に何度も回しながら押し込む事を心掛けたい。2段になってデスビシャフトに入るため、不十分だとデスビの中でバラバラになってしまう。これがよくあるのだ。ぜひ気を付けていただきたい。

●フルトラとCDIの結線は非常に簡単で、通常、他車用に市販されているものには、たいそうなハーネスがあっていかにも複雑そうだが、実は非常に簡単でCDIには基本的にはアースと他に3本しかなく、その内1本、大抵ブルーになっているが、それとフルトラ(ルーメニションではブラウン)からのシグナルラインと結線し、レッドは入力ラインでなるべく太いラインでプラス端子から取り、他の1本、大抵グリーンでイグニッションコイルのマイナス端子へ接続。続いてアースをしっかりとれば、それで終わりである。また、そのグリーンとブルーをカプラー等でショートカットさせてやれば、フルトラのみのセッティングに早変わりさせることが可能になる。とにかく点火系のチューニングは実に簡単なうえ様々なメリットが特に「エス」にはあるので装着をお薦めする。

●点火系をもう一つハイテンションコードとプラグキャップ。コードはシリコンで銅線のものを、プラグキャップは純正のもの抵抗値がバラバラでよくない。バイク用セラミックレジスターのものをお薦めする。

●シートの種別について、初期型にはレッドがあり、その頃、S500、S600初期型のモデルは極端なバケットスタイルをとっていたが、非常に重く芳しくない、その後ブラックのみになり、バケット形状はノーマルになり、基本的には、それ以後のモデルの基本形になっている。S800になり通気性風レザーのパターンをシートの両側以外の座面を、それに変更。当時のはやりだったはず。ところが輸出用は、縦、平行ラインのS600と同じデザインに変更された。これは非常に軽く、デザインも好ましい。この時、クーペ用アシスタントシートにロック機能が付けられた。クーペ、アシスタントシートは、前側に倒れ、荷物および長尺物の積載を可能にしている。ちなみに、あの小さなボディになんと2メーター20前後のスキーガ楽勝で載せることが出来たのだ。ともかくも輸出モデルからサイドシートにロック機構が付けられた。輸出用モデルは現在データ不足で不明なのだが中期モデルのシートバックにフレームの折損が多発している。シートバックに背を押しつけた時グニャ、グニャする場合がそれ。ご注意のほどを。「エス」のシートは、そのボディフロアの形状が非常に特殊、内側が一段高くなっていて、シート変更を考えているオーナーのチョイス幅を狭いものにしている。シート底部がフラットなものは基本的にX。底部が丸い60年代のものであれば装着可。

●「エス」は本当に楽しいもの。そのサイズから、生まれる様々なメリット、中でもガレージに収めた時のサイズは、アマチュア、メカ・パラノイアにとって、手に収まる最適サイズであり、それは、あたかも1/1のモデルカー然として、加えて類まれな魅力あるパフォーマンスを公道で、さらにレーシングコースで披露してくれる魅力も併せ持つ掛け替えのないクルマだと思う。更に加えて、その輝かしい歴史に、世界中で愛されるインターナショナル特性がその魅力を倍加させている。このGARAGEでは、そのメカをアマチュアならではのアプローチによって徹底的に楽しんでしまおうと決め込んで発行にいたっている。間違っても本職ぽくやろうとは思っていない。限りある時間でやるのではなく、ふんだんに時間と、エネルギーをかけて、失敗を恐れないチャレンジ、アプローチで楽しみたい。失敗すれば、またやればいいのだから。特に裏面で記したサスセッティングなどは、ゆっくり時間をかけ心ゆくまで調整、数値などは気にしないで、シムとタイロッドロックナットをいじくり、ドライブを何度も繰り返し希望のフィールが得られるまで、すればいい。また、今年のスズカはパーツについての大変な分岐点になるかも知れない可能性を秘めている。ぜひとも「エス」フリークのパフォーマンスを最大限、露にするべく参加していただきたい。それでは、快音、響きわたるスズカで。

(1995/09)


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